探偵とは名乗らない

卒業式にちなんだ話です。 もう終盤ですが、まだまだ書きます!

ものぐさが故に

1 3月に入り、今年度もようやく終わりを迎えようとしていた。今年度は色々ありすぎたなぁと思いながらベッドに寝転がる。外は桜がちらほら咲き始めていた。窓ガラスについた桜の花びらを見ながら考えることがあった。 今日学校では卒業式が行われている。個人的な意見として卒業式には卒業生とその親、教師陣が参加すればいいもので在校生がわざわざでる行事では無いと思っている。だから俺は卒業式にはいかないと決めた。3年生の中に数人ではあれ面識がありその人たちがいなくなることを思えば最後に会ってもいいかとも思ったのだが、別に話すこともない上に、話す機会もないだろうと思った。そういえば在校生として卒業式に参加したのは小学生が最後だった気がする。中学の卒業式にも在校生として出たことはなかった。この考えに共感してくれたものはいまだかつて一人もいない。まぁ今日はゆっくりと眠っていよう。 どれだけ寝たのかははっきりと覚えていないが、昼を過ぎた頃に携帯電話が鳴っていることに気づき目が覚めた。電話の相手は友也だった。 「もしもし?どうした?」 「やぁ孝太、やっぱり卒業式には参加しなかったんだね」 友也には俺の考えを話したことがある。共感はしてくれなかったが納得はしてくれて俺らしいという評論も受けた。 「まぁな」 「今茜と天草さんと一緒にカフェにいるんだけど、よかったら孝太も来ないかい?」 「遠慮しておくよ、どうも動く気にならない」 電話の奥からは清水や天草がなにか文句を言っているような声が聞こえてきたが無視した。 「だと思ったよ。それじゃまたね」 そう言って電話は切れた。 外に出る気は無いが目が覚めてしまって寝るにも寝れない。適当に本でも読むことにした俺はカバンから読みかけの文庫本を取り出し机に向かった。読み終わった頃にはもう日も沈んでいるだろう。こういう日も悪くはないなと思った。 2 今日はついに我が校の卒業式です。別に私が卒業するわけではないのですが、やはりこういう式は緊張してしまいますね。 天草家では式に対しては重く捉えており、式の主役ではないにしても服装や姿勢を重んじることになっています。私も今日はいつもより早く起きて身支度を整えました。 式は順調に進み、何事もなく終えることができました。そうですね、中学の頃との違いといえば卒業証書の授与が一人ずつ呼ばれて壇上に上がり受け取るのではなくクラス全員の名前が呼ばれた後に代表の方が受け取るということくらいでしょうか。 歌や言葉なども多くはなく、とても簡潔的な式に思えました。泣いてしまっている卒業生を見るとこちらも熱くなるものがありました。 式が終わり在校生が片付けをしている時に茜さんと会いました。 「るみちゃん今日この後暇?」 「そうですね、特に予定はありません」 「じゃあさカフェいかない?帰り道の途中に最近オープンしたカフェがあるの」 「いいですね!ぜひ行きたいです」 「それじゃまた後から連絡するね」 そう言って茜さんと解散した。 片付けが終わり、在校生たちは帰ることになった時に私は茜さんに連絡して校門前で待ち合わせすることとなりました。 少ししてから茜さんと合流しました。そこには濱田さんもいてカフェには3人で行くこととなりました。 カフェの名前は@月と書いてアットムーンと呼ぶらしく店先には沢山の花や植物が飾られておりとてもおしゃれな店構えだと思いました。中に入るとお客さんが数組いて私たち3人は奥のテーブル席に案内されました。店内はすごく落ち着いた雰囲気で動物の置物や観葉植物、絵画などが飾られていました。私たちは各々が飲み物を注文して待っている間にふと気付くことがありました。梅原さんがいない。 こういう時はいつもなんとなくではあれついてきていたとおもうのですが、今日は姿を見ていません。なにか予定があったのでしょうか? そう考えている時に茜さんが濱田さんに質問しました。 「そういえば梅原は学校にこなかったんだ?」 「茜なら分かるだろ?別に不思議なことじゃないさ」 その会話に私は少しついていけませんでした。 