百合の鑑定士~大正浪漫×刀剣

どうも、お久しぶりです。 集中していた依頼を終えたので、WEBノベルを再開しました。追加さえなければ、新年までは自由じゃ! だいぶ時間が空いてしまいましたが、よろしくお願い致します。

一輪の百合

       * 『――罪状、殺人未遂。  被告人モミジ。短刀ニテ殺人未遂ノ疑いデ逮捕、拘束』  そう書かれた小さな記事が、新聞に載っていた。関係者や近隣住民でなければ見逃してしまう程に小さい。  ――まあ、世間一般からすれば、他人が起こした事件なんて、その程度だろうけど。  しかし、今回に限り、私は第三者ではいられない。  時刻は、午前八時。  いつもなら、”あの子”が朝食の準備を終えて、私に余計なちょっかいをかけながら家事をこなしている時刻だ。  あの子がそうだから、私は業務に集中出来た。 「……」  少しの寂しさを感じ、私は静まりかえった部屋を見渡す。  いつもなら少し狭く感じる部屋も、煩く感じる騒音も何もなく――静寂に満ちた部屋。  ふいに、壁にかかった鏡の中の自分と目が合った。  迷子の子どものように、不安げで、情けない顔。 「……っ」  ぱしん、と私は気合いを入れるために両の頬を叩く。 「しっかりしろ、姫百合。お前は、姫百合なのよ。こんなみっともない顔、あの子に見せる気?」  そう鏡の中の自分に言い聞かせる。  我ながら、鏡に話しかけるなんて、かなりやばい人だが。今の私には必要の事だった。  ――しっかりしろ。お姉様の名が廃るわよ。  一度目を閉じて、大きく息を吸う。  肺を伝って、全身に酸素が行き渡る。たったそれだけで、体内を渦巻いていた淀んだ何かが浄化された気がした。  気合いを入れるために、髪を高い位置で結う。いつもモミジに結ってもらっていたせいか、上手く結べず、不器用な出来になってしまったが。  そして、夜会へ出る前にモミジが洗濯し、部屋に干していた着物と袴に着替え――『認定鑑定士』の証でもある羽織を肩にかける。 「一人で身支度するのって、結構大変ね」  いつもはモミジが断っても断っても、世話を焼いてくるから。  私もそれに慣れて、いつしかそれが当たり前になって甘えていた。 「さて、行くか……」  場所は、警察署。 「百合姉、大丈夫?」  途中で合流した初音が、心配そうに見上げる。 「ええ、大丈夫よ。それより、昨夜の事だけど……」 「うん。僕も、警察関係者さん、話しているの聞いて、知った事だけど」  そう前置きをしながら、独特な喋り方で初音は語る。 「昨夜の夜会の帰り、華族のお兄ちゃんが通り魔に襲われた」 「華族のお兄ちゃんって、まさか……」 「うん。僕の刀、盗った人」  またアイツか! 「という事は、あの坊やがモミジが犯人って言ったわけ?」  よし殺そう。 「ううん、それが……」  初音が軽く首を振った。 「よく分からないの」 「え? 分からないって……」 「華族のお兄ちゃんは後ろから誰かに切られたみたいで、背中から腕に刃物で切られた跡があった」  刃物? 「お兄ちゃんの悲鳴を聞いて駆けつけた時、現場には血のついた短刀を持ったモミジ姉と、華族のお兄ちゃんが倒れているだけだった。それで、モミジ姉が……」 「何それ。証拠らしい証拠ないじゃない」 「うん。それに、何だか、おかしかった」  初音が俯きながら言った。 「モミジ姉、すぐに警察の人達に囲まれて、捕まっちゃったんだけど……何だか、手際がいいっていうか、まるで劇場みたいだった」  何だか、何か裏がありそうな感じ。  あの華族の坊やもそうだけど――  ――『”全ては繋がっている”。どうか、この言葉を、忘れないで……』  あの時の、外套の少女――黄葉(もみじ)が言っていた事も気になる。  もしかしたら、あの黄色の令嬢――(しきみ)が一枚噛んでいるって事も――。 「ふぅ」  私は、小さく溜め息を吐いた。  駄目だ。考え出すと、全てが怪しく思えてくる。  ――いつもこうやって行き詰まると、あの子が余計なちょっかい出して、気を紛らわせてくれるから。 「百合姉」  ふいに、初音が私の袖を小さな力で引っ張った。 「僕じゃ頼りないかも知れないけど、僕、力になるよ。モミジ姉みたく、上手に出来るか、分からないけど。尊敬する藤田五郎の名にかけて、百合姉の力になる」 「初音……」  いい子だ、やっっぱりいい子だ、この子。  思わず私は初音を頭ごと抱き締めた。 「ありがとう。その時は頼むわね」 「うん。それとね、百合姉。関係あるか分からないけど……」 「うん」 「モミジ姉が現場で持っていた短刀なんだけど……」 「小夜左文字みたい」 「……!」

バディ変更。今回、モミジさんはあまり出てこないかも知れません。 ミステリーぽくなってますが、次あたりにただひたすら刀!刀!刀じゃあああ!になると思います。

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