マオウ軍幹部ニート大公

読了目安時間:8分

エピソード:14 / 18

第14話 ロリコン(偽?)

「魔族になった前に、シルフさんはどんな人間だったのかって、少し教えてくれないのか?」 「確か、アルフヘイム王国の公爵令嬢でしたわね。それ以上は聞きませんでした」  魔族のみんなは殆ど思い出したくない過去があって、お互いに深く探らないのは約束らしい。 「あっ、そういえばシルフって、魔王軍に入ったのは七十年くらい前でしたわね。もしかしたら、ウンディーネに何か知ることがありますか?」 「う……ウンディの記憶には何もありませんけど」  まあ、小さい頃のことだから仕方がないか。 「じゃこれから会う予定の、ドワーフ領の領主のことに関して、何か情報がないのか?」 「フレイドマル様ですね。唯一の青目を持つドワーフとして、実力が領地最強です」  実力主義の魔王軍らしいことだ。 「そして噂で、凄いロリコンのようですわ」 「えっ」  聞きたくない単語が出た。 「よく小さい女の子に色んな格好をさせて、写真を撮ると聞きました」 「それ、ちょっと危なくない?」 「本人はそれが芸術的な美しさで、一切情欲が含まれていませんと宣言しましたけど」 「怪しい」  よく耳に入る言い訳にしか聞こえない。 「でも私はそれが本当だと思いますわ」 「理由は?」 「あの人がまだ人間だった頃のことを少し調べましたわ。女性の好みが少し変わった人間で、歳を取った婦人にしか興味がありませんでした」 「えっ」 「やがて多数の権力者の奥さんや愛人に手を出して、単なる死罪で気がすまない人がいて、人が知らずに魔族にされる羽目になりました」 「でも、魔族になってから女性の好みが変わった可能性も……」 「確かに。それでもアラト様が心配することが存在しないと思います。だって、」  メランサは後ろから俺の耳元で理由を教えてくれた。  なるほど。  少し確認させてもらう。  マオウの貞操に関わる問題だから。  魔王城を超えたら、北がドワーフ領で、南が悪魔領だ。  途中で昼の砂漠を体験した、メランサの魔法のお陰であんまり暑さを感じていなかった。  そしてまたウンディの「ゆっくりした」高速飛行のお陰で、あんまり時間が掛からなかった。 「さあ、飲め飲め!」  目的地に到着したら、噂のロリコンじじいは肉料理と大量の酒で俺達を歓迎してくれた。  しかし、 「俺、お酒を飲まない人間だけど」 「私も。まだ酒を飲む歳じゃないから」 「ウンディには護衛の仕事がありますから、お酒が飲めません」 「なんじゃこれ! せっかく今日は可愛い子がいっぱい来てくれたのに!」  こんな理由で、こいつは結構テンションが高い。  そして同じ理由で、魔王軍の敵だったウンディも歓迎してくれた。 「メランサも無理をしなくてもいいよ」 「でも、せっかく向こうがこんなに多いお酒を持ち出しましたし、一人に飲ませるのはちょっと可哀想です」 「そうだぞ! お酒で顔に赤を染めた小さい子って最高だぞ!」  吸血鬼は酔わないとメランサから聞いたけど。  多分お酒が予想より進まなかったので、クソじじいは次の段階に入って、後ろの大きなクローゼットを開けた。 「それに、このあとは楽しいことをするからな!」  そこから目に入ったのは、多分プロのコスプレイヤーのクローゼットの内部の光景だ。 「これは……」  マオウはそれを見て、目が丸になった 「そうだぞ、お嬢ちゃん」  噂のロリコン、フレイドマルはマオウに笑った。 「約束の通り、このあと付き合ってくれたら、ワシがお前に一票に入れる」 「事前連絡の通りですね」  メランサは呟いた。  旅の前に、メランサはコウモリの使い魔で全ての幹部と事前連絡をした。  エルフ領の返事はかなり友好的だった。ドワーフ領はちょっと変な条件だったが、それを聞いたマオウは直ぐ了承した。  俺も同意したが、クソロリコンじじいの噂を聞いたら考え直した。 「おい。その前に」 「誰じゃお前?」 「いや、さっきも自己紹介をしたんだろう」 「さあ。男の名前に興味がねーで、用もねー」 「でも、俺のことを聞かないとマオウの写真を手に入らんぞ?」 「くそ、卑怯な……さっさと言ってやれ」 「ちょっと、個室で話をしよう?」  とりあえず、二人きりの状況を作った。 「さってと、お前がマオウの写真を撮る前に、兄として確認したいことがある」  俺はクソじじいに言った。 「少し、ここで脱いでくれない?」 「はあ? ワシの腹筋に興味があるのか?」  ない。  それにそんな体型じゃ、腹筋が存在しないと思う。 「違う。上じゃなくて、下を脱いでくれ」 「おい、坊主。ワシにそんな趣味がねーぞ」 「俺もねえから、顔を赤くするな!」 「いや、これは酒のせいで」  とにかく早くしてください。  俺も酒臭いじじいと同じ部屋に居たくないから。 「早く脱がないとマオウの写真がなくなるぞ」 「はあ……分かった、やればいいんだろう!」  ――――――――  その後、マオウは予定通りに、フレイドマルの着替え人形になった。  色んな服を身につけ、色んなポーズでフレイドマルに写真を撮らせた。  メイド服。セーラー服。巫女服……  何で異世界にもこんなものが色々とあるんだよ  何だか、あいつはマオウの体の柔らかさを知ってから、要求が段々エスがレートしていた。  今も、マオウは白レオタードと白タイツとトーシューズで、I字バランスを維持している。腕には薄い長手袋。  あれ。  これ、マオウの本来の服じゃない。  靴以外だけど。 「よし! これで終了」 「ありがとうございました」  撮影が終わって、マオウはまた回復の魔道具(純白の服)を身につけた。 「これがいいな! ほらぼうず、見てよこれ! こんな姿勢でもできる女の子なんて、ワシは初めて見たぞ!」  俺はずっと見ていたけど。  柔軟さを求める高難易度のポーズをしたセーラー服ニーソのマオウの写真を見せながら、フレイドマルは口が止まらない。 「これも! そしてこんなに堂々と体の芸術を見せる子なんて、珍しいな。恥ずかしい姿の女の子もいいんだが、流石にもう沢山見たから……」  まあ。国際大会を含めて、舞台に上がることがよくあったから、これくらいで流石に恥しがることがない。 「あの時は色んな困難があったが、全てを乗り越えたワシがこの『シャシンキ』を作り出して良かった、と今は思うぞ」 「あのう? フレイドマルさん? これ、返してあげる」 「いいんだ。お前にあげた」 「いいの?」 「よくわからんが、別の子にも履かせたが、着心地が悪くて随分評判が良くねーみたいが、お前は随分と気に入ったようだな。サイズもお前にピッタリだし、これは何かの運命だろう」 「運命って……では、有り難く受け取らせてください」  それを見て、俺はフレイドマルに聞いた。 「それ、どこから手に入った?」  巫女服もいい、セーラー服もいい、何故異世界にこんなものが溢れたんだよ。 「これ? これはエデン帝國……今はシラユリ共和国と呼ぶが、約半年前にそこから流出したものだと聞いたぞ。一時的に流行りものになったと聞いたが、着心地が悪くて直ぐ履く人間がいなくなったらしい」 「随分詳しいな。人間側のことなのに」  半年前の流行りものまでよく知っている。 「小さい女の子に似合うものなら、ワシは何でも知っているぞ。そうだ、南西の国境線に行ったら今でも見えるぞ、ゴミとして捨てられたこれ」  その後、フレイドマルは俺達に少し領地を案内してくれた。  主にドワーフの作品を色々と見せてくれた。  剣や錘みたいな武器。  そして城の再建に使われた、人の操作で特定な作業がこなせるゴーレム。  でも、 「やっぱり魔道具がないな」 「神じゃねーから、作るわけがねーよな。そんなことより、ワシは教会の『サツエイキ』を再現したかったが、全然無理だった」 「お前、撮影が好きだな」 「そうだぞ。実はワシ、こんな武器や機械には興味がねーんだよ。あんなものより、可愛い女の子やお菓子の方が好き」 「お菓子? じゃ、エルフ領にシルフというものを、聞いたことあるの?」 「当然じゃ! あいつのお菓子って絶品じゃからな! でも色んな原因で、この領地はエルフ領と仲が良くねーから……」  そしてフレイドマルは俺にドワーフ領とエルフ領のことを教えてくれた。  ドワーフ領の領民は殆ど旧エデン帝國、今のシラユリ共和国の出身で、エルフ領は殆どアルフヘイム出身だった。  そして昔の両国はあんまり仲が良くなかったので、戦争も時々行われた。  さらにと言えば、ドワーフは道具を作って、それを使うのが好きだが、エルフは魔法や弓術みたいな、自身の力に頼る。  そしてドワーフは酒が好き。でもエルフはジュースを飲む。  ドワーフは腹が太るもの多いが、エルフは細身のものが多い。  あとは…… 「でもワシから見れば、こんなの、全然大したことじゃねーんだ。一緒に生活しても構わんぞ」  やっぱり領主としての器があるんだ。 「なにせワシ、エルフの可愛い子がかなり気に入っているぞ!」  前言撤回。 「なあ。お前、シルフのお菓子が好きなら、次に来た時に俺が少し持ってあげたらどう?」 「本当! そりゃありがたいな。実はうちのものも、そんなにエルフが嫌いじゃねーものが多いが、一部のものは結構極端で、領主としてはそう簡単にエルフ領にいかねーんだな」 「その代わりに、マオウのことは宜しく」 「おお! 任せる!」  多分今日のことで、俺はフレイドマルへの印象がクソロリコンじじーからちょっと変わった。  まあ、前提として、メランサに教えられたことを確認したから。  あの時メランサから聞いたのは、 「そしてフレイドマル様は権力者の怒りで、宮刑(きゅうけい)を受けましたわ」  こいつ、色んなお偉いさんの女達に手を出しっぱなしで、魔族になっただけじゃなく、去勢された羽目になったから、変な心配が無用だ。

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