「梅原さんは体調不良かなにかですか?」 私は学校に来れない理由としてこれ以外は思いつかなかったのでそう聞きました。 濱田さんが少し考えた後に答えてくれました。 「うーん、別に元気だとおもうよ。呼んでみるかい?」 そう言って濱田さんはポケットから携帯電話を取り出して電話をかけ始めた。流れからして電話相手は梅原さんでしょう。少し間があってから2人は話し始めた。 「やぁ孝太、やっぱり卒業式には参加しなかったんだね」 濱田さんがそう聞いたのを聞いて少し驚いた。やっぱりという単語に引っかかったのです。やっぱりということは濱田さんは梅原さんが今日、卒業式の日に休むことを知っていたということになる。 私は茜さんの方を向くと、茜さんも私の視線に気づいたのかこちらを見てくれましたがなにも答えることなく、濱田さんの方に目を向けました。 電話が終わり濱田さんは携帯電話をポケットにしまいました。 私はどうしても気になり聞きました。 「どうして今日梅原さんが休むことがわかったんですか?」 濱田さんが腕を組んで少し戸惑ったような表情をしてからこう言った。 「いやぁその説明は少し難しいな、本人が語るならまだしも」 そこに茜さんが割って入った。 「単純なことじゃない、めんどくさいからでしょ、卒業式は卒業生のものであって在校生である自分たちには関係のないことだから参加する意味がない的な。ま、あいつの考えそうなことだわ」 確かに梅原さんならそんなことを言いそうな気もします。 「それじゃ梅原さんは小学校や中学校の卒業式にも参加しなかったんですか?」 「小学校はどうか知らないけど、中学の時は不参加だったよね」 濱田さんがそう答えると茜さんは少し睨むような目をして濱田さんに目を向けました。 「不参加どころかアイツはもっと最低なことをしたでしょ、あれでアイツはより嫌われるようになったようなもんじゃない」 その言葉に聞き返す。 「梅原さんが何かひどいことをしたんですか?」 梅原さんは他人に対してなにか害を加えようとするような人には見えません。むしろ私は彼に助けてもらってばかりな気がします。でも今の茜さんの口調からして梅原さんは他の生徒さんたちにまで影響が出るようなことをしでかしてしまったということになります。 「あぁ、花の件か……」 「何ですか?花の件って、詳しく教えてください」 そういうと、濱田さんは手を広げて茜さんの方に仕向けた。 「僕から話すことはないさ。同じクラスだった茜の方が詳しく知ってる」 そう言われて私は疑問の目を茜さんに向けた。 「いいわよ、るみちゃんにもアイツのことをどんな人間か知ってもらわないといけないわね」 私はゴクリと覚悟を決めて話を聞くことにした。 茜さんはウインナーコーヒーを啜ってから話し始めた。 「あれは中学2年の3月、卒業生に向けて在校生からプレゼント的なのをすることになって私たち2年生は体育館の飾り付けをすることになったの、それで体育館の壁に卒業おめでとうのパネルがあってそれを縁取るように花の飾り付けを1人一つ作って付けることになったの。花の飾り自体は簡単で誰でも作れるもので不器用な男子にでもできることだからってことでそれになったらしいんだけど、総務の手違いで材料が人数分ピッタリしか注文できなくて失敗が許されない状況になってしまったの。まぁ失敗の仕様がないくらい簡単で手順書も全員に配られたわ」 そこまで話すと茜さんはまた飲み物を飲んだ。 「期限は卒業式の行われる2日後までだったけどほとんどの生徒が渡された当日、翌日には完成させていたわ。梅原は1組で出席番号が1番てこともあってパネルの1番上の左角、目立つところだったの。卒業式当日の朝パネルを見るとまだ何個か花のついてない箇所があって、何人かの生徒が慌ててつけに来てたのを覚えてる。それでも左上角は埋まらなかった。見かねた私は梅原に直接言ってやろうと思って探したんだけどアイツはいなかった。アイツは学校を休んだの」 「それで卒業式はどうなったんですか?」 「式自体は何の問題もなく済んだわ。ただ誰もが気付いたのたったひとつだけ花がないことに。2年生のみんなが怒りを感じていた。