異世界を救うヒーロー!になるはずが..。【クラス転移】~帰れるのは数人だけ~のサバイバルに?!

読了目安時間:9分

トロル参上!二葉大ピンチ…!

   ◇  「はぁぁぁぁぁ……。」  今日が始まってから何度目のため息か、もう数えるのも嫌になる。  しかし、中でも最も長くて深いため息だろうと、俺は思った。    あれから俺は、麦屋さんが呼び戻した双葉さんに、追い出されるようにして外に出た。  特に、夜までにやるべき事は沢山あるが、今の状況では、何に対してもやる気が出ない。  そんな訳で俺は今、草原に転がってぼーっと、空を眺めている。  「隣、良い?  ……薪拾い、抜け出してきちゃった。」  びっくりしたぁ!  いきなり視界に顔が現れて、そう声をかけられた。  四つん這いになって覗き込んでいるのか、近い、近いって。  「あ、どぞ……」  俺はやや照れ気味に答えた。    「やったっ!私もこういうの、やってみたかったんだっ〜♪」  彼女はそう言って俺の隣で仰向けになると、一度深呼吸をした。  少しでも動くと肩や手が触れる。  彼女の息遣いが伝わってくる。  割と小さい頃から結城や、希子と一緒にいたので、女の子に慣れていないというわけではなかったが、なんだか緊張してじっとしていられないわ…。  俺が起き上がると、彼女も同じようにして俺の方を見つめる。  『さっきはごめんっ!』  先程の事を謝る絶好のチャンスだと思ったが、彼女も俺と全く同じ言葉を発した。  「---え?」  「せっかく明日葉くんが励ましに来てくれたのに、私、無視しちゃって……」  申し訳なさそうに下を向く彼女。  「そんな、悪いのは全部俺ですよ…空気を読まない様な発言をしちゃって…。」  「ううん、確かに明日葉くんも、双葉ちゃんもいけない所はあったけど、私がもっとちゃんとしてれば、こんな事にはならなかったと思うの。  だからごめん!」  「…でも、もう大丈夫!  私も…これからは前を向くよ。  だから落ち着いたら、もう一度皆で話そう?  きっと仲直りもできると思うの!」  ……そうだよな。  一人で何とかしようとするから失敗するんだ。  全く、結局俺が逆に励まされてらぁ。    「…今度は絶対笑ってくださいよ……?」  「アハハ、でも、あれはちょっとなぁ〜……」  彼女は呆れ顔で答えた。  …そんなに酷かったか?  「わ!見てみて!めちゃめちゃ綺麗だよ!」  突然、彼女は大空を指差す。  まだ明るかったが、空気が澄んでいるからか、空にはもう既に星が見える。  確かに綺麗だ。  月の様な惑星が今見えるだけで三つ程あること以外、変なところもないしな。  俺達が夜空に夢中になっているとき、事件は起こった。  <イヤアアアアァァッッ!!>  背後から甲高い悲鳴が聞こえた。  「何事でござるか?!!」    森の方から大量の薪を持って池田も出てきた。  「双葉さんだ!!  何かあったんだと思う…。  ちょっと行ってくるから、麦屋さんを頼んだ!!」    俺はそう伝えると、さっきの家に急いだ。  ◆◆◆数刻前、双葉達サイド◆◆◆  あー、あ。  神様、私何かしましたっけ…?  部活で忙しいけど、勉強も頑張ってたし、家の手伝いだって、たまにだけど頑張ってやってたじゃない!  なのに何なの?!  喉乾いたし、お腹空いたし、汗かいたからお風呂にも入りたいし!  クラスメイトにあたっちゃうし…。  痛かったよね、たぶん……。  駄目だ、冷静になろう。  バレーだって、上手くいかないとき、感情に任せたら絶対失敗する。  謝らなきゃ。  「あ、あのさ…。」  私は立ち上がって、まず近くにいる二人から謝罪すべく、歩み寄る。  「どうしたの?双葉さん」  「いや、さっき、私…嫌なこと言っちゃったかなって…。  その、謝りたいというか……。」  「ゔ?!!」  私が彼らの前に立つと、驚いたように彼らは目を大きく開き、口を恐怖で歪ませた。  (…何よ?そんなに怖がることないじゃない…!)  「さっきはごめんなさっ……」    <ドンッ!