山の子

読了目安時間:4分

エピソード:2 / 3

「...」  揺れるバス、僕たちは修学旅行の目的地に向かっていた。僕と茅は二人席に座り、先程まで色々話して盛り上がっていたのだが...どうも眠かったのかこいつは寝てしまった。折角窓の方に座らせてやったのによ。バスがトンネルやら山間部やら走るからこいつも呆れて寝ちまったじゃねえか。 「はぁ...」  少しため息を吐いた僕は、携帯を覗く。そこには一件メッセージが来ていた。   「誰から?」  僕がメールを開こうとすると、コイツは狙ってたかのように起きて携帯を覗こうとする。 「唯の彼女だよ」 「二次元のとか言ったら往復ビンタね」 「xとyの世界に住んでる彼女」 「つまり?」 「唯の数式でございます。」 「逃げるわね、ネズミになれば?」 「ネズミに失礼だろ?あと、おはよ。ぐっすり眠れたか?」 「後頭部をシートの頭置き場で毎秒0.50回ずつ叩かれながら寝てたわ」 「そりゃ安眠なこって。もうすぐ着くらしいぜ」 「もう?早いわね、感覚的にはまだ10分よ」 「老人ボケだろ」 「誰がプロジェリアじゃ」  何もそこまでは言っていないぞ僕。 「てかお前さん、制服のまま海入るのか?流石にそれは帰る時に潮臭いと言いますか何と言いますか。」 「それを予期した私はなんとびっくり、制服の替えを持ってきているのだ!」 「流石、趣味になるとちげえな...あ、僕に海水とかかけるなよ?僕制服の替えとか持ってないから」 「フラグね、わかったわ」 「バスの窓から落されたいご様子で」  そんなこんな話していると、現地解散場所についた。みんなバスから走って出て、商店街の方へ行く。その中僕たちは商店街とは反対方向のバス停に向かって歩き、一本のバスを待った。  バスはすぐに着き、僕らを乗せて海へと連れて行く。相変わらず僕は彼女を窓側の席に座らせて楽しみにさせる。彼女が窓から海がいつ来るかいつ来るかと待っている中、僕は先ほどのメールに返信した。『大丈夫。期待しといて』と。  暫くすると、窓の方から青い光が僕らの頬を照らした。海だ。 「景!海!海!」 「やめれ漢字一文字ばっかで頭おかしくなる。そんでご期待には添えそうで?」 「勿論♪この時点で予想以上!早く着かないかなぁ」  急にこいつテンション上がったな。そんな海を見てはしゃぐ彼女に、僕は何とも言えない笑みが浮かんでしまう。 「どうしたの?その顔。キモいよ?」 「今から山へ路線変更してもええんやで?え?」 「海ついたら何するー?」 「話変えたなおい。まあ好きにして良いぜ。水着持ってんなら泳いでも良いし、ないなら靴脱いで膝下くらいまで入っても良いしよ」 「流石にこの季節に泳いだら死んじゃうよーだから今回は膝下までかなぁ」 「ウキウキなこってえがたえがた。」  5分もしない内にバスは例の海辺へ着いた。バス停から降りると、アイツは速攻走り出して海の方へと向かっていった。どれだけ楽しみだったんだか 「景!早くこっち来なよ!」  僕がビーチに着いた時、彼女はすでに靴も靴下も脱いで海に入っていた。 「へいへい、今行きますよ!」  僕もささっと裸足になって、制服のズボンの丈を上げ、海の中に入る。砂の感覚が直に伝わる。いつも思うがこの感覚はあまり好きじゃない。昔を思い出すのだ。 「ほれっ!」  僕が海に少し入ると、こっちは着替えねえよと言ったのに海水ぶっかけてきた。コイツ正気か。 「あ、そういえば景制服の替え無かったんだったね」 「おうおう喧嘩か。まあええよ、濡れたならあとは為すがままよ。ほれ楽しむぞっと!」  そう言いながら僕も彼女に海水をかける。僕らはキャッキャ言いながら楽しんだ。  時間も過ぎて、そろそろ集合場所近くのバス停に向かうバスに乗らないといけない時刻となる。僕らは海から出て、着替え場に行き、服を着替え終えた後、それぞれ一本ジュースを買った。僕は適当にスポドリ買ったのだが、あいつは...なんだこれ『びっくりサワー いちごレモン味』って言う缶ジュースを買ってた。ネーミングセンスよ。 「そういえば景、何で替えの服持ってたのに持ってないって嘘ついてたの?」 「これは、修学旅行の2泊3日用につくってた明日用の服だよ。このびしょ濡れな服はこっそりホテルのコインランドリーで洗っとくわ」 「うわーずる賢いね」 「そりゃあ、こんな所までお前さんを連れてきた僕だぜ?」 「それもそっか!あはは!」  僕らは近くにあった堤防の上を歩いていた。茅があの堤防歩いてみたいと言い出したのだ。 「んで、どこまで行くんだ?この堤防結構先まであるぜ?」 「行ける所まで行くのが私の主義よー」 「まあ面白いな、集合時刻遅れたら僕が責任取ってやるよ」 「紳士〜!あ、先端見えた!」  堤防はウネウネと曲がっていて、海辺から此方は見えにくい構造となっていた。  茅は先端が見えたと同時に走りだして、堤防の先端から沖を眺めていた。 「先端とうちゃーく!疲れたねー」 「ほんまにな。ふぅ...」  僕は堤防に座り込む。すると彼女も座り込み、潮風を感じていた。 「ねえ、何で私をここまで連れてきてくれたの?」  不意に彼女が話し出す。まだ沈みかけても無い昼間の太陽に顔を照らされて。 「...お前さんはやっぱ覚えてないか。」 「?」 「お前さん、自分のアルバムとか見たことないか?」 「そりゃあ、あるけど」 「その中に海の写真あったろ。あれ、ここだ。」 「...え?」

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