死なずのジャック

(これまでのあらすじ) 放課後に部室でお菓子とお茶を楽しむだけで、肝心のクラブ活動はほったらかしの悪党部。 恋におしゃれにおしゃべりと、殺戮してる時間なんてないなーい。 そんなある日、学園理事長の夜叉王院かれんは「インターハイに出場できなかったら廃部」と宣告するのだった。

清楚枠ヒロインを〇す

 翌朝までぐっすりといきたいところだったが耳元でばかでかい音がしたらそうもいかない。 「なんだ? オオカミの襲撃か、空飛ぶサメが降ってきたのか」  ゴートさんが何かと戦っていた。  焚き火は消しているので、枕元のランタンのシェードを開いて照らしてみる。  意識を失っているヤギヒゲはともかく、メフィス子のやつはこれだけ近くで戦闘が起きてても起きやしねえ。  これは悪魔すべてがそういうものなのか、メフィス子個人がそうなのかはわからない。わからないがたぶん後者。 「序盤で影薄いとヒロイン枠とられますよー」  ( ˘ω˘)スヤァ  だめだこりゃ。  俺はランタンをかざしながらゴートさんの方へ向かった。  地獄闘羊横綱でいらしたゴートさんが本気で戦っている相手とはいったい。 「神々の御名において命じます。地獄のけものよ、ここはあなたのようなものがいて良い場所ではありません。おさがりなさい」  ん、神聖(かみ)臭いぜ。しかもこの物言い。   雲の上の世界でキャッキャウフフ飛び回ってたあいつら。白い長衣に白い翼。まちがいない。 「上級天界国民(エンジェル)か!」  メ゛エ゛エ゛エ゛  ゴートさんは横綱の名にかけて天使に対し、一歩もひかずに闘志をむき出しに奮戦していたが、天使は翼をはためかせてゴートさんの攻撃が届かない上空を華麗に舞う。 「何しに来やがった」  俺に気づいた天使はホバリングすると、金色の瞳をこちらに向けた。うぉ、まぶしっ。 「死なずのジャック。その名を口にするだけでおぞましい神々に疎まれし者」  輝くブロンドの髪に包まれた清楚な美しい容貌はどのパーツも非の打ちどころがない。  やや小柄だが均整のとれたバディも「デュフフフ、マジ天使」モンである。  信仰心の篤いやつだったら、地べたにひれ伏してその清らかな威光を畏れるだろう。  しかし、俺は彼女が言うとおり天の奴らから嫌われているんで、真っ向から睨みつけてやる。 「天使自ら俺を殺しに来たのか?痛くしないなら歓迎するぜ。いい加減放浪にも飽き飽きしてたからな」  これはガッツリ本音。  俺は死に場所というか死に方を求めて旅している。  俺を殺せる武器、殺せる薬、殺せる魔法、殺せる超強敵。なんでもいいから『死なず』の呪いを解く方法を探している。  そして、なぜメフィス子が俺に同行してるか。  俺はメフィス子を騙して、俺が地獄に落ちないように契約した。  それは地獄のお偉方にとって怒り心頭の不祥事だったらしく、その責任をとるかたちでメフィス子は地獄(しょくば)を追われたんだ。  『死なず』が究極のチートだと思ってた過去の俺。  実際は、天界にも地獄にもいけない『死なず』は祝福ではない。究極の呪いだったんだよ。  死ねるなら本望。天使ならできるかもしれない。 「無理なことを言わないで下さい。あなたを殺すことは不可能です」  ん、ダメか。 「そこをなんとかならないかな」 「無理なものは無理。私が滅ぼすのは、あそこで熟睡している女悪魔です」  天使はメフィス子の寝床に顔を向けた。 「メフィス子のほうかよ」  話が変な方向になってきた。天使と悪魔は宿敵同士なのはわかるが。 「悪魔は地獄にいればいいものを、神々が創りたもうた地上を我が物顔で歩いていることを天界が、いいえ、私が許しません」 「いやさ、メフィス子にも事情ってものがあってだなー。あいつはあいつでつらい立場なんよ」 「天使は秩序の守護者。混沌の存在を看過することは神々の掟に逆らうことになります」 「天使だったらなおさら広く深い慈愛の精神で見逃してやってくんねえかな」  悪党の俺さまが天使なんぞに頭下げるのはむかつくんだが、神の敵に対する天使の容赦なさはマジパねえのは有名だ。  メフィス子もかなりの実力者だが勝てるかどうかわからん。しかもこの状況でまだ爆睡してるアホだ。  ゴートさんやヤギヒゲだって巻き添え食ったら確実に死ぬ。死なないのは俺だけ。 「メフィス子の作る飯は激マズで、俺が剣でぶっ刺されててもスルーするくらい悪魔道に忠実なやつでお仕置きは必要だって思うこともある。