リバース・ウィッチ

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第二話 二つの世界

 通路を歩いていくローラとキョウカ。キョウカはローラの後に付いていくだけであったが、ローラの様子がどこかおかしかった。  というのも、ローラが通路の十字路に差し掛かるたびに、キョロキョロと辺りを見渡しているのだった。 「……もしかしてローラさん、迷いましたか?」 「えっ?」  びくりと肩を奮わせるローラ。  踵を返しキョウカの居る方を向くと、両手を振りながら、 「いやいや、そんなことないって! 確かにここの通路は迷いやすい構造をしてるんだけれどね……」 「でもここ、さっきも通りましたよ。正確には三回目ですかね」  それを聞いて、何も言わずに向き直るローラ。 (だったら最初から言えっつーの)  そう心に留めておいて、ポケットからスマートフォンを取り出す。 「しゃーない。やりたくなかったんだけど……」 「?」 「あら、ローラちゃん。こんなところで何をしているの?」 「げっ」  ローラがその声を聞いて、思わずそんな声を上げた。  十字路の右手側、その通路に立っていたのはスーツ姿の女性だった。腰程まで長い金髪が目立ち、顔立ちもモデルみたいに整っている。  その女性は何処か気怠げな様子で電子煙草を加えながら、そこに立っていた。 「……れ、レイラさん……。いったいどうしてこんなところに……?」 「それはこっちが聞きたいのだけれど。到着予定時間を十五分もオーバーして連絡もなし、って。しかもGPSを見るとここに居るみたいだし。だったら迷っているしか選択肢がないかな、って」 「いやー……ご明察ですね……」 「で、そっちが新入りか」  レイラと呼ばれた女性は、キョウカを一瞥する。 「……どうも」  軽く会釈すると、レイラは頷く。 「集合時間はとっくに過ぎている。急いで向かわないといけないぞ」 「分かりましたよ、レイラさん」 「あとな」  レイラはそう言ってローラの頭をごつっと軽く殴った。 「いてっ」 「私のことは司令官と呼べ、と研修のときから何度も言っていたはずだが?」 「あ、はい、そうでした……」  何だか力関係を目の当たりにしてしまったであった。    ◇◇◇ 「改めて自己紹介と行こうか。私の名前はレイラ・スチュワート。この『地下世界ロンドン』を管理する『魔女旅団(ウィッチ・ブリゲード)』の司令官……管理者を務めている。まあ、宜しく頼むよ。君は……ええと」 「キョウカです。水沢キョウカ。日本からやって来ました」 「ああ、そうだったね」  レイラとローラが隣同士に座り、机を挟んで向こう側にキョウカが座っている。  ここは会議室――のような大きな部屋だった。壁際にテーブルや椅子が積み上げられているところを見ると、普段はそれを使って会議などを執り行うのだろう。 「単刀直入に聞こう。……君は、この国の『魔女』についてどれぐらい理解を深めている?」  それを聞いてキョウカは少し余白を置いたのち、話を始める。 「ええと……この国は魔女の発祥の地でもあります。かつては魔女(ウィッチ)魔法使い(ウィッチャー)に別れていた二つの勢力でしたが、女性の方がより高度な魔法を使えることが分かって、魔法使いは衰退。……今は魔法使いは殆ど存在しないとも言われています。確か、このイギリスに限った話だと思いますけれど」 「ああ、そうでした……。日本には未だ魔法使いが居るのでしたね?」 「というより、日本における魔女が魔法使いに内包されてるんじゃなかった? 日本は政府も表向きには協力してるし、昔みたいに戦争が起きるとも思えないしね。少なくとも、あの平和主義者の国じゃ」 「ローラ、言葉を慎んで。……それで、魔女についての歴史はある程度認知しているようですが」 「?」 「幻獣については……どれぐらい知っていますか?」 「幻獣……ですか」  少し周囲を見渡して、 「正直、頂いたあの手引きで得た知識しかなくて……。日本ではお目にかかれない代物ですから」 「簡単に言えば、幻獣というのは地上世界……私達はそこを『表』の世界と呼んでいるけれど、その世界に干渉出来るこちらの世界の生き物ということです。その名前は、表の世界でも広く知れ渡っていて、一番有名なのは、エルフやドラゴン、それにゴーストとか? まあ、一言で言えば、あちらの世界の常識や知識では片付けられない現象と言えば分かりやすいでしょう」 「で、私達はその管理を行ってる訳」  ローラが口を出してくる。 「管理と言っても難しいことだらけでね。基本的に、直接干渉することは出来ないんだよ。地下世界の生き物が、表の世界の生き物に……ね」 「じゃあ、どうして管理なんてものを?」 「直接手を下すことは出来なくても、間接的に手を下すことは可能ってこと。要するに、あちらの世界で幻獣が建物を破壊したら、建物の中に住んでいる人達は生き埋めになる。そして、あちらの世界ではそれを『原因不明の崩落事故』という風にしてしまう。正式には、こちらの世界から情報を送る訳だから、あくまで表向きにはそういう形にしてるだけで、実際に警察の上層部なんかは知ってるんだけどね」  

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