>  私が最後まで言い切る前に、筋野くんが私を突き飛ばし、二人は出口の方へと走って行った。  「キャッ!」    私は小さく悲鳴を上げて、その場に尻もちをついた。  「イタタ…何なのよ!もうっ。」  <ボダッッ…!>  背後で何か液体の垂れ落ちるのが聞こえた。  お、お水…?!  そう思って後ろを振り返ると、そこには想定外の光景が広がっていた。  視界を埋め尽くしてしまうほどの巨体。  背丈は2メートルを優に超えるだろう。  お相撲さん二個分じゃ全然足りないような横幅。  皮膚は不健康そうな緑色で、あらゆる場所にブツブツが出来ている。  腰にタオルを巻いているだけ、ほぼ全裸の様な状態であり、特に下半身から耐え難い異臭を放っている。  「イヤアアアアァァッッ!!」  思わず悲鳴をあげる。  今すぐにでも逃げ出したかったが、腰が抜けてしまったらしく、思ったように動けない。    「うぉぶっすぅ…ぅっうっつ!…」  意味不明の言葉を発しながら、ソレは段々と私に近づいてくる。  嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ    お尻のあたりが生温かくなる。  おしっこ……出ちゃった…。  私の体から漏れ出た液体を見ると、ソレはますます嬉しそうにし、奇声をあげる。  下半身の一部を膨張させ、それとともに異臭も一段とキツくなった。  最早、抵抗の気力も削がれた私に十分近づいたところで、ソレは私を捕まえようと右手を出す。  体が宙に浮くのを感じた。  きっとこのまま、陵辱され、死んじゃうんだ。    ……?  しかし、不思議なことに、私はすぐに地面に着地した。  それも、落下の衝撃もほとんど感じなかった。    一体何が起こっているのか、怖くて閉じていた目を再び開けると、誰かが自らをクッションにするようにして私を抱きかかえていた。  それが誰かは、彼の頬に薄っすらと残っていた私の手形ですぐに分かった。  「明日葉くん……?」  「うす…お待たせしました…!」  ◆◆◆     ◆◆◆  さあて、格好良く登場したはいいものの、こっからどうするかな。  魔法も使えなければ、ろくな武器もねぇ。  そんな状況でいきなりこんな化け物級と対峙するとは。普通はスライムからだろうが!  こうなれば仕方ない。この化け物がチョー臆病な事にかけるしか無いな。  男の俺が出てきた事で、焦って逃げるんだ!そうだ、それ、行け!!  <ドガァンッ!!>  俺の期待とは反対に、奴は怒ったように声を荒げながら、俺達のいる場所に拳をぶつけた。    「ぶねぇ……」  俺は彼女を抱えてすんでのところで避けたが、本格的戦闘になれば、まず勝ち目はない。  十中八九一発KOである。  かと言って話ができる相手ではないし、そもそも交渉材料もない。  やはりあの作戦でいくか。  八方塞がりのようにも思えたが、この状況で一つ、俺は打開策を見出していたのだった。  「ちょっと走りますよ!」  そう双葉さんに声をかけ、トロルから見えない位置に身を隠した。  やはり人一人抱えていると多少の移動しか出来ないが、今回の場合はこれで十分だ。    やはり、すぐ来ようと思えば一瞬で来れる位置にいるのに、化け物は急いで追ってくることはしない。  「私に何か…出来ることはある……?」  好都合なことに、俺が協力を要請する前に、彼女は自らそれを申し出た。  ……頼んだら嫌われるかもしれないけど…。  「多分ですけど……  今、奴は完全に状況を楽しんでるんだと思います。  俺達くらい、いつでも捕らえられると高を括って、慢心してるんすよ。  だからこそ化け物を出し抜くなら今しかないと思います。」  「…うん、分かってる。  何でも言って?」  彼女は力強くこちらを見つめる。  少し前まで恐怖のどん底にいたのに、本当に強い子だ。  これが運動部のメンタルってやつなんだろうか。  俺には一生理解出来ないものだろう。  「それで……他にも色々考えたんだけど…この方法が一番可能性が高くて…。」    