両手一杯のカルミアを君に

蠢くもの

「今日で何日目だ?」  檻の前で男は、テーブル越しに女性に問いかける。 「十五日目よ、その質問は今日で八回目だけれど?」 「……そうだったかな?」  特に感情もなく、その返事を煙草の煙と共に燻らせた。そして、檻の中に視線を戻すと、そこでこちらを睨む少女と目を合わせる。 「じゃあ今日がお前の最期の夜になるらしい。今までよく頑張ったな」 「…………」  血の滲む包帯まみれの少女は、殺意しか宿っていない目を男に結ぶ。残された左目を精一杯に見開き、奥歯が砕けそうな程に噛み締め、声にならない声を上げていた。喉が潰されているのか、その唸る様な声はまるで獣だ。 「ねぇ、その最期の日を彩る〝お客様〟はどんな人?」  女性はネイルを眺めながら問う。男はそれを眺めながら、やがて身体を乗り出して女性の頬に触れた。 「さぁ、何処かの金持ちらしいが……」 「もう、さっき〝シた〟から駄目よ。金持ち……じゃあ同業者じゃないの」 「馬鹿言うな、あんな連中と一緒にしないでくれ」 「ふふ、面白い事を言うのね」 「……他の連中は商売に〝美徳〟が無い」  男は頬から手を離すと、テーブルの上の鍵を携え檻の前に立つ。そして、鈍い音と共に鍵を開錠した。 「ゔぅううゔゔぅ!」  少女はボロボロの身体を乗り出すと、残された歯で男の腕に齧り付いた。歯が突き立てられた腕から血が滴るが、男は気にせず、少女の頭を撫でると煙草を床に捨てた。 「ちょっと、灰皿に捨ててよ」 「細かいことは無しだ〝ナタリア〟さて、それじゃあーーーーーーーー」 「仕事の時間だ」

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