マオウ軍幹部ニート大公

読了目安時間:7分

エピソード:9 / 18

第9話 城の再建

 先日の戦争で、そして主に昨日の戦いで、メランサの城はもう大分壊れたから、かなり大規模な修理が必要だ。  そしてそれが終わる前に全員がこの別館で生活すると決めた。  ちなみにこの別館からも地下室に通じる。  だから俺はこうして直接部屋に戻った。  メランサは俺とマオウが夫婦じゃなく兄妹であることが分かってくれて、今回は二つの部屋を用意してくれた。  二つの部屋と言っても、実際は一つの部屋を二つに分けた感じだ。  裏の方がマオウの部屋で、廊下に出るのも俺の部屋からしか出来ない。  寝る前に少しマオウの様子を見よう。  ドアもロックしていないから、そのままマオウの部屋に入った。  もう結構遅いので、マオウはグッスリと寝た。  そしてもう少し魔道具の回復効果が欲しいので、その純白の姿のままで寝ている。  もう苦しそうな顔が見えない。 「おやすみ」  俺は安心して自分のベッドに行った。 「アラト? もう朝だよ。ウサミさんはもう朝食を用意しているから、早く起きて」  昨日はちょっと遅くなったから、早起きは出来なくて、マオウに起こされた。 「うあ……おはよう。体はどう?」  メガネをかけたら、目に入ったのはマオウの純白の姿だ。 「見ての通り元気だ。アラトの方は?」 「久しぶりのベッドで、より気持ちいい朝の気分だ」 「気持ちいいって?」  少し眉を顰めたマオウは俺の隣を見ている。  何故だろう……  いや、俺も少し分かるけど。  何故か知らないが、布団がちょっと動いているから。  マオウは布団を少し剥がした。  そして何故か、スク少女の上半身が現れた。 「おはようございます。昨夜は気持ちよかったですね、大公様」 「アラト……」  いや、違う。俺は知らない。  だからそんな目で見ないで。 「気に入った子に手を出すのはいいけど、事前に私に報告してください。でないと気を遣うことが出来ないよ」 「はー……いや、だから違う! というか、何でウンディはこんな所にいるのよ!」 「護衛、ですから?」  小首を傾けるスク水少女。 「護衛って、いつでも俺に付いている意味なのか?」 「はい。一生付いてきます、と誓いましたから」 「いや。夜は要らないんだろう?」 「えっ? じゃ、昨夜の『ミッカイ』も、付かなかった方がいいですか?」 「密会?」  気になる単語が耳に入って、マオウも対話に入った。 「はい。確かにそう聞きました……」  ウンディはマオウの目を見て、急に何か分かったようだ。 「あっ、もしかして、言っちゃいけないことですか? 分かりました。ウンディ、口が堅いですから」 「ねー、ウンディちゃん? 昨夜の密会って、どういうことなのか? アラトは私が知らない間に誰と会った?」 「……ウンディ、クチガカタイデス」  マオウから無言の圧力を耐えたウンディ。 「マオウ様、アラト様はもう起きましたか? 朝ごはんはもう出来たので、今から食べましょう」  ドアを開けて、ウサミはこっちを見てくれた。 「失礼しました」  そして軽蔑な目でドアを閉めた。  その後、俺はマオウとウンディに説明するために、だいぶ時間をかけた。  その間に、ウンディが言った気持ちよかったって言うのは、初めてこんなふかふかなベッドで寝たからと俺は聞いた。 「では、皆様は朝食を楽しんでください」  ウサミは少しお辞儀をしてくれた。 「まあ、誰かさんが部屋中で言えないことをしていたせいで、もうちょっと冷めちゃいましたけど」  そして呟いた。  声が小さくて、俺だけに聞こえる。 「あのう? 今朝はちょっと誤解があると思うけど……」  言えないことなんて一件もなかった。  むしろ詳しく言わせてください。 「ロリコン」  自分のために少し弁解しようと思っていたが、今はダメみたい。  後で少し詳しく説明しに行きましょう。  今日からウサミが料理担当になると聞いた。  そして意外に、今日の朝ごはんは前と違って、卵焼きと魚、そして味噌汁……  味もよく知っているもので、何だか日本に戻った錯覚だ。  ……この懐かしい味のためでも、このあとはしっかりとウサミの機嫌を取らないといけないな。 「今日はアラト様とマオウ様のご意見を聞きたいことがあります」  お箸が上手く使えないメランサはフォークで卵焼きを食べて、俺とマオウに聞いた。 「実は昨日、ウサミと一緒に城の様子を詳しく見ました。どうやら損害が予想以上なので、修理するよりもういっそ建て直す方が早いようです。