三国列女伝 劉備の娘

第5話 紅い瞳の少女!(5)

 劉備は、コホンとわざとらしく咳払いをして、困って立っていた曹豹に合図をした。 「曹豹、椅子をもうつくれ。飯は人前でいい。その代わり、オレに酒だ!」 「あ、はい……。あー! 酒は現金で払ってくださいね! タダ飯に含まれませんぜ、旦那!」  拍子抜けした曹豹は椅子をもうつ置くと、酒は別代金と目敏く言った。  劉備は所持金を少し心配したが、そんなチンケな性格を彼はしていない。元々、飯をおごって他人を見るのが好きな彼である。  少年少女だろうが、薄汚れた老人だろうが、ひとたび会話をすると無限大の話に真実があるように思えるのだ。真実は未来へ繋がる糧だ。  曹豹に親指を立てて、了承の合図を出した。曹豹は礼をして、一時去って行ったが、彼は席で待つ人の少女の前に座った。  大きな握り飯がつ、机の上にあった。  遠慮なく竺は食べていたが、封は戸惑って備の顔を見た。  備は優しく一度頷いた。子供は嫌いでない。封はコクリと頷き返し、おにぎりを掴みかじる。  久々の米は美味しかった。味のないスープより、食事を摂っていると実感できる。それに、何だかこの赤い粒が酸っぱいのだ。米と合うのかもしれないが、封はその酸っぱさに驚く。  備はその反応がおかしくて笑う。封はムッとして言う。 「酸っぱい味は初めてなんだよ!」 「梅漬けは、食べたことないのか。酸っぱくて栄養があるんだぞ」 「生まれてこの方ずっと大飢饉ってやつ? だから、あたしは美食家じゃないし、こんな贅沢な食べ物知らない……」 「その割には、ずいぶんと難しい言葉をスラスラ話すんだなー。竹簡で勉強するって言っても、田舎じゃ出来ないだろう。君は中原(チュウゲン)の家の子かい?」  劉備としても、久方に封の名前以外を聞けるチャンスであった。少し優しい声で、小突いてみる。  因みに、中原とは、黄河中下流域の平原の辺りである。ここが後漢(くに)の大事な場所であろうか。  満腹に近くなって、口が緩んだ、封は口を開く。  ここには初対面とはいえ、竺しかいない。徐州の食堂では周囲の目を気にして、なかなか口を開けなかった。それに何度も飯をおごられて、備もそれほど悪い人でないと思うのだ。少なくとも役人に讒言とともに、封を売ることはないだろう。 「(コウ)一族の娘。詳しいことは分からないけど、あたしのお爺さんは(くに)に仕えていた臣らしいよ」 「なるほど、昔に竹簡で読んだことがあるかな。まぁそんな感じだったかなー」

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