でも、こうなっちまったのは俺にも責任があるんだ」 「あなたの話は私の右耳から左耳に抜けていきました。ではこれより神聖な任務を遂行します」  こいつもスルースキルすげえな。悪魔と変わらん。  天使は背の六枚の翼を扇のように広げた。昇り始めた太陽の光を受けて、黄金色に輝き始める。  これ、すげーのブッパする気だぞ。  俺はゴートさんの足元まで身をかがめて走った。これしかねえ。  そのままゴートさんの背中に駆け上がり、 「ゴートさん、いっちょお願いしますや!」と合図。  ゴートさんは闘羊横綱のパワーで俺の体をはね上げ、俺も全身をばねにして跳んだ。  目標、融通利かない天使(美少女)!  視界に黄金の輝きが迫り、俺は斜め下から天使に組み付くことに成功した。 「きゃっ。何をなさるのですか」 「ゲへへへ。石頭の天使ちゃんにお仕置き」  天使様は悪党のゲス顔を至近距離で見て、繊細な細工の美貌を嫌悪にゆがめた。 「どろんこ美容知ってる?」  俺はゴートさんの足元にこんもりしていた黄金(・・)(特殊業界の隠語)を黄金の髪に包まれた両頬に塗り付けた。ペタペタ。 「え、こ、これは……!?」  高い鼻梁がひくつく。きっと彼女はこんなにおい嗅いだことないんだろうな。 「うん〇、臭いね」と俺ニッコリ。 「きゃあああああああああ!」  絹を引き裂くようなってこんな悲鳴?  アニメならこのシーンはモザイク確定。大丈夫だ、ありえねえから!  地上の黄金をもって天上の黄金を制す!   二重の意味で汚えだと? いいんだよ、属性:(ワル)だぜ俺は。  登場したその回でヨゴレになる清楚枠ヒロインってのも斬新すぎね?   誤解しても構わねえし、誤解しないでもいいんだが(どっちだよ)、俺はこの美少女天使がメフィス子を一方的に滅ぼすのを見過ごせなかったんだ。  だから、清浄な天使パゥワーをいっときでも無効化させるために、最善で最悪の手を使ったまで。  インクレディブルゴールド!  …………ちょっと必殺技ぽく叫んでみた。う〇こだけど。  案の定、神聖力を喪った天使様はパニくって地上にて落下し始めた。  そんな堕天使をお姫様だっこして、ゴートさんの背中に着地する俺。ヒーロー! 「横綱のおかげで勝てました。ごっつぁんです」  満足そうにメエエエと鳴くとゴートさんは元の小さな置物になった。退勤時間ぴったり。働き方改革。  野盗どもの荷物入れからとってきた適当な布切れを水に浸して、失神している天使の顔からアレを拭き取った。  悪党は勝つために手段は選ばないが、基本女には優しいんだ。少なくとも俺はそのつもりだ。  そんなことしてるうちにようやくメフィス子が起きて、ヤギヒゲが長い失神から戻ってきた。 「あ、何その女」  メフィス子は寝起きが悪い上に、俺が介抱してるのが悪魔の宿敵の天使だと知ってまなじりを吊り上げた。 「メフィス子、おっまえよー、あの状況でよく寝てられんなー」  簡潔に状況を説明すると、当然でしょって顔して 「だって熟睡しないとお肌が荒れるじゃない」ときたもんだ。  元の美貌を取り戻した天使の顔を覗き込んだメフィス子は文字通り悪魔のように微笑んだ。 「この女、天使ガブリエルじゃない。前から杓子定規な清楚系で気に入らなかったのよね。制服で高校選ぶような女のくせしてさ。そうだ、ご自慢の天使の翼を封印しといてあげましょっ」  メフィス子の呪文が続くにつれガブリエルの六枚の翼は小さくなり、最後は背中に潜るように消えてしまった。 「これでもう天界へ帰れないねー、プークスクス。ザマァ。あー、なんかまだ臭うけど空気がおいしいー」  グレート悪魔だぜメフィス子さん……。 「ん……」  長いまつ毛が震え、ガブリエルが目を覚ました。残念ながらここはラグジュアリーな寝室じゃない。悪党の野営地だ。  きょろきょろと周囲をみまわし、白いすべすべの手を口に当てて、事態を察する。 「あ、あなたたち!え、え、翼が封印されてる!」  神聖な力の源は翼だったのか、ガブリエルは特に術を使うでもなく体を強張らせた。 「あのー、さっきは悪かった。でもちゃんとキレーイに拭き取ったから安心しな」  俺は布切れを見せた。 「ねえボス、それあっしが夕べまで履いてたパンツ……」  背後から聞こえたヤギヒゲの言葉に、天使ガブリエルは長い悲鳴をあげたあと再び意識を失ったのだった。

