宗教でスローライフを送ろうと思ったが

読了目安時間:3分

エピソード:2 / 8

第一章 金理教?

一話 訪問

 さて天理教の教会を探すと言っても当てが無い。 以前訪ねた人とは路上で話しただけだし、その人曰く「私は布教の家の者で1年間だけこの辺りで活動しています」とのことで、今ではその人とも縁が無いし名前も忘れた。  布教の家とやらがどこにあるのかは聞いた気がするが、こちらも忘れてしまった。何せ5年以上前の一度きりの出来事だ。 断片的にしか思いだせないのだ。 とりあえず「陽気暮らしの天理教」と「人助けて我が身助かる」、そして教祖の名前を覚えてただけでも充分だろう。あとは天理教の黒ハッピを着た集団を見かけた場所に行き彼女達を待つだけだ。  そう簡単に考えていたが、彼女達は現れなかった。 これはマズイ。非常にマズイのだ。 こっちは完全に家を追い出された身だ。携帯も無いので教会どころか布教の家さえ探せない。だが彼女達がここにいたという事は布教の家とやらも確実にこの近くにあるはずで、近所の人なら知っているかも知れない。  とりあえず「中山みきさんの天理教会はどこですか」と訪ねまわる事にした。 だが道行く人道行く人、中々分かってもらえない。日も傾きかけた。もしかして、そもそも彼女達が集まっていた場所はこことは違った場所だったのでは? そう思い始めた矢先、一人の老人から「ああナカヤマさんの金理教ね」との答えが帰ってきた。天理教でなくキンリ教との表現に違和感はあったが、今はそうも言っていられない。わずかな手がかりでも欲しいのだ。それに相手は老人である。おおかた天理をキンリとでも聞き間違えて覚えたのだろう。 「その中山さんはどこですか?」 今振り返ればこの聞き方も良く無かったのたかも知れないが、当時はそんな事も言っていられなかった。 「ナカヤマさんの家ならあそこだよ」 老人の指差す方向を見れば何の変哲もないただのボロい一軒家がそこにはあった。間違い無く布教の家なんかでは無いだろう。何せ彼女達は寮生で複数人共同生活をしていると言っていたからだ。 まあいい、お寺でも小さな所は小さいし、案外街中の教会も土地が高くて小さい物かも知れない。 ともかくまずは交渉して泊めてもらえさえすればこちらとしては有り難いのだから。教えてくれた老人に礼を言うと「なに、かまわんよ。お前さん、身なりも良さそうだし」と言われそそくさと立ち去ってしまった。  確かに追い出された身とは言え、今日の出来事だ。身なりはそれなりに整っているだろう。しかしそれと天理教とに一体何の関係が?むしろ崩れている程困っていそうに見えて助けたくなるのでは? そんな疑問も浮かんだが困っている事は事実なので今すぐ助けてもらわねば。だがあんなボロい家で果たして経済事情は大丈夫なんだろうか。 いや、今はそんな事は気にしちゃいけない。ダメ元で必死に懇願すれば一夜ぐらい何とかしてくれるだろう。そこで布教の家だかの情報を仕入れれば良い。そんな想いでその家を訪ねたのだが「天理教」の看板すら無い。ただ表札に「仲山」とあった。  あれ?人偏なんてついてたっけ?それに仲山だったとしてもそれは教祖様の名前では?騙しやがったか!あのクソ爺い! しかしもう本当に日が暮れそうだ。それに今は真冬なのだ。これ以上は後が無い。 クソ〜、よりにもよってこんなタイミングで騙しやがって。次見かけたらどうしてくれようか! そう思い始めたらだんだんイライラは募っていくが、既に凍てつく寒さにそれもすぐさま遮られた。  そうだ物事は良い方向に考えなきゃいけませんと天理のかわい子ちゃんも言っていたではないか。たまたま教祖と同じ名前なのかも知れないと考え始めたところ、突然扉が開いた。  「金理教へ、ようこそおかえり」

金理教なんてもちろん実在しません。たぶん。

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