「ねえ、ちょっといいかしら。 武器を扱っているお店を、あなたはご存じ?」
「は、はい! その先の角を左に曲がると、矛盾屋っていうプレイヤーが店を開いていますよ」
「そう、助かったわ。 ありがとう」
中身が男だと気付かれないよう、気をつけてしゃべっているつもりの幸男。
しかし反対にその言葉遣いは、物凄くあやしい。
だが話しかけられたプレイヤーの方は、妻の姿に見惚れてそのことに気付いてない様子である。
教えてもらった通りに進むと、5分ほどで矛盾屋の看板が掲げられた店に無事辿り着いた。
「ごめんください」
恐る恐る中に入ると、幸男の他に5~6人のプレイヤーが商品を物色している。
店内には剣と杖、槍に弓も置かれていたが、幸男が求める武器は無い。
幸男は奥のカウンターに座っている、仏頂面のプレイヤーに話しかけた。
「ねえ、あなたがここの店主さん?」
「そうだが……なにか用かい?」
「ここには、銃は置いてないの?」
幸男の問いかけに店主はもちろん、近くにいたプレイヤーも笑い始める。
「おいおい、この剣と魔法の世界に銃なんて代物があるわけ無ぇだろ! 顔がいくら美人でも、素人丸出しじゃ笑われるだけだぜ」
「お姉さん。 僕で良ければ、他の武器を手取り足取り教えてさしあげますよ」
「無いのでしたら結構、他をあたります」
その後も色々なプレイヤーに声をかけながら、幾つかの店を回ったものの銃を置く店は存在しなかった。
(そういえばたしか、自分だけのオリジナル武器も作れるって言ってたな。 無いのならば、自分で銃を作ってみるのもアリか)
幸男はまず始めに、簡単な鍛冶スキルと攻撃魔法スキルを取得する。
街の中の練習場でスキルアップを繰り返し、最下級の炸裂魔法を会得すると、今度は補助魔法を覚え始めた。
そしてプレイ開始からわずか3時間、幸男は銃の試作品を完成させてしまう。
(火薬の代わりに炸裂魔法、銃身は補助魔法で強化すれば発射の衝撃にも耐えられるはずだ。 考えが正しければ、これで弾が飛ぶはず)
安全地帯を抜けて、人目のつかないエリアで幸男は銃の試し撃ちをしてみた。
彼の計算上では銃の暴発が起きる確率は限りなく低い、引き金を引くと乾いた音がして10mほど先の木の幹に小さな穴が空く。
銃身にも異常は無く、試し撃ちは無事に成功した。
「それでは私だけの、オリジナル武器の製作をはじめよう」
こうして、本格的な武器の製作が始まったのである……。
「……ふぁ~」
「朝からあくびをするなんて、パパにしては珍しいわね。 夜更かしでもしたの?」
「あ、ああ。 ちょっと大事な仕事を思い出してね、寝るのが遅くなってしまった」
「ふ~ん。 パパもいつまでも若くないんだから、無理はしないでね」
娘の問いかけに思わず嘘をついてしまった幸男、その訳は……。
(娘にはさすがに言えん。 銃の製作に夢中になるあまり、寝たのが深夜3時だったなんて……)
凝り性な性格の幸男は娘に近づく悪い虫を確実に退治出来るよう、銃のカタログを片手に実銃を上回るスペックのオリジナル武器を作ろうとしていた。
ベースに選んだのはバレットM82、大口径の対物狙撃銃である。
(炸裂魔法と補助魔法による二段加速、空気抵抗の軽減に弾丸と銃身の耐久強化。 これだけやっておけば、きっと実用に耐える性能を発揮するに違いない)
ほとんどのプレイヤーは、オリジナル武器を自作しようとは考えていなかった。
それに費やす時間があるのなら、より多く狩って金を稼ぐ方が早いからである。
しかし幸男の場合は違った、娘に近づこうとする悪い虫を退治するのが彼の目的。
(どうせなら昼夜兼用のスコープも取り付けてみよう、弾も徹甲弾やダムダム弾など各種用意して……。 射程も倍にしたいものだ)
そんなことをやっているうちに、気付けば時計の針は3時を回っていた。
初日からここまでやってしまうプレイヤーは他に居ない、そして翌日ある意味運命の出会いは起きた。
その日、第二営業部内にかつてない激震が走る。
部長の丸林が、仕事中にも関わらず居眠りをしているのだ。
「部長、どこか体調でも悪いのですか?」
部下の1人、
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金城幸介
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金城幸介
2020年8月14日 17時19分
いけお
2020年8月14日 17時33分
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いけお
2020年8月14日 17時33分
久末 一純
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久末 一純
2020年8月12日 12時04分
いけお
2020年8月12日 12時48分
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いけお
2020年8月12日 12時48分
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