Amazonギフトカードが当たる会員登録キャンペーン実施中!詳しくはこちら

今日も三題噺!

読了目安時間:2分

3日目 山、井戸、見えない運命『晴れた先』

 山田という苗字がコンプレックスだった。  全国の山田さんに怒られそうであるが、少年は苗字で呼ばれることを極端に嫌った。かといって名前の方を気に入っているかというと、そういうわけでもなく苗字よりはマシ、という程度だった。  名前の由来は知っている。両親が共通して好きな俳優の名前をもじったものだ。直接聞いた時は、漢字の由来をつらつらと説明されながら、いかにもそれっぽい理由を並べられた。少年は嘘とわかっていながら、感動した素振りを見せ、翌日の学校の作文で発表したりしたものだ。  少年には特殊な能力があった。己の人生を写真のフィルムさながらに眺めることができる能力だ。さらにフィルムを選択すると、詳細な追体験をすることができる。欠点と言えば、没入しすぎると現在の立ち位置があやふやになること。それから死ぬ間際のフィルムには靄がかかっているということだ。  見えない運命があることを、少年は気に留めない。どうせまだまだ先のことだ。もっと大人になれば自然と靄が晴れていくに違いない。少年は楽観的だった。  少年は、その能力を駆使しながら順調に富と名声を築いていった。  できないことはなかった。  買えないものはなかった。  すべて思いのままだった。  晩年になり、少年は人生で初めて焦ることになる。ついぞ靄が晴れることないまま、そのフィルムの領域に達してしまったのだ。  自分は一体いつ死ぬのか。これからどうすればいいのか。何一つわからなかった。  やがて豪邸の中で、一人静かに最後を迎えようとしていた少年は見た。靄が晴れたその先のフィルムを。  ――この子の名前、このあいだ読んだ漫画の主人公の名前にしない?  ――おいおい、さすがに目立ちすぎるだろう。苗字は山田だぞ。  ――あらそう? それじゃあ……  ――いいじゃないか。ほら、俺たちが勝手に家族認定してる俳優の……

コメント

コメント投稿

スタンプ投稿


このエピソードには、
まだコメントがありません。

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

  • 或る少女と少女のカケラ

    或る少女のサイドストーリーです

    5,850

    80


    2021年7月30日更新

    『或る少女の話』のサイドストーリーです。或る少女を囲む或る少女の為に産まれた、少女のカケラ達のお話です。『或る少女の話』を読んでからの方が、内容を理解しやすいかと思います。 全体的に救いがなく、ダークな内容です。閲覧にはお気を付けください。 画像は、フリー画像素材をお借りしました。(PASUKO様)

    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:9分

    この作品を読む

  • 佰肆拾字のお話

    140文字以内で。。。

    810,196

    1,123


    2021年7月29日更新

    Twitterでのコンテンツ用に作ったお話です。 ---------- 「結果的連作」の お品書き:https://novelup.plus/story/770595863

    読了目安時間:1時間33分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • タキオン・ソードーTachyon Swordー

    剣と銃、幻想と科学が織り恋愛ファンタジー

    450,100

    1,800


    2021年7月27日更新

    「ちょっと運命的かもとか無駄にときめいたこのあたしの感動は見事に粉砕よッ」 琥珀の瞳に涙を浮かべて言い放つ少女の声が、彼の鼓膜を打つ。 彼は剣士であり傭兵だ。名はダーンという。 アテネ王国の傭兵隊に所属し、現在は、国王陛下の勅命を受けて任務中だった。その任務の一つ、『消息を絶った同盟国要人の発見保護』を、ここで達成しようとしているのだが……。 ここに至るまで紆余曲折あって、出発時にいた仲間達と別れてダーンの単独行動となった矢先に、それは起こった。 魔物に襲われているところを咄嗟に助けたと思った対象がまさか、探していた人物とは……というよりも、女とは思わなかった。 後悔と右頬に残るヒリヒリした痛みよりも、重厚な存在感として左手に残るあり得ない程の柔らかな感覚。 目の前には、視線を向けるだけでも気恥ずかしくなる程の美しさ。 ――というか凄く柔らかかった。 女性の機微は全く通じず、いつもどこか冷めているような男、アテネ一の朴念仁と謳われた剣士、ダーン。 世界最大の王国の至宝と謳われるが、その可憐さとは裏腹にどこか素直になれない少女ステフ。 理力文明の最盛期、二人が出会ったその日から、彼らの世界は大きく変化し、あらゆる世界の思惑と絡んで時代の濁流に呑み込まれていく。 時折、ちょっと……いや、かなりエッチな恋愛ファンタジー。 【第二部以降の続編も追加し、一作品として連載再開しました】

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:28時間34分

    この作品を読む

  • 漂流してきたお姫様と浜辺の巨神

    描いていて明るい気持ちになりました👸

    2,500

    30


    2021年7月29日更新

    「ねぇねぇ、次は砂のお城を作りましょう」 「うん、わかった」 1人浜辺で遊んでいた少年、彼がたまたま見つけたのはオモチャのような潜水艦。 その中から出てきたのは、なんと赤いリボンを付けた小人の女の子だった。 最初は驚く少年も2人は意気投合し一緒に遊ぶことに。 少年と女の子が届ける現代ファンタジーのショートショートストーリー🎵

    読了目安時間:8分

    この作品を読む