以上、清楚枠ヒロインを汚す、でした。 ジャックの目的が書けてよかった。 死なずのジャックをあっさり殺す方法は一つあります。誰も読まず、誰も反応せずにいればいいのです。(筆折り死) 生かすも殺すも読者次第だ。 作者は開き直った。

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  • 女子高生

    操兵ワールド制作委員会

    〇100pt 2019年9月9日 3時08分

    群狼伝は最近完結して、今は1092の続きを書いてるらしいですよ!多分、遠くないうちに神樹編の続刊が出るかと('ω') ジャックは文字通りの不死身なのですね。呪いを解くために旅してたのかー。にしても戦い方がとことん外道ですw

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    操兵ワールド制作委員会

    2019年9月9日 3時08分

    女子高生
  • 探偵

    毒島伊豆守

    2019年9月9日 8時57分

    コメントありがとうございます! 1092再開ですか、楽しみだなあ。 ジャックはハートフル外道です

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    毒島伊豆守

    2019年9月9日 8時57分

    探偵
  • 殻ひよこ

    今晩葉ミチル

    ♡300pt 〇10pt 2019年8月5日 21時17分

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    追いかけがいがありそうだ

    今晩葉ミチル

    2019年8月5日 21時17分

    殻ひよこ
  • 探偵

    毒島伊豆守

    2019年8月5日 21時27分

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    ありがとうございます!

    毒島伊豆守

    2019年8月5日 21時27分

    探偵
  • 女子高生

    ゆうきたけまる

    ♡200pt 〇10pt 2019年8月16日 12時06分

    以前拝読した時も思いましたが、この話いい意味で酷いなぁwこの必殺技だけは絶対に喰らいたくないですw序盤も序盤でこういう話を出せる度胸とセンスに脱帽です(*´∀`*)

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    ゆうきたけまる

    2019年8月16日 12時06分

    女子高生
  • 探偵

    毒島伊豆守

    2019年8月16日 17時05分

    黄金体験を出すこと自体が子どもっぽいセンスだと自覚してるんですが、誰もやらないことに挑戦したかったので書きました。この後もアホか言われることが多々出てきますが呆れないでください 応援いただきありがとうございます!

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    毒島伊豆守

    2019年8月16日 17時05分

    探偵
  • ひよこ剣士

    穂村緋彩

    〇5pt 2019年8月28日 21時08分

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    グッジョブ!

    穂村緋彩

    2019年8月28日 21時08分

    ひよこ剣士
  • 探偵

    毒島伊豆守

    2019年8月28日 23時44分

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    ありがてえありがてえ

    毒島伊豆守

    2019年8月28日 23時44分

    探偵
  • ユーシャ(えんどろ~!)

    浅田コウタ

    ♡700pt 2019年7月3日 22時35分

    インクレディブルゴールド! 恐るべき技が発動しましたねw 読んでいてとっても面白いです!

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    浅田コウタ

    2019年7月3日 22時35分

    ユーシャ(えんどろ~!)
  • 探偵

    毒島伊豆守

    2019年7月3日 23時23分

    浅田さん、お読みいただきありがとうございます。面白い、なんと書き手心を奮わす言葉でしょうか。嬉しいです

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    毒島伊豆守

    2019年7月3日 23時23分

    探偵