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悪い魔導師に傀儡にされた白百合の姉と捻くれた黒百合の妹は薄汚れた世界に逆襲することにしました

読了目安時間:4分

雑踏の中で

 ここは、ニフルハイム領の城下町。  厳密には広い壁に囲まれた城郭都市で、私やアルフラウの住むニフルハイムの城は、中心地のちょっとした小高い丘の上にある。  最近では領主のアルフラウを称えるように、人々から白百合城などと呼ばれているらしい。別に白い壁な訳でも無いし、二階にテラスはあるものの、それ以外は無骨な城なので、私は普通にニフルハイムの城と呼んでいる。アルフラウ城と呼ぶのも何となく抵抗があるので。    どうしてこんな辺鄙な土地に城など構えているのかというと、グランツ王国が建国する前、ニフルハイムは小国ではあるが王国だった名残りである。  地上から姿を消した神々たちの恩寵(グレイス)を賜わう者を優遇した、過去に栄華を誇ったムスペルヘィム帝国。三代目皇帝クレイグもフロストロードを刺激したくなかったのか、北限の小国には侵略の手を伸ばさなかった。  それも当然の理由で、ニフルハイムは大した資源も無いのに城の守りは堅固。さらには背後には千人の魔導師達が控えているのだから、相手にするだけ損だったのだろう。  今では辺境伯という地位を受け入れているものの、父のフレースヴェルグを含めてニフルハイム領の諸侯達は、完全にグランツ王国の傘下であるという意識を持っていない。  それは私にも当てはまる事で、ニフルハイムの名を冠す事に誇りは持っていたりする。  アルフラウが領主になっても、グランツ王国の支援は無しで独立して治政ができる領土でありたいと思う。  武器屋ギルドの長、ジェラルドとの交渉を済ませた私は、記憶をもとにニフルハイム領の歴史を紐解きながら、城下町の散策を楽しんでいた。  城下町より先には大きな街が無く、商人や旅人達が出発の準備を整える為の場所であると共に、冒険者と呼ばれるいわゆる万事屋(よろずや)達が、宿で依頼を受けて旅立つ場所でもある。  依頼人の任務を受けた者や新たな任務を待つ者が、装備を新調したり食料を調達したりと、忙しなく市場を行き交う様はまさしく修羅場。    そんな彼らを傍目に眺めながら、私はひやかし程度に露店の小物やアクセサリーを眺めて回るのだった。  ふと、とある露店に何気なく並べられているアクセサリーが目にとまり、私は足を止めた。  それは猫を模ったカメオの胸飾り(ブローチ)だった。  私は胸飾り(ブローチ)を思わず手に取って、その精巧な作りに思わず感嘆の吐息を漏らした。なんてかわいい猫ちゃん。 「その胸飾り(ブローチ)をお気に入りですか? お姉さんにお似合いだと思いますよ。もちろん、贈り物としても喜ばれると思います」  店主らしい少年は、飾り気のない素直な笑顔で私に微笑んだ。  別に性別を隠しているつもりはないが、普段は男装で過ごしている私が少年に一瞬で女性だと見抜かれてしまった事に驚いた。  もしかすると、このカメオの胸飾り(ブローチ)を眺めている時に、少女のように目を輝かせていたのかもしれないと思うと、少し照れてしまう。 「ああ、うん。僕は猫が大好きだから。良くできた細工だね。もしかして、君が作ったのかな?」  私の問いに少年は頷き、褒められて照れくさいのか頬を軽く指でかく。 「実は、モデルはうちの猫なんですけどね。気に入っていただけたなら、お安くしますよ」  背中に寄り添って丸くなっている猫を撫でながら、少年は屈託のない笑顔を私に向けた。 「あはは、商売上手だね。うん、それじゃこの胸飾り(ブローチ)を下さい」  少年の提示した価格より少し多めに銀貨を渡そうとしたその時、私は誰かに背後から急に手を掴まれ押さえられた。  代わりに、細い白い手が後ろから伸びると、少年に金貨を差し出していた。 「それはオリフゥの為に買ってあげる。十五歳のお誕生日のプレゼントの代わりに」  澄んだ鈴の音の様に、心地よい馴染みのある声。  私が振り返ると、この場所には本来いるはずがない白髪の少女、アルフラウが立っていた。  少年は突然現れた白髪の少女を見て、やや呆気に取られていたが、金貨を受け取るとカメオの胸飾り(ブローチ)を私に渡しながら言った。 「プレゼントですか……いいな。綺麗な方ですね。お二人はどういうご関係なのですか?」 「ええと……っ」  少年の問いに、言いかけた言葉を一度飲み込んだ。  黒髪の妹に白髪の姉という組み合わせは、一発でニフルハイム家の姉妹とバレてしまうかも知れない。こんな所で注目を集めてしまう事は避けたかった。  ニフルハイム領を治める姉がお忍びとはいえ、護衛もろくに付けずに街中を徘徊している事があまり宜しくない。  おそらく私のあと追ってきたのだとは思うが、誰かに誘拐されていたら大惨事になるところだった。  ここで少年にアルフラウが領主である事を印象付けさせるような言動は、避けなければならない。私は咄嗟に嘘をついた。 「あ、うん……僕の妹。アルって言うんだ」 「妹……私が妹?」  私の言葉を不思議そうに、赤い瞳で見上げるアルフラウ。  そんなアルフラウの視線を知らずか、少年は頷いて素直に納得した。 「お姉さん想いのかわいい妹さんですね。いいなぁ、羨ましい」  アルフラウは私の嘘に合わせてくれているのか、いつもの通りなのか、私の方に抱きつきながら少年に微笑みを返した。 「そう? 嬉しいな。(わたくし)達は仲の良い姉妹に見えますか?」 「ええ、とっても」 「ふふ、ありがとう。お釣りは褒めてくれたお礼に差し上げますね」  少年の答えに姉は、目を細めて口元を綻ばせるのだった。 「……ゔっ。姉さんごめん、これには訳が」 「うん。後でゆっくりと聞かせてね」  耳元で囁いた私に、微笑んでいるアルフラウだったが、少年相手の時と違って目が笑ってない様に見えてちょっと怖かった。

