超一流清掃用務員異世界転生譚。元暗殺者兼公爵令嬢側近従者転生後、前世記憶復活、清掃魂覚醒。周辺汚染物徹底清掃開始。異世界清掃黙示録。 ~咆哮、清掃魂~

読了目安時間:7分

最恐最悪の清掃対象! クレイジーサイコレズビアン! タワキス・ユリアンヌ!!

清掃対象:タワキス・ユリアンヌ

「さ~さ~! クーリアちゃ~ん! 久しぶりにウチとええことしようやないか~!」  周囲を建物の壁に囲まれた『ホトトギス』アジトの中庭に出てきた、私とタワキスさん。  タワキスさんは私と向かい合いながら、恍惚とした表情で体をくねらせている。  ――気持ち悪い。  ただその右手に握られているのは、十年以上前からのタワキスさんの愛銃――魔法弾実弾兼用拳銃"ヤタガラス"。  私が使っていた"ファルコン"や"ホーク"より大型の拳銃で、魔法弾と実弾の両方を撃つことができる、ハイブリッドタイプだ。 「安心せいや、クーリアちゃん。ウチは今回、"ヤタガラス"で実弾は使わへん。使うのは魔法弾のみ。もっと言えば、ウチのクーリアちゃんへの『愛』が弾丸や~!」 「そ、そうですか……。お気遣い、一応感謝します……」  一応手合わせという名目は守ってくれるらしく、タワキスさんはその手の内を明かしてくれた。  確かに魔法弾は実弾よりも殺傷力は低く、ある程度は威力も調整もできる。  ――だが、『愛が弾丸』とはどういう意味だろうか?  タワキスさんもあれから十年経っている。  この魔法の世界における、新しい技術でもマスターしたのだろうか―― 「あ~~! もう我慢できひん! 早速ウチの愛を……受け取ってくれやぁあ! クーリアちゃんんん!!」  ポシュゥウン! ポシュゥウン! 「ッ!? な、何ですか!? この弾丸は!?」  私が考えている矢先に、タワキスさんは"ヤタガラス"から魔法弾を発射してきた。  突然のことだったが、私とて元々は"一流"の<アサシン>。  回避することはできた――  ――ただ、タワキスさんが"ヤタガラス"から発射した魔法弾は、彼女から溢れる"汚れ"の色と同じ、ピンク色だった。  ピンク色の煙のような"汚れ"を弾丸にして、私へと連射してくる。  こんな魔法を私は知らない。  銃に関することなら、<アサシン>としての経験である程度は知っているが、こんなものは知らない。  ただ、これは予想にはなるのだが――  ――このピンク色の魔法弾。  タワキスさんの性根そのものではないだろうか? 「と、とにかく応戦を! 浄化手袋(ラーグローブ)! 地気霧吹(アースプレー)! そして……箒天戟(ホウテンゲキ)!!」  私は大急ぎで<収納下衣(タンスカート)>から極・清掃三種の神器(クリーンアップアルティメットリオ)を取り出し、それぞれを装備しようとする―― 「見えた!! クーリアちゃんのパンツは……黒や! カ~~~! たまらへんわぁああ!!」 「わ、私の下着を見ないでください!」  ――ただ、<収納下衣(タンスカート)>のためにロングスカートをめくりあげた時、私の下着をタワキスさんに見られてしまった。  そして下着の色を確認すると、さらに興奮するタワキスさん。  その場で天を仰ぎ、ガッツポーズをとっている。  ――その姿を見ていると、寒気が止まらない。  もしかすると、以前のマリアックも今の私と同じ気持ちだったのかもしれない。  彼女には本当に申し訳ないことをしたと、心の中で反省する。 「ハァハァ! あかん! 辛抱ならん! やっぱこのままクーリアちゃんを押し倒して……手籠めにしたるわぁああ!!」 「ひ、ひいぃ!? こ、来ないでください!」  タワキスさんはその目を見開いて血走らせ、さらに鼻息を荒くしながら襲い掛かってくる。  最初に言っていた『手合わせ』という言葉も、もう頭の中から吹き飛んでいるようだ。  私はとにかく逃げる。逃げ回る。  <アサシン>の身体能力強化、<清掃能力強化(クイックルハイパワー)>と<除菌疾走(オーバードライブ)>。  それら全てを全開にして、周囲の壁を飛び跳ねながら、ひたすら逃げ回る。 「逃げんといてくれやぁあ! ウチとええことしよやないかぁああ!!」 「嫌です! こ、怖いです!」  だが、タワキスさんも負けじと身体能力を上げて、私と同じように壁を飛び跳ねながら追ってくる。  その強化率は私以上。何重にも能力強化を重ねている私をも上回っている。  ポシュゥウン! ポシュゥウン!  さらに私を追いながら、ピンク色の(汚い)弾丸を連射してくる。  ダメだ。怖すぎる。私はすでに半泣きだ。  本当に助けて、ココラルお嬢様。 「で、ですが! そのピンク色の何かも"汚れ"の一種! ならば私の<清掃用務員>としての力で、お掃除できます!」  なんとか気力を振り絞り、私は清掃魂(セイソウル)を滾らせる。  タワキスさんを相手にすることへの動揺は抑えきれないが、それでも私には<清掃用務員>としての務めがある。  