翌日梅原に何人もの生徒が詰め寄った。だけど、アイツは作る過程で間違えて完成しなくて式を休んだ、終わったことだからもういいだろうとか言っていたわ。それから何となく皆がアイツを嫌うようになった、私もその1人」 そこまで話して少しの沈黙があってから私は聞いた。 「茜さんは梅原さんが本当に作るのを失敗してそれを隠すために学校を休んだと思いますか?」 「さぁね、どうかした?」 「いえ、私には梅原さんがそんなことをするような方には見えないので。それにそこまで不器用な人でも無いような気がします」 「確かに、言われてみればアイツがあれくらいの工作をできないとは考えにくいんだけど、それでもやったことは最低だと思う」 ずっと黙っていた濱田さんが口を開きました。 「そういえばあの時、最初は生徒会の人が皆から責められていたよね」 そう言われて茜さんがなにか思い出したように言いました。 「あぁ、新島比奈ね、材料の発注をしたのが彼女だったらしくてミスをした。それで非難されてたわね」 私はハッとした。 「新島比奈さんって、2年A組の新島さんですか?」 「そういえば彼女もうちの高校だったわね」 新島さんなら何か知っているかもしれないと思いましたが彼女とはそこまで親密な仲ではありません、それにそんなことを聞いていいものかどうかも悩みます。 でもこの件はなにか別の理由がある気がします。 「濱田さんはどう思いますか?梅原さんが本当にそんな理由で休んだと思いますか?」 そう聞かれた濱田さんは少し驚いた様子を見せた後静かに言いました。 「どうだろうね、孝太らしいと言えばそうだし。僕は彼を嫌いになることなかったかな」 それを聞いて茜さんが言い返します。 「友也は優しすぎるのよ」 話をしているといい時間になっていて私たちは帰ることにしました。 二人と解散した後私は新島さんに連絡して後日会うことになりました。梅原さんがそのような行動に出たことは失礼ながら納得もできます。ですが何か別の理由があることを望んでもいました。私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま自宅に向かいました。 3 新島さんとは学校で会う約束をしました。彼女は科学部に所属していて理科室にいるとのことなので私は向かいました。理科室に入ろうとした時に声をかけられました。 「天草さん?」 振り返ると新島さんの姿がそこにありました。 「やっぱり、話すのほとんど初めてだよね?なにかよう?」 私は何と言っていいのか分からず少しあたふたしましたが、率直に聞こうと思いました。 「あの中学の頃のお話を聞かせていただけませんか?卒業式の花の件です」 そういうと彼女は少し暗い顔をして俯いた。 「あぁ、そのことか。ここじゃなんだしとりあえず入って」 そう言われて私は理科室に入りました。ほかに生徒の姿がなく、2人で机を挟むように座りました。 彼女の方から話を切り出してくれました。 「そもそもなんでそのことを知ったの?」 「私今年から探偵部に所属していて、清水さんや濱田さん、そして梅原さんと仲が良くなりました」 そこまで言うと彼女は少し微笑んだ。 「へぇ、懐かしいな。みんな元気?」 私ははいと答えて、本題に入ろうとした。しかし彼女の方から切り出された。 「なるほどね、聞きたいことは分かったよ。梅原くんのことでしょ?」 「そうです、私は彼の行動に納得することができなくて……」 「だろうね、皆そうだった。彼は私の恩人の1人。今でも感謝はしている。でもそのことを彼が話さないのなら私からも話すことはできないかな」 恩人?感謝?どういうことでしょうか。やはりあの件にはなにか別の理由がある気がします。 「もし仮に彼に本当のことを聞いても嫌いにならないであげてね、それじゃあこれで」 そう言って彼女は部屋を出て行った。 確かに梅原さん本人に聞くのが1番だとは分かっていたつもりでした。それでも聞いてはならないような後ろめたさがあって私は彼女のもとに聞きに来ていた。しかし、こうなっては本人から教えてもらう他ないと思えました。 私は携帯電話を取り出し、梅原さんにメールを送った。昨日のカフェに来て欲しいと。