三国列女伝 劉備の娘

第11話 徐州危機!(2)

 その地鳴りに、竺は小さくなって震えるしかなかった。封も怖かったが、劉備たちが何とかしてくれると、少し期待していた。  それくらいの埋め合わせをするくらい劉備なら出来るんじゃないかと思う。  何となく子供心に、悪を討つ正義で、曹操と劉備が映っていた。そして期待通り、地鳴りはすぐに止んだ。  パタパタと、封は城内から走り出す。  門の前で、鎧をまとった兵士たちがポカンと口を半開きにしていた。あれ、出兵していなかったのか。  じゃあ、なんで曹操は退いたんだろうか。  曹操の野郎、留守(背後)を襲われたみたいだ。兵士の人がそう話す。ありがと、と言ってまた封は走り出す。 「麋密さん! 備さん!」  封は震えている麋密の手を握った。冷たい。傍に立つ劉備も心なしか顔が青い。 「曹操は本気で漢を終わらせるために戦うだろう。オレは戦えるのだろうか。震えが止まらないんだ」 「あたしはその震えがあるから、曹操に対応できるんだと思う。怖くなければ、とどまって滅んでしまう。でも、怖ければ逃げてもいい。あの高祖劉邦(リュウホウ)さまだって、最後の1戦以外負けっぱなしだったんでしょう」 「あぁ、漢室はオレたちで復興させよう。最後に曹操を倒そう」  劉備は、封の頭をそっと撫でた。麋竺は羨ましそうに見ていて、姉がクスクスと笑う。関羽と張飛も、武器を地に下ろして苦笑する。  徐州を襲った第1波は去って行った。 ††††††††††††††††††  だが、堪えていた者がついに倒れた。徐州牧の陶謙が心の病で危篤になったのだ。陶謙はか細い声で、病床から麋密に言った。  その伝達で馬を飛ばし、劉備の下に伝えに来た。  また折り返す。劉備と麋密は馬を飛ばしながら、病床の陶謙の下へ戻る。 「もう陶謙さまの命は長くないでしょう。ご子息さま2人には、この飢饉と難民にまみれた徐州を復興させる力はなく、なお曹操の魔の手から民を救う力もありません。願わくば、劉備さま……」 「言うな! まだその時ではない!」  走り切った劉備は、ヒューヒュー息を吐く、陶謙の手を取った。陶謙は彼の耳にだけしか聞こえない小さい声で何かを言うと、静かに目を閉じた。  病床の徐州牧陶謙は、郯で静かに息を引き取った。 ††††††††††††††††††  城の一角の庭。劉備は項垂れて座っていた。 いつもの講釈をやる元気もなく、陶謙の死から数日たった今でも、気持ちが塞ぎ込んでしまっていた。  劉備という人が、他人の死に対して、この乱世においても真正面であることは、民草の自慢になった。  備の下へ日に日に様子を伺いにくる人たちが増えた。その人の多さに、封も竺も驚いていた。  でも、備の心は動かない。  関羽も、張飛も、心配はしていたが、混乱し続ける徐州内を軍で抑えるしか彼らには出来なかった。 「劉備さまー! 新しい徐州牧さま、ばんざーい!」  暴徒もそんなことを口にしている。満更、義兄弟は悪い気がしない。  後は塞がる備の心を誰が解くか。そんなところだった。  そんな時でも、曹操と呂布の戦局情報は流れてくる。一進一退であるが、ある日を境に呂布が劣勢になっているらしい。  こちらも早く決断しなければならない。

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