過去最恐にして最悪の相手だが、お掃除しなければ生き残れない。 「なんや、なんや~!? クーリアちゃんの新しい武器か~!? ええで、ええで! その武器で……ウチの愛を受け止めてくれやぁああ!!」  私が箒天戟(ホウテンゲキ)を構えて向き直ったのを見て、タワキスさんも"ヤタガラス"からピンク色の(汚い)弾丸を発射してくる。  あの弾丸も"汚れ"の一種。  <用務眼(ヨウムアイ)>での分析の結果、生物が腐った時に発生するアンモニアの成分に近い。  まずはあのピンク色の(汚い)弾丸を、浄化手袋(ラーグローブ)で捌いて―― 「ダメ! できません!」  ――だが、捌けなかった。  私は再度回避に徹し、タワキスさんから逃げ回る。  あのピンク色の(汚い)弾丸は、いくら何でも汚過ぎる。  あれはもう、お掃除でどうにかなるレベルではない。  私のあらゆる本能がそう告げている。  あのピンク色の(汚い)弾丸は――前世で言う放射能汚染の類だ。 「なんや~!? ウチの愛を受け止めてくれへんのか~!?」 「この子達は私の愛しい我が子同然です! あなたのような、高濃度の汚染物相手に使いたくありません!」 「どういうこっちゃ~~!?」  浄化手袋(ラーグローブ)だけではない。  地気霧吹(アースプレー)箒天戟(ホウテンゲキ)も、タワキスさん相手に使えば、清掃道具として再起不能になるほど穢れてしまう。  この子達は私の相棒であると同時に、私の子供だ。  我が子を進んで穢そうとする親などいない。  相手がお掃除の範疇を超える汚染物である以上、私がこの子達を守らないといけない。 「そないに逃げるんやったら……クーリアちゃんの、お胸にドーン!!」 「きゃふぅ!?」  だがそんな私の思いは関係ないとばかりに、タワキスさんは身体能力をさらに上げて、顔面から私の胸へと突っ込んでくる。  その突然かつ異常な行動により、私の体は思いっきり壁まで吹き飛ばされる。 「あぁ……最高……! やっぱクーリアちゃんの胸は程よい大きさと弾力で、うっとりせずにはいられへん……!」 「た……助けて……ください……!」 「そないに怯えた表情で、ウチを見んといてくれや……! 折角自重しようと思うとったのに、そそられるやろ……!」  もう私に戦う(お掃除する)気力はない。  タワキスさんへの恐怖によって、完全に腰が抜けてしまった。  そんな私に対し、タワキスさんはピンク色の"汚れ"を身に纏いながら、にじり寄ってくる――  もうダメだ。助からない。  私は穢される。  私は犯される。  死ぬよりも――怖い。 「もう我慢できひん! まずはそのメイド服をはぎ取って……全裸にむいたるわぁあ!!」 「い、いやぁあああ!?」  今まで出したこともない悲鳴を上げる私の気持ちなど他所に、タワキスさん(汚染物)はメイド服に手を掛けようとしてきた――  ブゥウウン! 「な、なんや!? この武器は!? なんでウチがクーリアちゃんを襲うのを止めるんや!?」 「箒天戟(ホウテンゲキ)……!?」  ――そんな時、私とタワキスさん(汚染物)の間に、箒天戟(ホウテンゲキ)が光りながら浮かんで割り込んできた。  それはまるで私の身を守るように、神々しい清掃魂(セイソウル)の輝きを放ち、タワキスさん(汚染物)の手を遮っている。 「ま、まさか……私を守ろうと……?」  箒天戟(ホウテンゲキ)が言葉を発することはないが、それでも私にはなんとなくわかる。  この子はきっと、私にこう言いたいんだ―― 『俺達を信じろ。あんたの子供を信じろ』  ――と。 「……そうでした。私は<清掃用務員>。たとえ相手がどれだけ高濃度な汚染物でも、必ずお掃除してみせる……!」  タワキスさん(汚染物)というあまりの強敵を前にして、私は気弱になっていたようだ。  私は眼前に浮かぶ箒天戟(ホウテンゲキ)を手に取り、両手で強く握りしめる。  そうだ。私にはこんなにも頼れる清掃道具(我が子)がいる。  怖気づく必要はない。  スミスピア様によって作られし、私の清掃魂(セイソウル)を宿したこの子達がいれば―― 「私は……絶対にお掃除でき(勝て)ます……!」 「な、なんや……!? クーリアちゃんの雰囲気が変わった……!?」  箒天戟(ホウテンゲキ)を握りしめて立ち上がる私を見て、タワキスさんは後ずさりしている。  流れた涙をハンカチで拭い、私は再度清掃魂(セイソウル)を滾らせる。  今度こそ屈しはしない。  その決心と共に、私は箒天戟(ホウテンゲキ)を最後の形態へと変化させる―― 「箒天戟(ホウテンゲキ)――モデル『青龍(セイソード)』!!」

相手がどれだけ腐った汚染物であろうと―― <清掃用務員>は屈しない!

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