店の名前となんとなくの場所を伝えました。 少ししてから了承の返信が来たので私は急いで学校を後にした。 私がカフェについた時すでに梅原さんは中でコーヒーを飲んでいました。私は梅原さんのいる席に向かい、正面の椅子に座りました。 私もコーヒーを注文して、それが届くまでは沈黙が続きました。 彼が真相を話してくれる保証はありませんがそれでも聞かずにはいられませんでした。 私はコーヒーを一口飲んでカップを置いてからゆっくりとそして真っ直ぐに梅原さんの方を見ました。 4 とある休みの日の昼、突然天草からメールが来た。 話をしたいからカフェに来て欲しいとのことだった。 別に予定があったわけでもないので了承のメールを送り、着替えて家を出た。 待ち合わせのカフェは先日友也に誘われたカフェだった。名前と場所を送られていたのでそれを頼りに歩く。そう遠いわけではなかった。 店は小さいが入るとコーヒーの香りと妙に落ち着くBGMが掛かっていた。後から1人来ると告げてテーブルに案内された。先に注文するかどうか迷ったがコーヒーを飲みたくなったので注文した。天草がそれで怒るようなやつではないと信じたい。 コーヒーが届いてから少しするとカランカランという音とともにドアが開き、見ると天草が入ってきた。休みの日だというのに制服であることに違和感がある、学校にでもいっていたのか?天草はこちらに気付くと少しホッとしたような顔をしてから寄ってきて席に着いた。俺は一体なんの話をされるんだ?どうせまた厄介ごとだろうと思っていたが、天草がなかなか話し始めない。俺から切り出した方がいいのか? そんなことを思っていると天草の頼んだコーヒーがきた。そして一口飲んだ後、こう言われた。 「梅原さんに聞きたいことがあります」 「なんだ?」 「中学の卒業式、花の件についてです」 俺は驚いた天草からそのワードが出てきたことに、おそらく俺は目を見開いていたと思う。 「なんでそれを?しかもいまさら」 「先日茜さんや濱田さんからお話を聞きました」 なるほどね、あの二人め余計なことを。そういえばあれからもう2年が経つのか。 「だったら聞くことなんかないだろう、アイツらの話が全てだ」 「いえ、わたしにはまだなにかあると思っています」 「別にないさ」 「今日、新島比奈さんにも話を聞きに行きましたが詳しく教えてくれませんでした」 「新島?アイツうちの高校だったのか。そうか、元気にしてたか?」 「そうですね、どちらかというと元気だと思いますよ。彼女は梅原さんのことを恩人と言っていました。どういうことですか?」 これ以上の問答は無駄かもしれない。自分の話をするのは好きではないのだが、こればっかりは仕方がない。天草が引くこともないだろうからな。 「分かったよ、話すよ。ただしこのことを二度と話題にしないと誓ってくれ」 この話を何度も持ちかけられるようなことはゴメンだ。 「分かりました、誓います」 天草はそう言ってくれた。俺は大前提として一つの質問を天草に投げかけた。 「天草、お前からして俺はものぐさな人間だと思うか?」 天草は考えるように顎に手を当ててから答えた。 「そうですね、どちらかというとめんどくさがりな方だとは思いますね」 そうまっすぐに言われるとなにか刺さるものがあるのだがまぁ今はいい。 「そう俺は他のやつに比べて明らかなほどにものぐさな性格をしている。別に短所だとは思っていない」 「どういうことですか?」 「まぁ、これは前提としての話だ。本題に入る」 俺はコーヒーを飲んでから続けた。 「お前が友也たちからどこまで聞いたかは知らんがあの時、新島は生徒会で花の飾りの材料を発注したが個数を間違えて生徒分ピッタリしか材料がなくて失敗が許されないことが全生徒に告げられた。そのことで新島はひどく罵倒された。まぁ正直に言って簡単ではあったからミスの使用もないと思えたが、200人ほどの人間が全員ノーミスなんてことは無かった。ある女子生徒が作る過程でミスをした。それもどうしようもないミスだった」 そこまで話すと天草が割って入ってきた。 「まさか!それが新島さんでそれを助けるために梅原さんが身代わりに?」 