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山田の田んぼに米はねえ ~俺達の米を奪いにUFOが攻めてきたので宇宙戦争始めました~

読了目安時間:5分

第62話 決着

 あぜ道に寝転がらされている中年男性の、腰のポシェットから、手榴弾を取り出した。最初の戦闘で眠らされてしまった村人の一人だ。 「試してる時間はないな」  全てがぶっつけ本番だ。迷っている暇はない。  ちょうどよく辰姫の友人である、拳法部の少女たちが戻ってきた。五人とも無事だ。 「しっかりして! いま助けるから!」  リーダー格のポニーテールの子が、辰姫を背負った。「……下ろして」と拒絶する辰姫のことを、「うるさい!」と一蹴する。  人形繰りの糸がついている指輪が、辰姫の両手から外された。指輪は指の数だけあり、全部で十個。ここから神経に接続して、白雪姫を操っているのだろう。  虎吉は指輪を拾った。 「……なに……してるの……!? 」  気が付いた辰姫は、虎吉の行動を止めようと、ポニーテールの子の背中から腕を伸ばそうとした。だが、周りを囲む他の友人たちに止められる。 「訓練された、花岡の人間だから……白雪姫は……扱えるの……!」  言われずとも予想はしていた。誰でも使いこなせる物ではないだろう。だけど、やるしかない。  十個の指輪を、両手の指にはめこんだ。 「が! あ!? 」  体中の神経に電撃が走るような感覚。内側から全身を寸断されるに等しい激痛を感じ、虎吉は絶叫を上げた。 「ちょ、だ、大丈夫?」  ポニーテールの子が心配そうに声をかけた。  ぐ、と歯を食い縛り、虎吉は痛みに耐える。 「平気……だ!」  自分の体がもうひとつ増えた感覚が生まれてきた。そのもうひとつの自分は、寝転がって空を仰いでいる。  白雪姫の視点だ。  精神を集中させる。いまは、本体である自分が動く必要はない。白雪姫さえ動かせれば、充分だ。 「虎……吉……やめて……!」  辰姫は最後まで止めようとしていたが、ついに友人たちに運ばれて、棚田を離脱してしまった。  そうしている間にも、レーザーは乱射され、どんどん味方の数は減っている。 (肩が、上がる)  白雪姫と神経を同化させた虎吉は、右腕を高く上げてみた。支障はない。本体で感じるような痛みは全くない。もう一生味わうことはないかと思っていた、この懐かしい感覚。 (また投げられる……!)  自分の前に白雪姫を立たせた。腕を差し出させる。その手に、手榴弾を渡してやった。 「頼んだ、白雪!」  物言わぬ人形に対して、ニカッと笑顔を送る。無表情でありながら、どこか虎吉を見つめているかのような様子で、白雪姫は佇んでいる。  やがて、白雪姫はマザーシップの方を見上げて、投球フォームへと移行した。  虎吉はより操作に集中するため、目を閉じた。白雪姫の両目を通じての映像が、鮮明に脳内に入ってくる。まるで自分の魂がそのまま人形である白雪姫に乗り移ったかのようだ。 (どこを狙う……?)  有効な所に当てる必要がある。  ただ一投で、敵を無力化できるポイントに。  ※ ※ ※ 「ほーーーーー! 生意気な! ここに来てまだ抵抗するのですか!」  ブゥン、と空中に映像を映し出し、ダース・米ダーは苛立たしげに叫んだ。  椅子の陰に隠れたまま、卯平は覗き見た。棚田のど真ん中で、白雪姫が投球フォームを構えている。操っているのは、なんと虎吉だ。  虎吉が何をしようとしているのか、直感的に把握した卯平は、瞬時に自分のすべきことを悟った。彼が効果的な攻撃を行えるようにするために、どんなサポートをすべきか。  その時が来るのを待った。ダース・米ダーの性格上、必ず、あの行動を取るはずだ。 「かくなる上は最後の警告ですぞ!」  マイクのスイッチを入れた。マザーシップから拡声して、「無駄な抵抗はやめろ」とでも言うつもりなのだろう。  だが、それよりも先に、卯平は椅子の陰から飛び出した。ダース・米ダーの方へ向かって突進していきながら、大声を張り上げる。 「トラーーー! 主砲だーーー! 主砲の真上に、米ダーはおるぞーーー!」  艦内を動き回っていた卯平は、その構造をすでに知っている。主砲は底面中央にあり、ブリッジもまたマザーシップの中央に位置している。だから、攻撃をするのなら、主砲を狙えばいい。 「ほ!?  ほーーーーー!?  やめてなさーい!」  ダース・米ダーは引き金を引いた。  光線が命中し、卯平は走っていた勢いのまま、前のめりに倒れこんだ。 「まずい! あの男、何をする気ですか!?  ほーーーーー!」  映像に映っている白雪姫は、マザーシップの方を見上げたまま、両腕を振りかぶった。何かを投げる様子だ。 「させますか! 眠らせてやりますぞ!」  空中に浮かぶ立体映像へと指を滑らせ、主砲の狙いを、虎吉へと定めた。  ※ ※ ※  卯平の指示に従い、虎吉は狙いを定めた。  迷いはあった。声が聞こえてきた、ということは、卯平もダース・米ダーと同じ場所にいる。ということは下手すると手榴弾の爆発に巻きこまれる恐れもある。それに、届くかどうかもわからないし、マザーシップ内部に到達するかどうかもわからない。  不安なことだらけだ。  でも、マウンドに立つ時は、いつも同じだった。何が起きるかわからない。思い通りにならないことなんて、いくらでもあった。  田んぼ作りは、そんな野球以上に大変だった。意思の通じない大自然が相手だ。足掻いても足掻いても先の見通しが立たなかった。  だからといって、虎吉は決して諦めなかった。野球も、田んぼも。結局、どちらも望んだような成果を上げることはできず、努力は水泡に帰してしまった。  それでも――かけがえのない仲間はできた。多くの人々に囲まれ、助けられていることを知った。  頑張った甲斐が、あった。 (だから!)  自分を押し止めようとする邪魔な心は、全て捨て去る。  ただ一心に、文字通りの全力投球。 「うおおおおおおお!」  渾身の雄叫びとともに、白雪姫の体を借りた虎吉は、天空高くに向かって、手榴弾をぶん投げた。  ギュンッ! と闇を裂き、一直線に手榴弾は上昇していく。  同じタイミングで、主砲からレーザーが発射された。  虎吉は、全身を光に包まれ――睡魔に襲われ――ここまでタフに戦い続けてきたところ、ついに膝を屈してしまった。  白雪姫が全力で投げた手榴弾は、勢いを落とすことなく、雲よりも高いところに浮かぶマザーシップへと到達し、主砲の中へと入っていった。  そして――  ※ ※ ※  安普請のブリッジの床が突き破られ、ピンの抜けた手榴弾が飛び出してきた。  それは、戦いの女神の御心によるものか。  手榴弾が出てきた所は、ダース・米ダーの、ちょうど真下だった。 「ほぐばっ!」  あごに手榴弾がぶつかった。仮面が割れ、ダース・米ダーの素顔が露わになる。  そんな彼の目の前、空中に、手榴弾がクルクルと回転しながら浮かんでいる。 「ほ――」  ダース・米ダーは恐怖で目を見開いた。 「ほおおおおおおおおおおおおおおお!」  爆発が起き、ダース・米ダーの頭部は、粉々に吹き飛ばされた。

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