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腰巾着騎士の冒険譚!――一周回って普通の冒険者?――

読了目安時間:4分

新人

 槍が振り下ろされる。その衝撃で賊の兜がへこんで脳へと食い込んだ。それが4名いた山賊の最後の一人だった。  槍の持ち主は振り下ろして同じように、精密かつ迅速な動きで槍を戻した。見事な腕前と言える。  粗末な山砦とも言えない隠れ家は同数の敵によって壊滅した。集めた物は奪われ、最後は命まで失った。しかし、彼らもそうして生きてきたのだから仕方が無い。 「こんなものでいいかしら? それで、合格?」 「ああ……腕前に問題はないな」  アレイオンは降参ですというように肩をすくめて答えた。実際に彼女の腕前はかなりのもので、アドラスよりは下だがアレイオンとは互角以上と言ったところだ。それは実力派騎士として見た場合、上の下か中の上は腕が良いということだ。  新入り志願の試験と称して、アレイオンはこの依頼を受けて試したのだ。ある程度手を抜いて観察していた結果、四人の内三人を彼女が討ち取った。動きも明らかに実戦を経験した者のそれだ。 「うん。良いんじゃないかな。相手を苦しませずに殺すよう工夫もしているようだし、人格的にも問題はない。合格で行こう、アレイオン」 「レイアは?」 「ま、また私より強い人が……立場は上がりませんが、安全には替えられません……」 「ではアドラスの良いように。我々は貴方を歓迎します……と言うが、貴方の腕前なら正直どこでも受け入れて貰えると思う。本当にうちでいいのかね?」 「ふん……他の連中にはもうあたったわ。アルゴス生まれは入れたくないんですって。失礼な話よね」  どこまでもタイミングの悪い女戦士だ。アルゴスとテーバイが戦をしていた頃もあったという、積もった歴史。それに加えて近頃、そのアルゴス出身者の兵達がやらかしたばかりだ。  アルゴス側はあくまで無頼に落ちた脱走兵の一点張りだが、どう考えても適当な言い訳だった。  そんな時に純粋に冒険者で生活の糧を得たいと現れた人物。怪しいにもほどがある。だが、この依頼だけでなくアレイオンはあらゆる手段を使ってこの女を調べている。結果は白だった。 「では、歓迎しよう。戦士コレーはこれより我らの同胞となる。同胞として我らに従い、また、同胞として我らを従わせるか?」 「コレーはアルゴスの百目にかけて、この誓いを守ろう……随分古風ね。というよりはよく風習を知ってるわね」 「俺はアドラスに従う誓いを立てているからな。似たような事例は当時に調べた。我々は基本的に報酬は等分だ。リーダーであるアドラスにも例外は無い。ただし、アドラスの大まかな方針にはできるだけ従う」 「でも一応、意見は言えるわけね。それだけでも良心的だわ」  軍に比べればそれは自由だろうさ。そう思いながら、アレイオンは次の探索箇所のことを考え始めた。  アレイオン達とコレーはこうして仲間となった。分前は減るが、受けられる依頼の幅が広がり安定度は増す。その金で地下がどうなっているかを一行は探るのだ。  しかし、この地はなぜこんなにも賊が多いのか。疑問を浮かべた後で、アレイオンは分捕り品の選り分けにかかった。 /  そうしてアドラスは既に恒例となっている“歯車遺跡”へと冒険に繰り出した。  これは彼らにとってまさに冒険である。依頼を受けたわけでもなく、報酬が出るわけでもない。  むしろアドラスはそこが良いと考えていた。依頼だから行ったでは、期限や行動に制限が生まれて冒険としてはどこか不十分になる。個人で行くのなら、そこを気にする必要はない。  ゆえにこの活動は略奪者(レイダーズ)としてのものではない。アドラスが行きたい時に、アレイオンが付いていく形になる。当然無報酬なので、レイアやコレーは別に付いてくる必要はない。実際にレイアは来たり来なかったりしている。  それを言うならアレイオンにも義務は無いが、アレイオンはアドラスと共に行くことを疑うこともなく付いていく。二人とも話し合いすらせずに、互いに準備して自然と出発するのだ。 「なんとなくだが、アタシの故郷の歯車遺跡とは趣が違う気がするわね。古代人って地域差あったのかしら」 「アルゴスにもあるんだな。当然といえば当然か。遥か過去に国境がどうだったかなんて知らないし、考えるだけ無駄だな。……地域差というよりは施設ごとに役割が違うんじゃないか? 俺たちだって武器庫や厩舎をわざわざ建てるものだし」  それにどういうわけかコレーが付いてきていた。腕は立つ上に、きちんと頭に血が巡っている戦士なので手伝いは歓迎されている。アドラスも気にしていないので、悪意は無いのだろうが……彼女が同行してくる理由がアレイオンには気になった。 「コレーは歯車遺跡に興味があるのか?」 「アタシはなんにでも興味はあるの。だから冒険者になったのだけれど……まぁ冒険者らしい冒険者っていないものなのね。依頼で無いと動かない人たちの多いこと。その点、あなた達は結構良い線行ってるわよ?」  その気持はアレイオンにも分かった。報酬目当てなのが悪いわけでは無いことも分かっている。アレイオンはアドラスと共にあることが報酬なので、こうした真似ができるに過ぎない。  前からアレイオン達を呼ぶ声が反響して響き渡る。アレイオンとコレーは目を合わせてから、小走りすることにした。  

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