Destiny×Memories

Silbe3. 〜希望の名は〜

 燃え盛る城内を、その男は走っていた。  事の発端は、小一時間ほど前。この世界の守護者たちが相対する敵……【神】とその配下である“天使”たちが、この地・王都ロマネーナを強襲したのだ。  守護者……“双騎士(ナイト)”たちは城下町を襲う【神】や天使たちの相手で手いっぱいのようで、この城内に入り込んだ天使たちは騎士団が対処していた。  逃げる貴族、戦う兵士たちを横目に、男はひたすらに走る。  遠い遠い過去の記憶を頼りに、たったひとりを助け出すために。  やがて、元は華美な扉がついていたであろう大広間へと躍り出た。  扉は破壊され、中の装飾もただのガラクタへと変貌している。 (あーあ、修復するのにどれくらいの国家予算が吹っ飛ぶんだか)  自身には関係のない話だけれど、と脳内で呟きながら、男は部屋の中心部へと視線を向けた。  ダンスパーティーなどが開かれるこの部屋へと逃げて来たのだろう、そこにはきらびやかなドレスを煤で汚しながらも、護衛と共に毅然とした顔で一体の天使と対峙する女性……ローズライン国女王、アリーシャ・ロマネーナが立っていた。 「“双騎士”に加担するモノ……殺害対象。破壊します」  無機質な天使の声に、護衛剣士がそれをキツく睨みつける。  幸い、天使も護衛も女王でさえも、男の存在に気づいていないようだ。  ならば、と男は鞘から剣を抜く。そうしてそのまま音もなく走り出し……―― 「“双騎士”に加担するモノってなら、オレもそうなるわけか」  そんな言葉と共に、天使を切り捨てた。 「あな……たは……」  きらきらと淡い光を放って消滅した天使を見送って、驚いた表情を浮かべる女王と護衛にくるりと振り返る。  後頭部でひとまとめにした長い薄茶色の髪が、さらりと揺れた。 「……ご無事ですか、女王陛下? ……なんてな」 「……リツ? 本当に……貴方なの、リツ……!?」  みるみるうちにその紺色の瞳に涙を溜める女王。けれど、すぐさまそれを拭い、ありがとう、と微笑んでみせた。 「助かりました。見ての通り、フェリーネ以外の護衛とは混乱のさなかはぐれてしまいましたので……」 「あー……別に、公の場じゃねーんだから敬語じゃなくていいよ。  とりあえず、城から脱出するならオレもアンタを護衛するからさ」  アンタからそんな他人行儀にされると、調子狂う。  そっぽを向いてそう告げると、彼女はふふっと可笑しそうに笑んだ。 「そう……そうね。たったひとりの……家族だものね。  助けに来てくれてありがとう、リツ。護衛、よろしくね」  女王のその発言に、護衛である女騎士……フェリーネ・キュラスが驚いたような声を出す。 「で、ではこちらの御仁が例のアリーシャ陛下の弟君の……!?」 「ええ、改めて紹介するわね、フェリーネ。  彼は“リッゼル・ロマネーナ”。私の大切な弟で……希望よ」  男……リツは幼い頃、前王の時代にこの国から追放された王子で……女王アリーシャの弟だった。  そんな説明をして、ふわり、と花が咲くように、宝物を自慢するように、アリーシャは屈託のない笑顔を浮かべたのだった。  Silbe3. Fin.  Next⇒

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