#4

第4話 嘘と真実

「被害者は副島明子、  年齢は43歳で中肉中背、副島十郎の妻であり  この日は昼から婦人会の集まりで  近所の友人宅へ出かけていたが、  途中で自宅に戻ったところを殺害  死亡推定時刻は午前12時30分から午後13時と  考えられる。凶器は大きめの刃物であると推測される。  腹部を真下に割かれており、内臓が引きずり出されていた。  顔はアゴ部分からおでこにかけて皮を剥がれており、  剥がされた皮の所在は不明かぁ」 刑事の日津見は副島家で現場捜査をしていた。 「日津見さん、第一発見者の斎藤大真さんを向こうの部屋に  またさせてあります。警察が来た時には玄関付近で  座り込んでたみたいです。」 「通報したのは彼ですか?」 「ええ、通報を受けた警官が言うには  かなりパニック状態だったとか。」 「わかりました、とりあえず私から話を聞いてみましょう。  彼と二人きりにしてください。」 日津見はそう言うと奥の部屋へ入った。 大真は部屋の隅でガタガタと震えていた。 「あぁ〜斎藤さん、大丈夫ですか?  ゆっくり深呼吸しましょうね。」 「絶対・・絶対に・・あいつが・・・」 「斎藤さん落ち着いて今この部屋にはあなたと私しか  いませんから、安心してください。」 日津見の言葉で徐々に大真は冷静さを取り戻していった。 「なるほど、あなたが帰ってきた時には  既にドアの鍵は開いていて、叔母の明子さんは  亡くなられていたと・・出かけられる前に  明子さん何か言われていましたか?」 「お醤油を買ってきてほしいと頼まれました。  後、15時までには帰るからと・・・」 「そうですか・・しかしなぜ亡くなられた明子さんは  2時間も前に自宅に戻ってきたんでしょうかね。」 「・・わかりません・・」 大真はうつむき拳をぐっとにぎた。 「斎藤さん今日は何かありましたか?なんでも構いません。  気になったことがあったら話してください。」 日津見の言葉を受け、大真は小さな声で言い始めて。 「今日の昼間にスーパーで買い物中に、  中学時代の後輩と会いました。その後彼女の家に  招かれて一緒に昼食を食べました。  彼女の家から叔母さん家に帰ろうとしたとき、  ・・・知り合いに会いました。」 「そのお知り合いとはん何か話しましたか?」 「・・・あいつが・・・あいつが・・・」 「斎藤さん落ち着いて、お知り合いの方は何か言ってました?」 「去り際に『叔母さんによろしく』って言いました・・・  その後は先ほど説明した通りです・・・」 「そうですか・・・できればその『叔母さんによろしく』と  言っていたお知り合いのお名前、お聞きしても?」 「・・・・暮西 日乃空とういう中学時代の後輩です・・  刑事さん!絶対に絶対に・・解明してください。」 「ええ、もちろんです。明子さんの無念を晴らすためにも  そして、与域田 乃明さんの件も必ず。」 「・・お願いします・・・」 大真は泣きながら日津見の手を握った。 「斎藤さんよろしければ、私の自宅に来てくれませんか。  あなたに見せたい物があります。」 「見せたい物・・・わかりました。」 「十郎さんにはうちの警官が職場に行って説明をしてるので  心配なさらずに。それでは行きましょう。」 大真は日津見に連れらて副島家を後にした。 日津見の車に乗り込む際、大真は異様な視線を感じとった。 彼が車内から外をうかがっていると、 近くの物陰からこちらを見ている人物がいた。 うっすらと笑みを浮かべ、ブツブツと何かを言っている。 それは夕四家の帰り道に出くわした、日乃空だった。 「あいつ・・・なにを言って・・・」 大真は彼女の口元を見た。 (天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅) 彼女はこちらを凝視したままひたすら『天誅』 といい続けていた。 「ん?どうかしましたか斎藤さん。」 