そんな美談ではない。 「違う、まぁ落ち着いて話を聞いてくれ」 そういうと、天草はすみませんと言ってコーヒーを啜った。 「そのミスをした生徒は女子の中でも権力的なものが大きいやつでプライドの高いやつだった。その生徒は自分がしたミスを許せなくなり、それもやり直しができないとなれば怒りの矛先は新島に向けられた。彼女は取り巻き数名と一緒に新島を呼び出したんだ。後から知ったことだが、彼女は元々新島に対してイジメをしていたらしい。新島の材料を取り上げてそれを自分のものにしたんだ。その状況でたまたま近くにいたのが俺だったんだ」 「それで梅原さんは新島さんを助けたんですか?」 そう言われてなにかこそばゆい感じがした。そんなカッコいいことをしたいわけではない。 「翌日には式を控えていたし、おそらく現状花を飾ることができないのは新島一人、そのことが気の毒に思えてな、自業自得といえばそれまでだが。俺は見ているだけではいられなくなったんだ。それで自分の花を新島にあげた。そして当日のギリギリに飾るようにも告げた。もし新島の場所にすでに花が付いていたらまたイジメの対象になるかもと思ってな」 天草が静かに聞いてきた。 「それで梅原さんは飾ることができなくなって学校をやすむことにしたんですか?」 「友也に相談したが流石にその日中になんとかするのは無理だった。まぁ新島が飾りつけないのと俺が飾らないのでは意味が違ってくる。最初に言ったが俺は周りから見てもものぐさな人間だ、それを理由に全てを放棄したところで大したことではないという結論に至ったのさ」 そこまで話俺はコーヒーを飲んだ。 「じゃあ濱田さんは全てしっていたんですね。その上で黙ってらしたなんて」 「友也を責めるなよ、俺が黙っているよう言ったんだ」 「ですが、梅原さんはそれで嫌われることになったとしたらそれはひどい話ではないですか?」 「そうか?俺は元々誰とでも仲良くするタイプではないし、何か言われて気にする方でもない。女子ってのは不思議とそうもいかない生き物だろう。それに俺が卒業式を休んだのはもっと別の理由だ。花の件は関係ない」 天草が納得したのかは分からない、でも天草なりに解釈してくれたようだった。 「梅原さん、話してくれてありがとうございます。やっぱり梅原さんはいい人です。信じて良かったです」 そう言われて恥ずかしさからか俺は外に顔を向けこう言った。 「勘弁してくれ、バカにされてる気分だ」 そのあとは卒業式に在校生として参加しない理由を話したりして時間を潰した。在校生としての参加するか否かについては天草とわかりあうことはできなかった。天草と解散した後は家に帰り眠りについた。昔の自分がどうしてあんな行動を起こしたのかは分からない。もし今でもあの状況に陥った時、同じことをするだろうか。俺のものぐさはあの頃より強化されている気がする。もうあんな行動は二度とないだろうと自分の過去に失笑した。 数日後の朝、学校に向かっている途中で声をかけられた。 「おはよう、梅原」 声の方に目を向けると清水がいた。適当に挨拶を返し歩いてると清水が急にこう言った。 「ごめんね、梅原」 俺はなにが?と思った。 「謝られるようなことをした覚えはないぞ」 そういうと、清水はこちらを向くわけでもなく話し始めた。 「中学の花の件よ。るみちゃんから聞いた。勘違いしてたわ」 なんだそのことか。お前まで今更そんな過去のことを。 「もうその話は勘弁してくれ」 「そう?じゃあ行くね」 そう言って清水は足早に学校に入っていった。 今になって自分の過去を探られることに少しの不快感と数人の誤解が拭えたこと対する快感でおかしな気分だった。それでもなんとなくいい春休みを迎えられそうな気がした。 俺は別に卒業式に参加しないだけで卒業生を送る気持ちは持ち合わせている。だったら式もでればいいと言われそうだがそれは違う話だと思っている。だからなんだ、言ってないことがあった。 卒業生諸君、おめでとう。 これで俺は心置きなく3年になれるし春休みを迎えられる気がした。

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