死なずのジャック

このエピには主人公がピンチになる描写が含まれています

 再登場キャラ(つかいまわし)なんか敵じゃねえ。  たとえ相手が人でも、すでに一度勝った相手に怖気づくことはない。  まずは武器を確保しよう。  山賊の一番手前にいる奴の膝の皿を正面蹴りで破壊して剣を奪うか。膝を蹴り抜けば即座に人減る。  狙う相手を見たりしない。別の山賊に視線を飛ばし、そっちに飛びかかるふりをしてパシュッと正面蹴りを放つ。    空振った!  砕かれるはずの膝の持ち主は、俺の狙った座標に膝をもってくることなく、射程外に退()いていた。  フェイントまでかけたのに当たらないのは残念。しかし、戦いの場では些細な理由でこういうはずれ(・・・)はある。  ポジティブシンキング。次だ次。  背後からザワーグの斬撃。ハーフトロールの長身をいかした振り下ろしは当たれば真っ二つだ。  だがこのくらいは(かわ)せる。  スパッ 「なっ」  俺の額から鼻をザワーグの剣先が撫でていった。ピピッと血が噴く。  ザワーグの後に来るのは相棒のフトーチョの足払い剣。読んでる。三度目の戦いでそれを食らうほど素人じゃねえ。  下払いは武器の腹か柄を踏んづけてやれば止められる。そこを目がけて斜めにキックを放つ。うまくいったらもう片方の足で手首の骨をへし折る。  今度は当たった。フトーチョの剣の腹にブーツの踵が乗った。このまま奴の側頭部を蹴り抜くことにした。 「ちょっ」  フトーチョがニチャアと笑うと俺のブーツで止めたはずの剣をおもいっきり上に持ち上げた。  軸足をすでにテンプル(こめかみ)狙いの蹴りを撃つため地面から離していたこちらの体は剣の上昇の勢いのままに宙に飛ばされた。  俺の体重ごと剣を持ち上げただって!?  ハーフオークといえどそんなパワーあるわけがない。しかし、事実だ。  受け身をとりそこねて左肩をひねった。ちっ。  肩をおさえた右手ごと飛来した矢で射抜かれた。山賊もぼーっとしていたわけじゃない。  残りの山賊が俺の退路を塞ぐ。前向きに撤退もゆるされんのか。  山賊のひとりが俺の予想を上回る速さで俺の左上腕に切り傷をつくる。  ね、ね。これ俺ピンチじゃね?  再生怪人は弱いの法則が無視されてますがー!?  ネット小説で、俺ほどいつも追い詰められたり、致命傷受けてる主人公はいない。(と思う)  少しは胸がスカッとする主人公無双やったらどうよ。  突然、時間停止能力を獲得するとか、お父さんのサイフを泣かせる金や銀の色したゴテゴテチートガジェットを手に入れるとかさ!  …… ……  誰も答えてくれないので、涙目で考える。  この作品の主人公はすべて自己解決なんですぅ。つらいですぅ。作者は変態ですぅ。  人は明らかに以前より強くなっている。俺のフェイントを読み、攻撃はスピードアップし、パワーも跳ね上がっている。連携も巧みだ。  どうしてとは考えない。現実を嘆くな。  何があったか冷たく考えろ。これからやれることを選び取れ。  ハーフ亜人(デミ)らと茶屋でハートフルコミュニケート(ボコボコに)してから。  パオロ一家を襲撃した山賊どもを捕縛してから。  まだ一日ちょっと。特訓しても追いつかない。  異常な戦力ブーストは外的な要因に絞られる。ヘンなおくすりのんだか、もうひとつ。  俺は腰のランタンを掲げ、輝度を急激に高めた。決めゼリフ言うなら「愚者の火(イグニス・ファトゥス)よ、邪なものを照らし出せ」あたりか。言わないよ、そういうキャラじゃねえもん。  どんなに戦闘力ブーストしてても網膜は鍛えられない。ランタンの光で生じた隙をついて、敵包囲網を四足獣のように跳び抜ける。 「どうせこれも祝福なんだろうがよぉっ!」  十字路の左側の道で様子を見守っていた神官の前に着地。  驚愕の表情を貼っつけた顔面の斜め下、肋骨の間から心臓に矢をねじり入れた。  俺の左肩と右手を貫いてたものだ。敵がリサイクルなら、こっちの武器もリサイクル。 「おおかた他人の運動能力を爆上げする祝福ってところだろ。ネオ!」  他人を強くはできるが自分にはできない。祝福は万能の力ではないようだ。  白い服地に赤いシミがひろがり、ネオは斃れた。  放たれた矢は首を傾けるだけで彼方へ飛んでった。山賊人が繰り出す切っ先もさきほどとはうって変わってトロい(・・・)。 「分析は大当たりだ。ステータス向上時間(バフタイム)は終わっちゃったみたいよ、君たち」  怪我も治ってきたんでいきますか。  金的(オラッ)頭突き(オラッ)  マイナス。  必死さが伝わる足音二組が遠ざかっていく。フトーチョとザワーグは夜闇にのまれていった。ぜってえレギュラー化狙ってんだろ。  マイナス.  残った人の山賊は顔つき合わせて、やぶれかぶれの攻撃をするか逃げるかを相談していたが、 「魏! 呉! 蜀!」  三国志パンチに沈んだ。 ん、三国志ってなんだ?  取り上げた山賊の剣の峰で肩をポンポンと叩きながら、十字路の右の道に残った神官に微笑みかける。 「さて、ジオ。お前はどんな祝福を使うのかな~」  奴はこれでようやく対等だとでもいった余裕に満ちた態度で同じく微笑んだ。 「大きな間違いを犯したな」 「あん?」  顔は冷静、内心は少し動揺。  こいつがどんな祝福を使うのか知らんわ。手に負えない力だったらどうしよう。 「あなたが斃したのはジオ。わたしがネオだ」  ハッハッハと笑う神官は、十字路の向かって右、俺が追ってきた方向から飛んできた火球に黒焦げになった。 「何モタモタしてんの! ガブ理恵とジョナをさらった奴は!?」  怒りで暗い眼したメフィス子さんが火球のあとから走ってきた。やべえ、マジでお怒りモード。 「あっちです。神殿」  指差すと、メフィス子の背後の空間を右から左に  使えねえ奴  のコメントが流れ、彼女は神殿に向かって走り出した。俺も慌てて後を追う。  おい、俺はタイトルどおりの状況だったわけでだな。  ……ネオだかジオだかの祝福ってどんな能力だったんだ。ま、いっか。  ガシャン、ガシャンと遠くから甲冑の音も追ってくる。  昼間は壮麗な白亜の大建築物だった神殿は、夜の闇の中では何か巨大な邪神めいたものに見えた。    

このたび、ファル様(https://novelup.plus/user/152274109/profile)のノベプラ他薦推奨運動にて、本作を取り上げていただきました。 https://novelup.plus/story/712178261/718597199 ありがてえ、ありがてえ。 (ファル様、拙作を読んで紹介していただきありがとうございました) ノベルアップでかなりの作品を読ませていただいてますが、面白い作品が集まってると思います。 併せて自分の創作がどれだけ未熟なのかわかって勉強になります。みんなすごいよ。

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