両手一杯のカルミアを君に

鎮火

「……身体は、大丈夫かい?」 「……ええ、お腹の子も無事よ」 「そうか」  ヴィオ達は、疲弊しきった様子で荒れ果てた我が家に戻ってきた。  騒ぎを聞きつけたガイザックにより、ミゲル絡みの一件は厳正に処理される事となった。あの暴君を取り巻く組織も含め、その全てが粛清の対象と化すだろう。  勿論、その中にガイザック自身も含まれている。  彼は自分の復讐が終わったと知ると、ヴィオに深々と頭を下げて自らの罪を受け入れると言った。暴君に抗う為に傷付けてきた全ての者に対し、償う道を選んだのだ。  それに関してはヴィオも同じ気持ちだった。  ユノに過去の事を知られてしまった今、弁明するつもりも、これ以上隠し事をするつもりも無い。  こんな荒れ果てた我が家と、傷付いた家族を前に、ヴィオは全てを曝け出し、受け入れる覚悟を決めていた。だが、ガイザックに「貴方には、まだ成すべき事が有る筈です」と、共に過ちを受け入れる事を止められた。  自分がこれから成すべき事。彼を見送ったヴィオは、残された自分に課せられた使命を反芻し、天井を仰いで目を閉じた。  ミゲルの手下に襲われたニーナだが、スヴェンによってエルフの治療に精通した医者に見せたと聞いた。そしてアルメダも後からそこへ向かわせた。  しかし、カルミアに関しては別だった。  ミゲルの屋敷で明らかとなったカルミアの身体に関わる事実。それは恐らく、元々備わっていたものではないだろう。  奴隷として生きていた際、少なからず出血はあった筈だ。しかし、今回の様な件が無かったという事実から、あの現象は〝覚醒〟と呼ぶに相応しいと言える。  その証拠に、ナイフを握った手の傷も完全に塞がっている。異常なまでの身体の変化に、カルミア自身も戸惑っている様子だった。  今はソファーで眠っている。残されたユノとヴィオは、静けさに包まれた部屋で、互いに言葉を選んでいた。かつての生活では有り得なかった、小さな疑念の片々がそこには確かに存在していた。  誰もが羨んだであろう家族の姿は、もう無くなっているのかも知れない。

コメント

コメント投稿

スタンプ投稿


このエピソードには、
まだコメントがありません。

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 異能力ものの冒険バトルファンタジーです。

    ♡144,320

    〇3,255

    異世界ファンタジー・連載中・171話 みぃな

    2020年7月13日更新

    "スピリスト" ある者は火を。ある者は水を。 精霊石という不思議な鉱石を手に入れ、魔力を操る異能力者たちの総称である。 常人とはかけ離れた戦闘能力と身体能力を持つ彼らの力。その代償はその能力をもって人を守り、また人が忌み嫌う精霊たちと戦うことだ。 しかしその強大な魔力は精霊たちが持つ霊力とよく似ていると言われており、彼らもまた人に忌避される存在だった。 新米スピリストである十三歳の少年ケイは、幼なじみのナオとハルトの二人と一緒に各地を旅していた。 政府から命令を受けては各地に赴き、さまざまな人や精霊たちと出会い時に戦う日々。 人でありながら精霊に似た力を『自ら』望んだ彼らには、それぞれに叶えたい『願い』があって――。 精霊と人。 同じようで違うふたつの存在が、やがて大きな戦いへと世界を導いていく。 知らず知らずのうちに戦いへと巻き込まれていく少年少女たちが、過酷な運命に立ち向かっていく冒険ファンタジーです。 ☆キャラクター紹介、各章表紙絵解説、季節イラストなどは創作サイト「七色蝶」にてご覧いただけます。 「SPIRIST」の世界をより深くお楽しみいただけますので、興味があればこちらへどうぞ↓ https://rainbowpapillon.jimdofree.com ☆基本的に一章でひとつのエピソードが完結しますが、全体通してひとつのお話を構成しています。 ☆時々イラストが出てきますが、特記が無ければ自作です。兼業絵描き。絵はmeenaという名前で活動しています。

  • 第一章完結済み

    ♡2,200

    〇0

    恋愛/ラブコメ・連載中・1話 安東門々

    2020年7月13日更新

    ある日突然、後輩の女性から一通の手紙を受け取った。 その内容は、二十四時間以内に俺を殺すという内容だった! なぜそんな事態になったのか、疑問は残るが無残に散るわけにはいかない、こちらも全力で抵抗しようとする。 そして、彼女を退けても次々に襲い掛かる変態たち⁉ どうやって潜り抜ければ良いのか見当がつかない‼ とりあえず、今を勝ち抜くことだけを考えよう……。 ※ 他掲載サイト エブリスタ 『ハーレム/逆ハーレム』受賞作 ※ 表紙絵 白雪さん

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

  • 少しでも楽しんで貰えたら幸いです。

    ♡700

    〇0

    異世界ファンタジー・連載中・5話 マーテル

    2020年7月14日更新

    幼い内に両親を亡くした少年カインは物心着いた頃から傍にいた謎の少女に励まされ自身を鍛え続ける。 そして少年は早く大人になる事を強いられ、現実主義と面倒事を避けたがる性格へと成長していく。 しかし、そんな少年の想いとは裏腹に幼馴染の少女に振り回され、村に訪れた勇者パーティのプライドをへし折り、果てには少年の規格外さに目を付けた魔王が勧誘に来る始末。 しかし、人類最強や英雄に興味が全くないカインはその勧誘を悉くスルー。 トドメに聖剣や聖杖、魔剣や魔導書といった神器まで持ち主よりカインにすり寄ってくる始末。 そんな者(物)達にカインは告げる。 「英雄とか最強に興味がないので、帰って下さい」 これは規格外の力を得た少年が災難や面倒事に巻き込まれながらも少しずつ人の温かさを取り戻していく物語である。

  • 転生チート!毎日投稿頑張ってます!

    ♡4,800

    〇0

    異世界ファンタジー・連載中・45話 羅蘭

    2020年7月14日更新

    アルファポリスで投稿している作品のリメイクです! 日本生まれの日本育ちの俺、橋本〈はしもと〉 千里〈せんり〉は未知の病気にかかり、亡くなってしまう。 俺は死ぬと転生するときに望みはあるかと聞かれた。なのでイケメン、チート性能が良いなどと言ってみた。 次に目が覚めたらそこは病院ではなく全く見知らぬ土地。転生したのだと悟った俺は自分のステータスを見てみた。それには神様が間違えたのかと思うほどの馬鹿げたステータスが...。 この物語は、俺のチート性能で転生できた世界での話だ。