RELACION 〜有力貴族の居候となった少年とその数奇な人生を〜

読了目安時間:5分

エピソード:44 / 108

あまり彼らの設定や立ち位置について細かく描写する予定もないので、軽くここに載せさせていただきます。 スリージ聖王国・ティファリア駐在(駐留とも)騎士小隊  シーボルト=リテッド 《隊長  スンシル=フリーパージ《副隊長  サクサ=アフェランドラ  セクエイン=フルボロス  ソレイユ=レティセンシア ネサラで奮戦した無名の騎士達は、ネサラ駐在騎士小隊の所属だったというわけですね。 グリザリオ=ロティスはというと、後々登場する時にしっかり描写されるかと思われますが、彼は聖都駐在のエリートです。

雨降り後の晴れ空で

「———少年、おい少年。目は見えているか、耳は」 「……」 「セクエイン。彼を瓦礫から救出するぞ。酷い火傷だが、まだ生きている」 「あぁ、そーゆーこったら任せとけ。どれからどける? あのでかいの、支えになってそうだよなぁ」  同僚サクサの言葉に背中で返事をして、セクエイン=フルボロスは彼女のいる場所に駆け寄った。  彼女が片膝をついていたのは、間違い探しかといったレベルで周りと酷似(こくじ)した風景。瓦礫の山。柱の破片や崩れた煉瓦、小突けば砂と共に軽い雪崩が起きそうな石溜(いしだま)り。しかし、その一番下、地面と面したところには、仰向(あおむ)けに挟まれた男子の姿があった。  その黒髪の少年を見てセクエインが感じたのは、運が良い、というそれだけの一言。確認出来る上半身だけでも、火傷や裂傷(れっしょう)、左腕も変な方向に折れ曲がっている。相当な気力でも無ければ、痛みで既に死んでいる。それも下半身がどうなっているか次第ではあるが、そこは積もった瓦礫をどかしてみなければ分からない。  そんな絶望的な生還者の(うつ)ろに開いた瞳と目を合わせて、セクエインは、よし、と白い歯を見せて笑う。 「よく頑張ったな!! もー大丈夫だ、このセクエイン様が助けにきたからなぁっ!!」  そして、空に届くほどの大声を張り上げた。 「発見したの、私なんですけどぉ」  急に張り上げられた声に耳を塞ぎつつ、サクサは平常運転とばかりにため息をする。 「うん。でもそうだ。少年、もう少しだけ心を強く(たも)っていなさい」 「おいサクサ。この小さいやつからでいいな?」 「———うん、私も手伝おう。その次はこの平たいやつだ。待て、片側だけで持ち上げるな」  テキパキと。完璧ではないが、均衡(きんこう)を崩して一気に少年に重みがのし掛からないよう注意しながら、セクエインとサクサは一つ一つ瓦礫をどかしていく。 「朦朧(もうろう)としてっが、意識はある。根性あんじゃんよ」 「呼吸も安定している。こういう頑張っている子が他にもいるかもしれないんだ、早く助けてあげないとね」  大概が生き埋めか焼け死んでしまっている中、この少年のように限界寸前で踏ん張っている者。一分一秒が生死を分ける状況下において、サクサ達の行動は的確だった。十数個の積み重なった岩盤のような瓦礫や屋根の破片を騎士たるべく鍛えた筋力で動かして、ものの二分ほどで一人目の救出を終わらせる。  そのまま、助け出した少年を一先ず平たい場所に寝かせた後、セクエインは同僚に、どうする、とアイコンタクトを送った。 「……そうね。シーボルト隊長も直に調査報告書を纏めるだろうから、一旦その子を抱えて北の外門に戻ろっか」 「了解(りょー)。でもこれ背負って大丈夫か? 寝かしたままの方がいいんじゃないかねぇ」 「じゃああそこの平たいやつに乗せてそれごと運べばいいでしょ。頼むわよ、男の子」 「はぁー? これが新手の男性差別……」  △▼△▼△▼△  気持ちが悪いくらいに、青く()んだ空。ぷかぷかと浮かぶ白雲。照りつける日光。どれも、このネサラにそぐわない天気だった。せめてまた雨でも降れば鎮火するのだが、と、野盗の腕と腕を縛りながら、シーボルト=リテッドは嘆息する。  これで八人目。騎士の監視が消えた廃都を跋扈(ばっこ)する盗賊の類は後を絶たない。