本当はゆっくり休ませたかったが、そんな時間あるはずもなく、俺は急いで彼女に作戦を説明する。  「……ハァ!??  そりゃ、私、身長高いし、出来なくは無いんだろうけど……  …大丈夫なの?」  「大丈夫大丈夫!  脱ぐときはあっち向いときますし--」  「そうじゃなくって!  …明日葉君、死んじゃ嫌だよ…?  そんな無茶な作戦……。」  どうやら心配してくているらしい。  建前じゃないって事は、目を見れば分かった。やれやれ、とりあえず嫌われて無いようで良かった。後でちゃんと謝ろう。  しかし、それには二人とも生きていることが大事だ。  もし仮に、この作戦で俺が死ぬとしても、異世界で美女を救って死ねるなんて本望だ。  「ま、大丈夫よ。  双葉さんの方も作戦通りに頼みます。」  死亡フラグがたつと嫌なので、俺はこれ以上喋らず、化け物の方へ駆け出した。  ◆  予想通り、予想通り!!  奴め、完全に俺のことを双葉さんだと思ってやがる!  俺たちの作戦は至ってシンプル。  1.俺が双葉さんの格好をして化け物を引き付ける。  2.その間に双葉さんは池田たちと合流する。  動けない双葉さんを確実に逃し、なおかつ雨風をしのげ、暖を取れるDチーム生存への砦、あの集落を守るためには、こいつをできるだけ遠くに引き剥がすしかねぇ。  俺は化け物が追いつけそうで追いつけない、ギリギリのペースで走り続けた。  スタミナの限界が来たところで立ち止まる。  有希ちゃんの授業をもっと真面目に受けていれば、もう少し行けたかもしれないが、そんなことを考えても仕方ない。  周囲に俺と化け物の荒い呼吸音が響く。  だいたい整ったところで、俺は喋り始めた。  「よお、変態ヤロー。  オメーは男でも勃つのか??」  顔を上げた俺を見て、化け物は一瞬、硬直した後、まるでおもちゃを買ってくれと、駄々をこねる子供のように泣き出した。  「あーあ、これで諦めて帰ってくんねぇかなぁ……」  俺はその、何とも気持ちの悪ぅい光景を見ながら、考えていた。  ていうか、じゃなきゃ、まず、俺は死ぬ。  死、なんて、思えば俺が、小学生の頃から使っていた言葉ではあるが、今回はマジモンのマジなんだよなぁ。    化け物の方はというと、もう出す涙がなくなったのか、十分程で突然泣き止み、俺の方を睨みつける。    「Oh…」  どうやら天命が定まったようだ。  俺に下されたのは、死の決定。  逃げる時間があったのは確かだが、そもそも俺にその選択肢はない。  仮にまたあの集落に逃げ帰ったとして、こいつが再び襲ってこない保証はどこにも無かった。  その点、仮に俺が死亡した場合、せっかく呼び出した奴隷が秒殺された事で、俺たちを呼んだ奴らが何らかの対応をするはずである。  悪あがきは嫌いだ。そもそもめんどくせぇ。  俺は空を見上げた。  俺の人生、今まで適当に生きてきたし、これからも何となく高校出て、適当に就職して、結婚して、まあ、子供も生まれたりして。  彼らに看取られながら死んでいくもんだた思ってたが、まあ、別にいいか。  誰かを守って死ぬなんて、かっこいいじゃねぇか。  <ブシャアァァッッ!!>  聞いていてあまり気分は良くない、そんな音とともに、辺りが真っ赤に染まる。  気づけば、俺を掴んで口に運ぶはずであった、ゴツい手は、肘の辺りまで切り込みを入れられ、そこから大量に血が飛び出している。  お前の血も赤いのか……。  そんなどうでもいい事を、ぼーっと考えているうちに、全てが済んでしまった。  いつの間にか、化け物の首は落ちており、恐らく、それを切ったであろう人物が、俺の前に立っていた。    「君、大丈夫?」  彼女はサラサラとした金髪を靡かせながら、青緑の瞳をこちらに向ける。身にまとっている洋服には、キラキラ輝く星がいくつも付いており、彼女が偉いと言うのは、何となく想像できた。  第一村人にしては、少々インパクトが強いが、とりあえず、神はまだ俺を死なせるつもりは無いらしい。 

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