三国列女伝 劉備の娘

第10話 徐州危機!(1)

 次の日、劉備は重たく暗い気持ちで、城を尋ねた。両脇に関羽・張飛を伴ってである。  まさか、彼だけでなく、義弟たちも、封と竺の前で失態を晒したとは思わなかった。まずは麋竺の姉に謝るのが筋だろう。そして、竺にも謝る。その後で、封にも会いに行こう。  曹操軍は再三、徐州に進軍し、牧の陶謙のいる(ホウ)も今回は持たないと斥候が来ていた。  その前に清算しないと、戦中気がかりでしょうがねえもんなぁ。重いため息が出る。 「兄者、すまねえ。何なら、俺が腹を切って詫びるしか……」 「益徳、ならんぞ。それでは、我ら3人心中となるではないか!」  この義弟たち何の漫談しているの?  劉備はブラックな苦笑が漏れた。すると、城に着いた。曹豹は出張っているのか、姿がない。  城内が慌ただしい。すると、麋密が走って来て、劉備たちに拝礼をした。 「劉備さま、この火急に駆けつけて頂きありがとうございます」 「あぁ、そりゃ、こっちに落ち度があるもの。足は動かすぜ」 「落ち度? 何のことでしょうか?」  綺麗な麋密の顔が曇る。関羽はすでに察した。そして、戦の勘だけ利く張飛も何かを察している。  劉備もようやく気付いた。 「竺は隠れているよな。(ホウ)がやばいんだろう? ここももうじき奴がくるんだろう?」 「流石、劉備さまです。お心遣い痛み入ります。曹操の軍勢によって、彭は落ちました。間もなく、この(タン)へ陶謙さまがいらっしゃいます」 「あちゃあ、そんな徐州内部に曹操は来てんのかぁ!」  下邳(カヒ)で、陶謙と会ったときは、余裕だ小僧と言っていた割には、ハイスピードに城を十数も落とされたことになる。  何故、こうも曹操軍は急ぐ?   劉備たちは、陶謙を迎えるとともに、軍議に入った。  白髪の増えた、徐州牧の陶謙は疲れた顔であった。息巻いていたあの頃を恥ずかしいというような負けっぷりをしてしまったのだろう。  口調も疲れ切っていた。 「劉備か、ワシは曹操に首を差し出し、罪を清算しようと思うのだ。これ以上、徐州民の虐殺を見たくないのだ」 「陶謙どの、ちょっと時期が悪いとオレは思うぜ。もう牧の首つで治まり利く戦争じゃないんだ」  劉備は語る。  斥候からもたらされた情報では、下邳城周辺の大河が住民の死体で溢れかえっているらしい。  そんな非人道的なことを父親1人のためにやるだろうか。恐らく、曹操は何かを見せしめて優位に進めようとしている。  陶謙は汗を顔から噴き出した。 「じゃあなんだと言うのだ! この牧の命より重いモノを誰に見せようと言うのだ!」 「そいつは天下だよ。天下を取ろうとしている諸侯に見せるのさ」 「天下だと? 奴も漢の臣であろう。何を寝ぼけたことを……」 「曹操は、漢を終わらせるつもりだろう! 任せとけ、オレは漢を守る男だ!」 「う、うむ」と歯切れ悪く陶謙は頷いた。 末席にいた麋密や曹豹ですら、曹操の速さとやり過ぎな強さに対する、劉備理論にポカンと口を開きながら納得していた。姦雄は国盗りを始めたのだろう。  徹底抗戦しかない。陶謙も家臣たちも、劉備たちも覚悟を決めた。  だが――事態は急転した。  狼将軍が、あの呂布(リョフ)が、曹操の留守番に噛みついたのだ。拠点、濮陽(ボクヨウ)が呂布軍によって攻撃されているとの報が、軍議中のところに入った。 「まっじかー。助かったぁあああ」  震える声の劉備ですらも、失禁する寸前だった。地鳴りがこの郯にも響いていたのだ。  だが、ピタリと止まった。  斥候の報告では、曹操軍は西に向けて猛進して行ったそうだ。

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