魔童貞殺し

読了目安時間:5分

エピソード:16 / 34

戦い終わって

 馬から降りたサラとヴィックのもとに、護衛たちのリーダーである、革の保護帽の若者がやって来た。 「あなた方のお陰で助かりました。我々一同、感謝します!」  礼を述べると彼は深々と頭を下げる。その近くにいた数人の若者たちも、彼にならってお辞儀をした。 「お礼には及ばないよ。あたしたちは当然の事をしただけだからね?」  サラの謙虚な言葉に、うなずいて同意を示しながら、ヴィックは改めてこのリーダーの若者を観察する。年の頃はヴィックたちと同じか、あるいは一つ二つ下ぐらいといったところか。ややあどけなさは残るものの、なかなかの美男子で、おまけに育ちも良さげで、そして誠実そうであった。 (なかなかの好漢(こうかん)じゃないか?)  彼は、若者に対する感想を小声でサラに打ち明けた。 (おや。あんた、もしかして男色の()もあったのかい?)  サラはにやにやしながら、小声でヴィックをからかう。それにヴィックが言い返そうとするも、彼女が先んじて発言してしまう。 (いやはや、何とも。全く「好色漢(こうしょくかん)、ここに極まれり」だね?)  おれにそんな趣味はないぞ、と反論しかけたヴィックだったが、若者が話し始めたため、やむなくそれは中断する事にした。 「おれ、リオネッロと言います。リオンと呼んで下さい」  自己紹介を済ますと、その若者――リオンは保護帽を脱ぐ。すると適度な長さに揃えられた、見るも(つや)やかな金髪が(あらわ)になった。 「あたしはサラ。隣のすけべ(づら)の色男はヴィック。よろしく」  ぞんざいな紹介をしたサラはヴィックに抗議させる間を与えずに、苦笑を浮かべているリオンに訊ねる。 「ところでリオン。あんたたちは彼らのお抱えの用心棒なのかい?」  彼女は、(いま)だに馬たちを落ち着かせるのに忙しい商人らしき男と、その助手らしき男を手で示す。するとリオンは首を振った。 「確かに、彼らの護衛を勤めています。でも専属じゃありません。実はおれたち、護衛として雇われた賞金稼ぎなんです」  リオンは仲間たちを見回しながら、きっぱりと言う。それを聞いたヴィックは表情を緩める。 「やっぱりそうか。いや、何となく、そうじゃないかと思ってたんだ……」  そう言いながらヴィックは、彼らにどことなく親近感を覚えていたのはそうだったのか、と考えていた。  賞金稼ぎたちは基本的に、どこかに潜んでいる賞金首を見つけ出して「狩る」のが主な仕事だが、リオンたちのように同業者同士で一団を組んで、護衛の仕事を受け持つこともある。その場合、依頼主の護衛中に賞金首を捕えるような事があった場合、護衛としての報酬以外に、賞金も手に入るのであった。 「実は、おれもつい最近まで賞金稼ぎをやっていてね――」  彼は、どうして分かった、とでも言いたげな表情のリオンに説明する。 「それで何となく、というのもあるんだが……。やはり、きみたちが皆、軽装だったからすぐにぴんと来たかな?」  ヴィックの説明に、リオンは苦笑いを浮かべる。 「あ、やっぱりこれで分かっちゃいましたか?」 「まあね。実際、重装備の賞金稼ぎなんて、まず、いないからな……」  彼の言葉通り、甲冑(かっちゅう)(くさり)かたびらなどの重装備は、賞金稼ぎという職業にはあまり相性が良くなかった。森の中や都市内といった場所に潜んでいる賞金首を「狩る」べく、あちこち探して動き回らねばならないのに、そういった物に身を固めてしまっては、すぐに疲労してしまうからだ。しかも、それらは動くと音を立てるため、目標にこっそり「忍び寄る」事ができなくなってしまう。そういうわけで「重装備な賞金稼ぎ」というのは、ほとんど見かけることはないのであった。  と、そんな感じにヴィックたちが親睦を深めていた時。 「おい、リオン!」  若者の一人が、声をかけてきた。 「どうした?」  問うリオンに、その若者は答える。 「あの山賊どもの(かしら)。やっぱり、賞金首らしいぜ?」  そう言いながら彼は、後方を親指で指し示す。その方向をちらりと見ながら、リオンは確認する。 「確かなのか?」 「手配書を見たって奴がいるんだ。とにかく、来てくれないか?」 「分かった――」  そう言うとリオンはヴィックたちに一言断りを入れ、仲間について行く。そんな彼らの後ろ姿を、二人で見送っていた時だった。 「――あの。先ほどは大変、ありがとうございました」  礼を言う声が聞こえ、ヴィックは振り向く。そこには例の商人らしき男が、助手と一緒に立っていた。薄緑色の胴着に、赤いつば無し帽子といった出で立ちの、この三十代くらいの小太りの男は、何とも人懐こい笑顔を浮かべながら頭を下げている。ヴィックとサラは両手を振って大した事ではないと言うも、男はとんでもない、と首を振った。 「もちろん護衛に雇った彼らのお陰でもありますが、お二方の助太刀があったからこそ、大きな被害も無しに賊どもを退治できたのですよ? そういうわけでここはぜひとも、お二人にささやかながら報酬を――」 「いや、それは結構なんだが……」  ヴィックは相手の言葉を(さえぎ)って、礼には及ばない事を説明するも、男は食い下がらなかった。 「そうは参りませんよ。命の恩人に何のお礼もしないとあっては『ラドルヌス商人組合』の一員たる、この『セウヅィッキ商会』の名に泥を塗る事になりますからね!」  そこまで言われては無下に拒否することもできず(また、サラに促された事もあって)、ヴィックは、男が(うやうや)しく差し出した、数枚のクローネ金貨をありがたく受け取ることする。そのやや多い報酬を革袋に収めつつ彼は、男の先ほどの発言の中から気になった部分を訊ねてみることにした。 「――さっき、ラドルヌス商人組合って言わなかったかい。ええと……セウヅィッキ商会さん、だっけ?」 「これは大変失礼をば。申し遅れておりました――」  男は帽子を脱いで一礼すると、それを被りなおしてにこりと微笑む。 「わたくし、セウヅイッキ商会に組する商人でございまして、名をジュスティアーノ・キューディラポルタと申します」  そう言って深々と頭を下げると、次に彼は助手の紹介をした。それを受け、ヴィックたちも自分の名を名乗る。彼らの名を聞いたジュスティアーノは相変わらず人懐っこい笑顔を見せ、どうぞよろしくと再度頭を下げるのであった。

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