近くに山賊やそれに相当する(やから)の寝ぐらがあるという情報は無かったが、耳が早い彼らはこのネサラにも目を付けてすぐさま集まってきているのだろう。  最初は、何か事情を知っているのではないかとも疑ったが、聞いても聞いても、知らねぇクソが、の一点張り。しかし、仮にこんなのが徒党(ととう)を組んでもネサラの駐在騎士が敗北するとは思えないので、当然も当然だが。  今しがた縛り付けて寝転がした野盗の腰にどかりと座って、彼は部下が戻ってくるまでの間、思考に(ふけ)る。 「いや(ふけ)んじゃねぇオレは椅子じゃねぇぞクソボケ騎士がよぉ!!」  そこそこ年齢のいった野盗が唾液を飛ばす勢いで(まく)し立てるのも無視していると、 「あ、兄者(あにじゃ)!! 助けに来た、オイラに任せってくれっぺぇ!!」 「弟ぉ!!」 「兄者(あにじゃ)ぁ!!」  何やら感動の場面が始まってしまったので、再び剣を鞘から抜き、かったるそうにシーボルトが腰を上げた。  顔が四角くて、瞳の輝きが可愛らしい野盗の男だ。どこか憎めないというか、兄であるらしい足元の縛られ人形とはあまり似ておらず、何故盗賊なんかしているのか質問してみたくなる面をしている。それはそれとして、武器は分厚い斧をきちんと握っているため、無力化を図らねばならない。 「ひざかっくん」 「あひゃん」  だが、隊長がわざわざ動くまでもなかったようで、調査から戻ってきた部下の一人———スンシルが野盗弟の両膝を後ろから無理やり曲げさせてしまった。  続けざまに今度は側頭部を(かかと)で蹴り殴られ、一瞬で意識を消失させられる。傍から見ていると可哀想に思えてくるような光景に、よし、と胸元でガッツポーズを作るのは、飛び蹴りを成功させて喜ぶソレイユ=レティセンシアだ。 「シーボルト隊長、今の見ました? 私のキックもかなりのものになったかと!」 「おう、よくやったよ。ついでにそいつ縛っとけ」 「はい。任されました!」  胸に拳を軽く当ててから、くるくるくると隊内最年少のソレイユが野盗弟の腕やら足やらを縄で巻き始める。 「街の方はどうだっただろうか、スンシル」 「随分な有様なのは、中から見ても変わりませんな。大方は予想通りです。大多数は火災によって死んでおりますね。ただ」 「……ただ?」  隊長であるシーボルトが視線だけ向けると、スンシルは腕を組んで、周囲を見回した。しかし探していたモノは無かったようで、口をへの字に曲げる。 「明らかに一般人ではない死体も幾つか。主犯はそいつらでしょう。後は生存者を出来る限り捜索して、事情聴取に努める他ない」  そう、スンシルは己の見てきたものを簡潔な一言で纏めた。拘束作業を終えたソレイユも、膝に付着した砂や炭を払いながら首肯する。  一般人ではない死体。具体的には、布袋に収めた刃物を携帯していたものや、明らかに斬り合いを行なったと見られる切り傷多数のものなど。中には他と状態の異なる焼死体も含まれていたが、これ以上は後続が鑑定することである。  壁の破片らしきものに人を乗せて運んでくるもう二人の姿を遠目に確認して、シーボルトは納得した様子で一度大きく(うなず)いた。そして、抜き身の剣身を腰の鞘に収める。 「撤収しよう。進路は北東、ティファリアの街だ」

読んでいただき、ありがとうございます。 質問があれば是非ともお書きください。今後の展開のネタバレにならない程度に回答させていただきます。 長文でも一言でも何でも感想お待ちしています。筆者にエネルギーをください!!

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


  • サキュバステラ

    睦月遊戯

    ♡2,000pt 〇100pt 2021年9月28日 19時25分

    更新お疲れ様です! 文章が読みやすく、描写も分かりやすくスラスラとここまで読めました。 当然ですが今は敵組織の目的も定かではなく、それにどう主人公たちが翻弄されて、どう彼らの人生に影響を与えていくのか…… 引き続き楽しませていただきますので、これからも無理せずに頑張ってください!

