宿題合宿3日目

 次の日の朝も、当然のようにバサラは布団から追い出されていた。  ……今日は陽介にベッドを譲ろうか。  家ではベッドだと言っていたし、ベッドから落ちたことはないらしいし。  布団だから寝相が悪くなってしまうのかもしれない。布団だったら落ちても痛くないしな。  俺は昨日と同じように人にタオルケットをかけると、着替えの服を持ってリビングに向かった。  着替えを済ませて顔を洗うと、朝ご飯を作った。  昨日は和食が好評だったし、今日も和食にしようか。  味噌汁は昨日の残りを出そう。米はまだ残っていたはずだ。あ、でも朝ご飯で全部なくなりそうだな。  俺は米を洗うと、炊飯器に入れてセットした。 「おはよー、清知」 「お? バサラか。おはよう、早いな」  バサラは顔を洗いに洗面所の方に歩いて行った。  ガンッ!  な、なんだ、今日はどこをぶつけたんだ?  俺は心配になったが、焼いている途中の目玉焼きから目を離せなかった。  ケガとかしてないといいけど。  俺は出来上がった目玉焼きを皿に乗せると、一度火を止めてリビングを出た。  廊下に蹲っているバサラを見つけ、駆け寄る。 「バサラ? だ、大丈夫か?」 「う、んー。額ぶつけちゃったー」  半泣きで俺を見上げるバサラに、顔を洗ってリビングに来るように言った。  俺は自分の部屋に行きハンカチを持ってくると、保冷剤をそれで巻いた。  リビングに入ってきたバサラに、保冷剤を巻いたハンカチを渡す。 「これで冷やしてろ」 「うん。ありがとー」  バサラに寝起きに顔を洗いに行かせないほうが良いんだろうか……。  でも顔を洗って戻ってくるころには、目が覚めてるみたいなんだよな。 「おっはよー! って、バサラ!? でこ、どうした?」 「さっきちょっとねー、ぶつけちゃったんだー。痛かったー」  ふわっと笑うバサラに、本気で心配している陽介。  この温度差……。  俺は朝ご飯の支度を終わらせると、席に着いた。 「朝飯食おうぜ」 「おう。今日もありがとな。いただきます!」 「いただきますー」  俺たちは朝ご飯を食べながら、今日見た夢の話で盛り上がった。  その中で一番面白かったのは、陽介の見た夢だった。 「俺と清知で一緒に遊んでたんだよ。そしたらバサラが来たんだよ」  そこまでは普通だ。 「そしたらさ、バサラが急に変身しだして。あの戦隊アニメみたいな感じで。で、清知が悪いやつだから離れろって俺に言ってきたんだよ。だからそんなことないぞ、って言ったら、なぜかバサラが俺に殴りかかってきたんだ」  もうこの時点で意味が分からない。 「だから俺も変身してさ、バサラを蹴っ飛ばしたわけ」 「あー。それで夜中に蹴られたのか……」  このバサラの一言で、俺はフハッと吹き出してしまった。  だから布団から追い出されてたんだな。  ってか、なんで陽介が変身してんだよ。 「陽介、この前の日曜日に戦隊アニメでも見たのか?」 「見てねぇよ! 最後にみたの先月だもん」  見てんじゃねぇか。  これにはバサラも一緒になって笑いだした。  朝ご飯の片付けはバサラと俺が担当した。陽介は昨日と同じように寝癖を戻しに行っている。  その代わり、今日の昼と晩の片付けは俺がやる、と言っていた。  陽介が戻ってきてから、また宿題を始める。  俺はあと国語のワークと数学が残っていた。  今日は数学を進める。  昼ご飯まで宿題を進め、お昼にはサンドイッチを作った。  お菓子は作らなかったけれど、一昨日と昨日の残りをおやつの時間に食べた。  そのあと、夕方まで宿題をやる。  バサラはすべての宿題を終えて、俺に数学を教えてくれた。 「ヘイ清知! 国語が分かりません!」 「どこだ?」 「ってかこれ読めないんだけど」  陽介が指を指した場所を見る。鍛錬。たんれん。 「きんれん?」  ブフッ  違う、今吹いたのは断じて俺ではない。 「バサラは読めんのか!」 「たんれん」 「正解」 「……」  黙って真顔で頬を膨らませる陽介に、俺とバサラは揃って吹き出してしまった。  俺とバサラの笑いが終わった後、陽介を見ると、また真顔で頬を膨らませた。  また吹き出した俺たちで遊んでいるようだ。 「笑いすぎだろ!」 「だって、その顔!」  俺の隣で、バサラは言葉を発せないほどに笑っていた。  "面白い"  心の声を聞いたまま、俺は笑っていた。  こんな風に笑うことがなかったから、今までほとんど動かしてなかった表情筋が痛い。 「ふぅ……。疲れた」  俺はもう陽介の方を見ないようにして、数学の問題を解く手を動かし始めた。  ちょうど切りのいいタイミングで顔をあげ、時計を見た。 「あ、もう時じゃん!」 「ん? なんかあんの?」 「今日買い物に行こうと思ってたんだよ」 「まじか。俺も一緒に行く。荷物持ちやるわ」  一緒に行ってくれるという陽介に、ありがたく頷いた。  バサラには留守番を頼む。 「俺の部屋の本、好きなの読んでていいぞ」 「本当? やった。いってらっしゃーい」  玄関で見送ってくれるバサラに手を振り、俺たちは少し早歩きでスーパーに向かった。  なるべく早く帰ってこよう。 「今日の晩飯は?」 「シチュー、カレー、ステーキ、魚、ドリア……。どれが良い?」 「ドリアって、どんな?」 「ミートドリア?」 「あ! 俺それが良い!」  スーパーに着くと、ミートドリアに必要な材料をかごに入れていく。  それから、冷蔵庫になかった野菜や、美味しそうな果物もかごに入れて、レジに並んだ。

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