「あいつが・・・叔母さんを・・・・」 日津見は彼の見ている方向に視線を合わせた、 しかし、そこには誰もいなかった。 「どうぞ、入ってください。  少し散らかってますがお気になさらずに。」 大真は日津見の自宅に来ていた。 「おじゃまします・・・」 部屋の中は資料や段ボールの山がそこら中に 置かれていた。 「あぁ〜斎藤さんこちらに。」 大真は日津見に奥の部屋に通される。 「見せたい物って言うのはですね〜これなんですよ。」 そう言って彼が見せくれたのは与域田 乃明の神隠し事件に 関しての調査記録だった。 「これは1年前に与域田 乃明さんが行方不明になった時の  調査記録なんですがね、この中には斎藤さんあなたの名前、  そしてお友達の名前ものっています。  しかし、証言が今ひとつなんですよ。」 日津見はページをめくり証言内容を指差す。 「ここ当時あなたやお友達が乃明さんとの関係や  行方不明になった当日の証言があるんですがね、  今日私の車でお話しされた内容と少し違うんですよ。」 大真は証言内容に目を通す。 斎藤大真:与域田 乃明とは同じ中学に通い、      関係も至って良好なものであった。      事件当日は与域山の裏手にある      ひまわり畑で与域田 乃明と他数名の      友人と午後17時〜19時頃までその場で      遊んでいた模様。      途中で雨が降り出したので、与域田 乃明を      含めた友人数名は山の中の休憩所で      雨宿りをして、雨がやんだ午後20時頃に      山を降り帰宅した。      帰りは与域田 乃明は一人で帰った模様。 「どうです?少し違ったでしょ。  後半部分であの日は雨が降ってたと書いてあります。  しかし、ここ数日の聞き込みではあの日、雨が降ってた  なんて誰も言いませんでした。あなたを除いてはね。」 「・・・ええ、あの日は確かに途中雨がひどく降り始めて  山の中の休憩所にそこにいた全員で避難しました。  1時間ほどすると雨も止みましたが、時間も遅かったので  家族が迎えに来ている子もいました。」 「斎藤さん、あなたは一人で帰ったんですか?」 「ええ、途中までは乃明と日乃空の3人で山を降りて  麓のバス停で別れました。」 「3人とも別々に?」 「ええ・・・」 「斎藤さん、私はその時のいたお友達の中に  与域田 乃明さんを神隠しにあわせた人物がいると  考えています。」 「・・何でそう思うんですか?」 「その日みなさんが帰宅された時間は確かに多少の  ズレはありました。夕四ミヨさんと西土 埋さんは  山手に住んでおられましたよね。なので帰宅時は  午後20時10分頃でした。与域田 乃明さんの家も  山手にありますから、そのまま帰宅していれば  そのくらいの時間には自宅に着いていたでしょう。  丹山 友里さんは山手からは少し離れた場所にお住まい  でしたが、お父さんに車で送り迎えしてもらってた  こともあり、帰宅時は午後20時20分頃でした。  っで斎藤大真さん、あなたと暮西 日乃空さんのお二人ですが  他の4人に比べると帰宅するのにかなり時間が  掛かっていますね。あの日は徒歩でおかえりに?」 「いえ・・俺と日乃空は自転車で帰りました。  俺は通学にも使ってたので、次の日に取りに来るのも  面倒だと思って。」 「そうですか、確かに当時あなたが住まわれてた場所と  日乃空さんのお住まいは山からはかなり距離が  ありますよね。着くまでに自転車で30分くらいは  かかりますよね?」 「大体そのくらいは・・・」 日津見は腕を組み少し納得のいかない表情を見せる。 「しかしですね、日乃空さんの帰宅時間は  この5人の中で一番遅いんですよ。」 「・・そうなんですか?・・」 「ええ、斎藤さんが帰宅した時は既に午後20時30分頃だった  と書かれてますが、日乃空さんはそれよりも遅い  21時頃なんですよ。」 