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  • ラティナ(うちの娘)

    degirock

    ♡1,000pt 〇50pt 2021年3月22日 15時06分

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    ラティナ(うちの娘)

    degirock

    2021年3月22日 15時06分

    ラティナ(うちの娘)
  • 野辺良神社の巫女

    べるえる

    2021年3月30日 2時47分

    degirockさん、貴重なノベラポイントまでありがとうございます!ちょくちょく読みに来て頂いていて感謝です。

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    べるえる

    2021年3月30日 2時47分

    野辺良神社の巫女
  • 女神官

    ちー

    ♡1,000pt 2021年2月21日 14時23分

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    お慕い申し上げます

    ちー

    2021年2月21日 14時23分

    女神官
  • 野辺良神社の巫女

    べるえる

    2021年2月21日 14時32分

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    ありがたき幸せ

    べるえる

    2021年2月21日 14時32分

    野辺良神社の巫女
  • あんでっどさん

    ワタル

    ♡1,000pt 2021年1月20日 10時24分

    周囲は冒険者達が装備を調える荒々しい市場なのに、猫アクセに見とれるオリフちゃんかわいいですね。実はアクセに冒険者向けの加護やバフ効果があったり?颯爽と支払いしたアルフラウちゃんですが、なぜ追ってきたのか、期待です!

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    ワタル

    2021年1月20日 10時24分

    あんでっどさん
  • 野辺良神社の巫女

    べるえる

    2021年1月20日 20時15分

    コメントとポイントありがとうございます。確かに魔法の加護!とか付けてみても良かったですね。おまじない程度の加護なら魔術の素質さえあれば作れなくも無いので。色々想像して頂けるの嬉しいです。アルフラウの追ってきた理由は……次回のお楽しみにしてくださいませ。

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    べるえる

    2021年1月20日 20時15分

    野辺良神社の巫女
  • あかべこ

    みどりのナマモノ

    ビビッと ♡300pt 2021年1月10日 3時36分

    《店主らしい少年は、飾り気のない素直な笑顔で私に微笑んだ。》にビビッとしました!

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    みどりのナマモノ

    2021年1月10日 3時36分

    あかべこ
  • 野辺良神社の巫女

    べるえる

    2021年1月10日 6時22分

    ビビッとありがとうございます!素朴な笑顔って癒やされますよね。汚れを知らぬ少年は癒やしです。反応嬉しいです。

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    べるえる

    2021年1月10日 6時22分

    野辺良神社の巫女
  • 殻ひよこ

    火花

    ♡200pt 2021年1月16日 6時59分

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    楽しませていただきました

    火花

    2021年1月16日 6時59分

    殻ひよこ
  • 野辺良神社の巫女

    べるえる

    2021年1月16日 7時46分

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    またお越しください

    べるえる

    2021年1月16日 7時46分

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