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    睦月遊戯

    2021年9月28日 19時25分

    サキュバステラ
  • 女子高生

    紺色わさび

    2021年9月28日 21時11分

    睦月さん……!! そんなそんな、ご丁寧にありがとうございます!! 大筋は決まっていますが、彼らは彼らの思うままに生きているので、思春期ならではの紆余曲折等あると思います。 登笈たちの若く鮮烈な日々を見守っていただければ、作者である私にとってこれほど嬉しいことはありません。

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    紺色わさび

    2021年9月28日 21時11分

    女子高生

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 解放詠唱アマテラス

    ホラー×バトルな霊能ファンタジー!

    30,300

    120


    2022年5月26日更新

    妖怪や幽霊の目撃談が多く、住民のほぼ全員がその存在を信じている架空の地域、鷹宮県。そんな場所を舞台に、霊的な存在を支配する王、その力の一部である霊王眼を宿す少年、白神リクは戦いの日々を送っていた。邪悪な妖怪を殺し、さ迷う霊をあるべき場所に導くために。 そんな日々の中でも平穏な時間にはごく普通の日常がある。しかし、百鬼夜行を引き起こそうとする邪悪な陰陽師の一族、赫喰家との戦いに巻き込まれることになったことでリクの日常は一変。 彼らの野望が達成されれば、妖怪や悪霊の大群が日本中に溢れかえり、下手をすれば世界の危機となる。 それを止めようとするものと、協力する者達の争いより鷹宮県は混沌を極めて行く。妖怪、霊能者、神々、果ては西洋の魔術師までをも巻き込む、壮大な霊能戦争の舞台として――

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:42分

    この作品を読む

  • メンタル病んでる事は判るが、歴史までは判らねぇよ!!

    まさかのタイムスリップで江戸の幕末へ。

    59,500

    385


    2021年8月8日更新

    ※歴史の人物名や史実も出ますが、全く異なります ※素敵なイラストは毒島ヤコ様に作成して頂いたものです ※著作権は毒島ヤコ様にあり、無断使用・無断転載はお控えください あの苦しかった頃、私は何も望んでなかった。 何も考えられなかった。 それでも私は助けて貰えた。 あんな環境から、どうにか保護して貰えた。 でも私は一切、忘れてねぇ… だから武術の全て習得を頑張った。 今なら絶対あのクズ共程度に負けねぇ… もう我流でも充分だ!! 忘れてねぇからこそ私は、もう決めてる。 誰も愛さねぇ、選ばねぇ、信じねぇ。 誰も望んでねぇ、求めてねぇ。 勿論、助けてくれた事や人達へ感謝してる。 通院も含めて、まぁ… 一応、メンタルも病んでる自覚はしてっけど? もう充分、一人で生きてけんだ!! それなのに今度は… おい、おい、待てよ!? タイムスリップだぁ!? あり得ねぇだろ!? もう言われる事すら何も判らねぇ… 命の価値だぁ? 生きる意味だぁ? 皆の中に居る幸せだぁ? 今更、全て判らねぇよ!! だから… 私に触れるな。 私に近付くな。 私に踏む込むな。 私は思い出したくもねぇ!! 私が誰かを、かぁ? 信じねぇ。 愛さねぇ。 命すら関係ねぇ。 しかも歴史までなら尚更、判る訳ねぇだろうがぁ!! 最初は唯一の優しい祖母が、私にくれた『宝物』からだった。 そこで、なぜか出会う。 それは『唯一の宝物』でもなかった。 本当に探すべきは『幸福』をだった。 でも、そんなん知らねぇ!! 考えた事すらねぇ!! 私の命に価値すらねぇ!! それなのに何でだぁ!? でも言われる様々な言葉。 もう全てが衝撃的だった。 現代から過去へとタイムスリップした深い闇を抱える少女。 その傷も癒す為、また誤ちへとしない為。 歴史上の有名人達すら動き出す。 「もう誰からも… 傷付けない!! 痛くしない!! そして… 守る事を!! 助ける事を!! 必ず救い出すのみ!!」 だったら私は… 「もう私には歴史すら関係ねぇ!!」 命の価値を、本当の意味を。 信じる事を、愛する事を、幸福を。 そして新たな歴史へ。

    • 暴力描写あり

    読了目安時間:19時間31分

    この作品を読む