「・・確かに遅いですね・・・」 「でしょう?住まいは斎藤さん宅からも近かったので  あなたと同じ午後20時30分頃には家にいないと  おかしいんですよ。何故自転車で帰り着くのにそれ程までに  時間が掛かったんでしょうか?」 「・・・わかりません・・・」 大真は何故彼女が遅く帰ったのか、その理由を知っていた。 しかし、それは自分の仕方ことの告白することとなるので 彼は言うのに躊躇してしまった。 「斎藤さん、あなた知ってますよね?  彼女が何故他の4人よりも遅く帰ったのか・・」 「日津見さんこれは今まで誰にも話したことはありません。  なので、絶対に口外しないでください。」 「わかりました、お約束しましょう。」 日津見がそう言うと大真はかなり暗い表情で話し始めました。 「あの俺たちがひまわり畑でかくれんぼをしていた時の  みんな畑の中に隠れていて、日乃空が鬼をやっていました。  俺が隠れていると、乃明が駆け寄ってきて  『一緒に隠れよう』と言ってきました。俺は『いいよ』と  言って乃明と畑の奥の方に隠れていました。  そして、少しすると乃明がいきなり俺に告白したんです。  『小さい頃からずっと好きだった、卒業までに思いを   伝えておきたかった』と。  俺は驚きましたが、少し前から彼女の気持ちに気づいていた  のもあって『ありがとう、嬉しいよ』と答えました。  しかし、その場を鬼役でみんなを探していた日乃空に  見られたしまったんです。」 大真は少し悲しげな目で少し笑いました。 「日乃空は悲しげな表情で俺ら二人を見ながら、  その場に座り込むと泣き始めました。  そして乃明に向かってこう言ったんです。  『裏切り者』と。  その時、俺は気付きました。  日乃空が俺へ恋心を抱いてたことに。  すぐに他の3人もその場に駆けつけて、友里が日乃空を  宥めてくれました。  遊びは打ち切られ、俺は友里と話し合いをしました。  友里は両方から相談されていたらしくこれまでの経緯を  教えてくれました。  乃明は一人っ子で小学生の頃は俺のことを『真兄』と  呼んでいました。その気持ちが徐々に恋心にかわった  のだと聞きました。  日乃空の家は一度離婚していて、母親に引き取られたん  ですが、その母親の再婚した男性が酒乱で夜になると  日乃空に暴力を振るっていたんです。日にひに衰弱していく  彼女を見兼ねた俺は自宅に数週間預かることにしました。  その間に彼女の母親からは何度か自宅に連絡はありましたが、  『あの男が出て行かない限り日乃空は返しません。   これからも俺の家で預かります』と俺は言って、  日乃空を親には渡しませんでした。それから俺や俺の親と  過ごすにつれて、少しずつ彼女は正常に戻って行きました。  連れてきた時は、かなり精神的にギリギリだったようで  手首や腕にリストカットの痕や足や体に打撲の後なども  見られました。結果的には彼女の母親は男と別れ  日乃空を迎えにきました。その時に俺の姿に  彼女は好意を寄せる切っ掛けになったとのことでした。」 「なるほど、それで・・」 「あぁ、それで日乃空は乃明にも相談をしていたようで  彼女の気持ちを知っていた乃明が自分を差し置いて告白し  挙句俺もその告白に答えてしまったのがかなりショック  だったようでした。」 「それで、あなたはどうしたんです?」 「俺は二人に『これからも友人でいて欲しい』と言いました。  乃明の方は泣いていましたが、日乃空はその場に  膝から崩れ落ちると『何で』と呟いてました。」 「日乃空さんの境遇を考えると少し心が痛い話ですね。」 「ええ・・あの時俺は日乃空を選ぶべきでした・・  だから・・・乃明があんなことに・・」 大真は泣きながら頭を抱えた。 「斎藤さんゆっくりでいいですからね、少し休憩しましょう。」 「んぐっだっ大丈夫です。」 