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 一つ二つとちる花びらを眺めていた。  片手にはビール、もう片手には吸いかけのタバコ。  顔には殴られたような傷、腹部には包丁が刺さっていた。  人気のない公園で起きた殺人はしばらくして迷宮入りとなった。  その理由として三つあげられる。  ①彼は友好関係が広く誰からも疎まれていなかったこと。  ②彼の自宅からこの公園でかなりの距離があるのにもかかわらず彼はここまで徒歩で来ていた(防犯カメラ推奨)  これがいちばんの謎である三つ目  ③刺されている包丁は彼自身が作り、非売品にしていた宝物の包丁だったということである。  警察当局はこの事件を迷宮入りしたとして事件から五年後、1992年8月9日16:45に未解決事件として処理したという。  ◇ 「ということがあってな〜あははww」  殺された当の本人がケラケラと幽霊の友達に事の顛末を面白おかしく話していた。 「それで、犯人って誰なんだよ?」 「あ? んなもん知らないよ。寝てる間にグサってww」 「笑い事かよ〜……」  友達のハゲ田さんは困惑していた。  おれよりも幽霊歴が長く、この辺の縄張りのリーダー的存在らしい。  俺は死んでからというもの半年間の間は家に帰ったり、墓参りなんかをしていた。俺を見かねてハゲ田さんが声をかけてくれた。(ハゲ田さん本名らしい?) 「いや、本当にわからないんすよ。俺の作った包丁で死ねるなら本能なんですけど、できれば料理に使って欲しかったww」 「調理されたのは宮藤さんだけどな〜」 「それ笑えないっすww」  そんなこんなで仲良くなったハゲ田さんとおれは公園のベンチでだべっていた。 「桜綺麗だな」 「どしたんすか急に」 「いや〜生きてた頃は桜なんて見る機会なかったじゃない。だからおれは死んでよかったて思ってるんだよ。社畜して、頭下げて低い賃金で家族養ってさ……馬鹿みたいじゃん。おまけに禿げて家内に馬鹿にされてさいっそのこと死んだれ〜ってまぁ本当に死んだんだけどww」  お供えされた日本酒を飲みながらハゲ田さんは語る。 「お前さんも死ねてよかったんじゃねーのか? 新たな人生ってわけでもねーけどさ。死んで初めて気がつくことってあるじゃん」 「まぁ、そうっすね。独り身で彼女もおらず借金ばかりが膨らんでいくなかで、なぜか散歩したあの日の午後は楽しかったですね〜」  ふと、眺めると桜が風で舞う。  手には乗らず、ベンチに落ちてゆく。  何気ない一コマが、おれは死んだんだなと思わせる。 「……ふっ、これが難点だな」  ハゲ田さんはお酒をあおり真っ青な空を眺めて消えていった。 「全く……なに一人で満足して━━まぁ、それもいいか。次は桜がいいかな」  空はどこまでも青く広がってゆく。  まるで、永遠だと言わんばかりに……だけどそんな者はなく、いずれは無くなる。なら、今がいちばんと思って……。 「はは、そうか……ハゲ田さんは満足したのか。楽しかったんだろうな。さて……」

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