サウンドドラマ原作キャラクター音楽プロジェクト「Live us」

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The beginning of our live ~episode of unknown order~

The beginning of our live ~episode of unknown order~ Vol.1

 本当のことを言えば、暁斗は当初、さほどバンドに興味がなかった。  先に音楽を始めたのは幼なじみの裕だ。  どんなときにも前向きで、真っ直ぐで、正義感に溢れていて、明るい。  そんな裕は暁斗にとっての憧れで、だから彼が十二歳の頃に行ったORライブに感銘を受けて歌を始めたときには、それなら自分は伴奏が出来るようになろうとギターを手に取ったのだ。  それはあまりにも下心に満ちたきっかけだ。音楽そのものに憧れたというわけではない。  仲間内でもそんなメンバーは他にいない。だからなんとなく後ろめたくて、誰にも――特に裕には――語るまいと心に誓っていた。  そんな理由で始めた音楽だったが、楽しいと思うようになるまでにさほど時間は必要なかった。 「暁斗! 軽音楽部入ろうぜ!」  裕がそう言ったのは、高校の入学式のことだった。そうなることは予想していたから、あらかじめこの学校の軽音楽部について、暁斗はしっかり調べていた。  ただ―― 「それがさ、軽音楽部、潰れたって」 「えっ!? 嘘だろ、なんで!?」 「なんでもなにも……ORライブは危険だって言われるようになったからでしょ」  ほんの半年くらい前、暁斗たちが学校見学で来た頃にはまだ軽音楽部はあったようだ。  しかしORライブが異常気象を引き起こす危険なものだと広く知られるようになって、忌避される傾向が強くなった。  特に学校では生徒の安全を保証するという名目で、音楽の授業すらなくなっていた。  部活なんて、当然禁止に決まっている。 「ああでも、一人だけやめないって言ってる先輩はいるらしいよ。まあ、もはや部活ではないわけだけど――」 「その人に会いに行こう! よし、今すぐ行こう!」 「は? ちょ……裕!?」  そうしてその部員の元に乗り込んだ裕は、バンドがやりたい! と全力で想いをぶつけ、戸惑わせた。  その部員こそ、志暉だった。  そのまま半ば強引に志暉を説得した裕は、既に卒業していた元メンバーの龍にも合わせてもらって――そして四人でバンドを組むようになった。  今日はその練習日だった。  龍のドラムと志暉のベースが寄り添い合ってリズムを刻み、暁斗のギターを支えてくれる。  重なった音は楽曲を彩る波となって、鮮やかに広がっていく。  その波に軽やかに乗るのが裕だ。  伸びやかな裕の声が伴奏に乗ると、一気に楽曲の世界が広がる。  気持ちがいい。  自然に表情が緩んでいく。  ずっとこの音の渦の中にいたくなる――  ……ただ、その気持ちも最近は完全に消化しきれなくなっていた。 「……なんかズレてんだよなー」  一曲演奏し終えて、裕がぼやくように呟く。  音楽の途切れたスタジオの中で、暁斗も、恐らく龍と志暉も同じ感覚を抱いていた。 「曲は間違いなくいいんだけどね。デモ聞いたときは興奮したし」 「やっぱり!? 暁斗もそう思うよね。俺もなんだけどさー、でもなんか、うーん……」  裕と暁斗だけでなく、龍や志暉も同じように苦い顔をしていた。 「それぞれの技術は間違いないと思ったんだがなぁ……」 「リズムも間違ってるわけじゃないと思う。けど……」 「志暉でも何がダメなのかわかんないの?」 「……ああ、わからない」 「なんだよー、志暉だったらいけるって思ったのにさー。案外そんなもん?」 「志暉もまだまだ未熟ってとこかな? いいんじゃない、可愛い感じで」 「誰が可愛いだ。言っておくけどな、出来てないのはお前たちだって一緒なんだからな?」  揶揄うように裕と暁斗が絡むと、志暉はムッとしたように眉を寄せる。  普段はクールに決めているくせに、ちょっとつつくとすぐに拗ねた顔をする。  志暉のそういうところが年上なのに可愛いと、暁斗はひっそりと思っていた。  と、スタジオの扉が開く。 「おつかれさま。ちょっと休憩したら?」  穏やかに微笑みながらおやつと一緒に入って来たのは志暉の母親だった。  ここは志暉の家の一角にあるプライベートスタジオだった。  堂々と演奏することが難しくなった現在、練習場所を確保するだけでも大変だった。  実際にORライブの最中に豪雨になったとか、ひょうが降ってきたとか、そういう噂が広まるようになってからは世間の目は厳しくなった。  どこまで本当なのかもわからない情報に踊らされるのは気に入らないが、肯定的な情報よりも否定的な情報のほうが得てして信頼を得るものなのだ。  そのせいで、スタジオそのものが徐々に減り始めていた。  だからこそ、志暉の両親もバンドをやっていて、自宅にスタジオを作っているような人でよかったと暁斗は思う。  ただこのスタジオは普通のスタジオとは言い難いが。  なにしろ―― 「そうだ! ねえねえ律さん、アドバイス、なんかアドバイスない!? Revivalのキーボードとして、どうやったら俺たちがもっと上手くなれるか教えてよ~」  裕が甘えた声を出す。 『Revival』――それは、ORライブを発掘した人物が立ち上げたバンドで、最も人気のあるユニットでもあった。  地球上に住むことが出来なくなり、地下へと逃れた二百年前。  それから生活に追われて、誰も楽器を演奏するということはなかった。  しかし二百年以上前の記録を発掘したその人は、たくさんの人が集まって大声を出して楽しむその光景に興奮を覚えたらしい。  その人物こそがRevivalを立ち上げた岳で、志暉の母親の律と父親の和暉もまた、そのメンバーだった。 「うーん、そうだなぁ……」  律はごく自然な動作で暁斗たち四人の輪の中に腰を落ち着ける。  志暉だけが少しだけ嫌そうな顔はしていたが、結局最終的には何も言わずにおやつとして出されたクッキーに手をつけていた。  考え込んでいた律が、たぶんね、と前置きをしながら笑う。 「技量が上がったおかげで、息が合わなくなってきたんじゃないかな」

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