お二人はどう思いますか?」 「俺は異議なし。マオウは?」 「私も」 「じゃ新しい城を建てたら、お二人はどのようなお城が欲しいですか?」  いや。城のことについてあんまり詳しくない俺達に聞いても…… 「えっと、城といえば、俺は姫路城しか知らないけど」 「私も、多分ノイシュヴァンシュタイン城以外は全然知らない」  あっ、ノイシュヴァンシュタイン城なら、マオウは結構興味があるので、昔少し俺に教えてくれた。  とてもメルヘンの雰囲気で、ディズニーのロゴのプロトタイプって。 「えっと、じゃそのヒメジジョウ? とそのノイシュヴァ……ノイシュ……」 「ノイシュヴァンシュタイン城です、メランサ様」 「そう。あの二つの城に何か共通点がありますか?」 「えっと……同じく、白の城って?」  俺は少し考えた。 「メランサ様。このことは私にお任せ下さい。後で私がマオウ様達に聞きます」 「そうですね。じゃよろしくお願いします」 「かしこまりました」  でもおかしい。  そもそもこれはメランサの城だから、自分の好みの様子にすればいいんだろう。 「えっと、これはメランサのお城だよね? なんで俺達に意見を聞いたのか?」 「まあ、せっかくここに泊まっていますし、気に入った住まいの方がいいでしょう?」 「確かにそうだけど……」 「じゃそうしましょう!」  俺はまだ聞きたかったけど、急に出会った日のことが脳に過った。  あの時メランサの言葉。自分はもう長くないって。  もしかしてメランサはこの城を……と思って、俺は質問をやめた。  その後、マオウはまた魔法の訓練を始めた。  勿論魔力の消耗が大きい魔法は禁止だ。  今も、水輪みたいな必殺技じゃなく、色んな細かいことを練習している。  こんなことができるなら便利だな、みたいなことを色々と試している。  例えば今、遠くの景色が大きな水のレンズでその水幕(すいまく)に映っている。  多分昨日の望遠鏡の改良版みたいなものだろう。  魔法を使うために、マオウの指輪に新しい魔石が付いている。  でもそれ以外の魔石は全部俺の手元に持っている。  緊急事態じゃなければ、マオウにもう新しい魔石をあげないと決めた。  俺はその光景を見ながら、地下室から持ち出した本を読んでいる。  時々疑問が浮かんだらメランサに聞く。  メランサも、時間があったら俺の隣に来る。科学知識を聞くために。  ウサミは意外に城の再建の総指揮になった。  メランサの言葉によると、ウサミは案外建築のことに結構詳しいみたい。  身が魔族にされた前に建築の関係者だったらしいって。  姫路城やドイツの城のことを聞いてくれずそのまま工事を始めたが、まあ、本当に聞かれても何も答えられないな。  殆ど何も知らないから。  むしろこのまま全部ウサミに任せた方がいいかもしれない。  工事の現場にはエルフやドワーフみたいな、他の種族の魔族も現れたが、やっぱり一番よく目に入るのは兎人だ。 「みんなはそれぞれの領地に集中していますからね」  隣のメランサは説明してくれた。 「そういえば、他の種族の魔族も全員赤目なのか?」 「兎人はそうですけど、エルフの集落に魔法が得意な者が多くて、青い目を持つ者もそれなりにいます。緑の目は……今の魔王軍にはもう一人しかいないでしょう」  魔族の魔力量は目の色で分かる。  一番下は赤。そして青。その上は緑。  魔力は魔法の動力源だけじゃなく、身体能力も強化する。  その結果、魔力の量でほぼ強さを決める。  そしてその強さは目の色を観察したら大体分かる。 「でも、人間に怯えられる魔女は一番下の赤目だね」 「それも今の私が弱いという証拠ですわね」  まさか魔力欠で目も違う様子になったのか。 「もしかしてこの目の色の規則って、魔族だけじゃなく人間にも適用するのか?」  俺は工場で活躍している、サファイアみたいな瞳をウンディの姿を見ながらそう聞いた。 「まあ、魔族と人間って、根本的に同じ生き物ですからね」 「……そうだな」  また昨夜の会話を思い出した。  ちなみに、ウンディに工事の手伝いをさせた時、 「分かりました。ウンディはでは大公様のお城の再建に尽くしながら大公様を見守りします。ですからできるだけウンディの目線から離れないで下さい」  と言われた。  まあ、俺も出かけるつもりがないから、何の不便がないけど。  それより、俺の城なんて、どうしてウンディにそんな考えがあるんだろう。  色々と問題になりそうな発言だから、後できちんと教えてあげなくちゃ。