「そっそうですか・・・では続きを」 「・・話し合いが終わると乃明は帰ると言い出し、  一人で帰ってしまいました。残った俺たちはとりあえず  気を紛らわそうと最近あったことや学校での話を  していました。日乃空だけは一人で少し離れたとにいて、  ぶつぶつと独り言を言っていました。  少しすると雨が降り出し、俺たちは山の休憩所に避難  しました。しかし日乃空の姿がそこにはありませんでした。  おかしいと思った俺は休憩所にあったビニール傘をさして  休憩所の周りを探しました。」 「それで彼女は見つかったんですか?」 「ええ、すぐに見つかりました・・・・。  ・・彼女は全身ずぶ濡れの状態で山の上から  降りてきたんです、両手に何かを持ちながら。」 「・・何を持っていたんですか彼女は?」 「・・右手に・・乃明の・・・乃明の生首を片手にぶら下げて  左手には血まみれの大きなノコギリを持っていました。」 「・・・なんだと・・」 日津見は目を見開きました。 「日乃空は楽しそうに歌っていました・・」 「なんと歌っていたんですか?」 「『茜に染まる山間に、響き渡るは   悲しき悲鳴。重い思いが伸し掛かり   息もできずにもがくのみ。   流れる水が血に染まり、終わることなく   いつまでも・・・。』それ彼女が乃明を殺した光景を  歌ったものでした。」 「それで・・乃明さんの体は・・」 「日乃空に体はどこか聞くと『山神様の生贄にお供えした』と  いいました。俺は友里を呼んできて事情を説明しました。  彼女もかなり驚いていましたが、『わかった一緒に行く』と  言ってくれました。休憩所にいたミヨと埋には  『降りられそうか二人で見てくるからここで待ってて』と  告げて、日乃空と俺ら3人で山の上へと登りました。」 「登ったらどうなってました?」 「登ると少し開けた所があって、その奥に祠があるんです。  この山に住むとされる山神様を崇める場所です。  その祠の前に・・彼女のバラバラにされた屍体が  並べられていました。」 「やはりノコギリで?」 「ええ、腕・脚・胴体は上下で半分に切断され・・・  血が雨水にあたり一面血の海でした・・」 「それであなた達はどうしたんですか、彼女の遺体をっ」 日津見が質問したその時、 ピンポーン♪ 突然玄関の呼び鈴がなりました。 「んっ?こんな時間に誰でしょうか?」 日津見が立ち上がり玄関へ行こうとすると 「ダメです!絶対にドアを開けてはいけません。」 大真が緊迫した声で言った。 「なぜですか・・・」 「先ほどの話・・亡くなった彼女の名前を、  俺は何度も口にしました。  すみません・・伝えていないことが一つあります・・  この話を知った人物は『呪い』を受けるということです。」 「呪い?斎藤さん何を・・・」 その時、玄関がひとりでに空いた音がした。 「彼女です・・与域田 乃明です。彼女は山で殺された  その挙句に俺ら3人の手によって誰にも見つからない場所に  隠されてしまった。その恨み辛みが彼女をこの世に止めて  しまったんです。」 「斎藤さん落ち着いてください、きっと閉め忘れて  空いただけですよ、私が見てきますから。」 そう言って日津見は部屋を出ると玄関へと向かった。 見ると扉は空いているがそこには誰もいなかった。 日津見はそっと扉を閉めて部屋に戻ろうとした瞬間 扉の向こうから 『茜に染まる山間に、響き渡るは  悲しき悲鳴。重い思いが伸し掛かり  息もできずにもがくのみ。  流れる水が血に染まり、終わることなく  いつまでも・・・。』 と先ほど大真の話に出た、暮西 日乃空が歌っていた 歌が聞こえたのだった。 日津見は恐るおそるのぞき穴から扉の向こうを覗いた。 するとそこには片手にノコギリを持った暮西 日乃空が こちらを凝視しながらあの歌を歌っていた。 つづく

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