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

  • 外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!

    大逆襲の人生リスタートが始まる!

    924,350

    40


    2022年10月7日更新

    負けないぞ俺!無理やりでも笑って前を向かなきゃ!絶対に大逆襲してやる! ソヴァール王国名門魔法使い一家の末っ子に生まれた少年リオネル・ディドロは、 こざっぱりした茶色の短髪、綺麗なとび色の瞳を持つが、顔立ちは平凡な18歳。 しかし、魔法学校を最低の成績で卒業。同級生から超劣等生のレッテルを張られた上、とんでもないくそスキルを授かり、家の名誉を重んじる父と兄から激しく罵倒された上、修行という名目で追放されてしまう。 非情な父から名前も変えて、1か月以内に王都を出ろと命令されたリオネルは、仕方なく冒険者となり、もてるチープな魔法と思い切り馬鹿にされたスキルを使い、精一杯生きて行く。 しかし、遂に報われる時が…… 必死に頑張る超底辺のリオネルに信じられない奇跡が起こり、手も差し伸べられたのだ。 さあ、巻き返しだ。 罵倒され、蔑まれたリオネルが覚醒し、大逆襲の人生リスタートが今始まる!

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:38時間3分

    この作品を読む

  • 異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!

    俺は絶対!前世より1億倍!幸せになる!

    209,650

    50


    2022年10月7日更新

    雑魚モブキャラだって負けない! 俺は絶対!前世より1億倍!幸せになる! 俺、ケン・アキヤマ25歳は、某・ダークサイド企業に勤める貧乏リーマン。 絶対的支配者のようにふるまう超ワンマン社長、コバンザメのような超ごますり部長に、 あごでこきつかわれながら、いつか幸せになりたいと夢見ていた。 社長と部長は、100倍くらい盛りに盛った昔の自分自慢語りをさく裂させ、 1日働きづめで疲れ切った俺に対して、意味のない精神論に終始していた。 そして、ふたり揃って、具体的な施策も提示せず、最後には 「全社員、足で稼げ! 知恵を絞り、営業数字を上げろ!」 と言うばかり。 社員達の先頭を切って戦いへ挑む、重い責任を背負う役職者のはずなのに、 完全に口先だけ、自分の部屋へ閉じこもり『外部の評論家』と化していた。 そんな状況で、社長、部長とも「業務成績、V字回復だ!」 「営業売上の前年比プラス150%目標だ!」とか抜かすから、 何をか言わんや…… そんな過酷な状況に生きる俺は、転職活動をしながら、 超シビアでリアルな地獄の現実から逃避しようと、 ヴァーチャル世界へ癒しを求めていた。 中でも最近は、世界で最高峰とうたわれる恋愛ファンタジーアクションRPG、 『ステディ・リインカネーション』に、はまっていた。 日々の激務の疲れから、ある日、俺は寝落ちし、 ……『寝落ち』から目が覚め、気が付いたら、何と何と!! 16歳の、ど平民少年ロイク・アルシェとなり、 中世西洋風の異世界へ転生していた…… その異世界こそが、熱中していたアクションRPG、 『ステディ・リインカネーション』の世界だった。 もう元の世界には戻れそうもない。 覚悟を決めた俺は、数多のラノベ、アニメ、ゲームで積み重ねたおたく知識。 そして『ステディ・リインカネーション』をやり込んだプレイ経験、攻略知識を使って、 絶対! 前世より1億倍! 幸せになる! と固く決意。 素晴らしきゲーム世界で、新生活を始めたのである。

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:17時間1分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • メリッサ/クリア・カラー

    アイドルとアイドルが戦う小説です。

    20,700

    10


    2022年10月6日更新

    アイドル大戦国時代――国家によるアイドル活動の推進プロジェクトが行われ、5年の月日が経過した。 激動のアイドル界のトップに君臨しているアイドルグループ『i─Con』は新メンバーの募集オーディションを開始し、数万人の少女達が夢をかなえるために応募する。 他人と違う身体的特徴から過去にいじめを受けていた少女、千倉ヒカル 彼女は過去のトラウマから中学生になっても1人も友達を作らず、孤独な日々を過ごしていた。 そんな彼女も中学校を卒業し、16歳の春を迎える。 ずっと憧れだったアイドルグループ『i─Con』に入るため、彼女もまたオーディションに参加する。 アイドルとは―― ファンとは―― アンチとは―― 幸せとは―― 勝利とは―― 千倉ヒカルの人生を懸けた戦いが今始まろうとしていた。 ※アルファポリスでも連載中です。

    読了目安時間:14時間25分

    この作品を読む

  • 天下無敵の女神様

    第4話から安藤与一が復帰します

    132,484

    3,801


    2022年10月6日更新

    安藤与一。今殺人罪で尼崎刑務所に服役中だ。刑務所内で作品を投稿する。第2話から与一はサビーニンに生まれ変わり、西シベリアでサバイバル生活を 送ることになります。第2話から1438年出発版(ノヴゴロド編)を順次作成中です。第3話からは軍神タギタイが主人公となり、大航海時代を生き抜きます。第4話からは安藤与一が戻ります。乞うご期待。

    読了目安時間:30時間44分

    この作品を読む