死なずのジャック

濃い味が続いたので今日は清涼な口直しの一篇。

クライマックスにしたい章

さわやかにファンタジー

 チューボスの街から北を目指す。舗装されていた街道はじきに踏み固められた土になり、街道の左側は大河、右側は雑木林と単調な景色が続く。  あー、15万ゴルドもらうついでに馬も頭もらっとけばよかったと後悔。  荷車+ガブ理恵を牽引する役からエグエグを解放できたのに。  まあ、こいついまいちキャラ薄いから役目を与えておいたほうがいいか。 「なあ、エグエグ。チューボスでお前に喧嘩ふっかけてきたハーフオークとハーフトロールってお前とどういう関係なん?」  エグエグの父親が孤児の奴らを善意で拾ってきて飯と寝床を与えた偽善、いや心が温まるエピソードは聞いた。  普通は恩こそ感じるはずが、エグエグに向けるあの敵意と嘲ろうは普通じゃなかった。  鎧バカで融通が利かないエグエグは基本的に善人だ。正直で義を尊ぶ。  あれ、なんでこんな自分と真逆の性格の男を連れているんだ俺は。 「フトーチョとザワーグでござるか。貴奴らめが我がヤッチマイナー家に連れてこられたのは庭に霜柱がたつほど寒い朝であり申した」  遠い目をしながらモノローグに入ろうとするエグエグ。 「あー、長くなりそうだしやめやめ。チューボス編が各話軒並み,000字超えてて、みんなちょっと胃もたれしてると思うから。今日は短くあっさりだ」 「拙者の昔話は需要ないでござるか……」 「長い過去編はそびえたつ〇〇(クソ)だって知ってる?」  うなだれたエグエグの荷車+ガブ理恵を引くスピードが心なしか遅くなった。  鎧のきしむ音が風に乗って川の水面に流れていく。 「ジャック。ガブ理恵はそろそろおなかがすいてきたよ」 「そろそろお昼にしましょぅかい。あっしがチャチャっと麦粥でも作りやしょう」 「それ飽きたー」  容赦ない一言に炊事係の目に一瞬の殺意がはしる。 「このダメ天使は自分じゃなにひとつ作れないくせに贅沢ばかり言って」  メフィス子はライバル天使をdisるためなら平気でヤギヒゲの肩をもつ。 「みなさんおなかがすくとイライラしますものね。私は食べる必要がないのでイライラとは無縁ですわ」  宙からクラリッサの声だけが届く。 「姿が見えないついでに声もださないどいてくれるとありがたいわ。幽霊」 「……ひどいですわ。ジャック様、こんな口の悪い悪魔と早く縁が切れるといいですね。『死なず』を解除できたら一緒に天に昇ってキャッキャウフフな新婚生活を送りましょう」  『死なず』解除したら即死するみたいな言い方やめてくんない! 「そのあたりの誰も通らない土地に縛り付けて永遠に地縛霊にしてやろうかねえ」 「ジャック様、この悪魔怖いです。幽霊の人権を守ってください」  悪党に人権意識はねえよ、クラリッサ。 「あー、ガブ理恵お昼はあのお店で食べたい」  パッと輝いた顔でガブ理恵が見つけたのは川辺に建つ茶屋であった。 「茶屋か。みたらし団子に安倍川餅、おしるこも悪くねえなあ」 「ボス、設定無視してます?」 「よし決めた。昼はあの茶屋で休憩だ」 「わーい。ジャック大好きー」 「うっ」 「げっ」  茶屋の軒先に出た赤いきれをかけた長椅子には先客がいた。それも一応顔見知り。  チューボスの乱戦から逃亡したフトーチョとザワーグであった。  俺とエグエグから発せられる強烈な殺気に、食後のお茶を持ってきた茶屋の主人が盆から湯飲みを取り落とした。 「てめえら、よくもまあこんなところでのうのうと」 「先日貴公らから受けた屈辱を拙者は忘れてはおらんぞ……」  奴らの横にはたいらげた餅や団子の空き皿が数十積み重ねられてた。  人の腹は甘味でぽっこり膨れ上がり、ザワーグなどは皿にこびりついた餡子をベロベロと舐めとっている。 「お、おうエグベード。この前はなんかよ、あまりのなつかしさについつい言い過ぎちまったんだ」 「あんたぁ、あんの有名な死なずのジャックだったたあ、おっどれえたぜ」  すっかりくつろぎモードの人は、膨らんだ腹を締め付けるベルトを愛用の武器ごとはずしてしまっている。  どんな馬鹿でも丸腰で、殺気ギンギンの俺たちと戦おうなんて思わない。 「俺、お前らにざく切りされて痛くて痛くてなー」 「拙者とヤッチマイナー家に対する侮辱をここで永遠に断ち切ってくれようぞ」  じりじりと近づくエグエグ。 「もうおれたちゃぁ憲兵隊じゃねえから」 「丸腰の相手を斬るのかよ、誇り高いヤッチマイナーの若殿が」  もともと緑っぽい顔色をさらに緑を濃くして 「エグエグ任せたぜ。おう、おやじぃ、みたらし団子タレとあんこ10本ずつ、安倍川餅10個、おしるこ人前だ」  俺はフトーチョとザワーグの顔にブーツのつま先を叩き込んで長椅子を空けさせた。積んだ皿が崩れて何枚か割れる。  茶屋の主人は蒼白な顔で 「それが旦那、今のお客さんに出した分で餅も餡子も品切れなんで……」  と言うだけ言ってガタガタ震えた。 「んだと」  ジャック、怒りの三白眼。 「貸せ」  エグエグの大剣を鞘ごと奪い取る。 「俺の甘味気分をどうしてくれるんじゃっ!」  大剣で殴る、打つ、叩く、はじく。 「これは団子タレ味の分、餡子味の分、安倍川の分、しるこの分、ガブ理恵の分、俺の分、33話記念の分」  ハーフオークとハーフトロールの悲鳴が聞こえなくらいの滅多打ち。  メフィス子ですらひいてた。  エグエグが俺を羽交い絞めにした。 「ジャック殿、これ以上はっ」 「るせー! てめえの分もこれからぶち当てるんでえっ」 「こやつらは畜生にも等しい悪人。しかしながら地獄へ送るときは拙者の剣で首を刎ねるが筋というもの!」  フトーチョ、ザワーグともに全身が膨れあがり醜い草餅みたいになっている。 「早く去れ。次ははないと思え」  ハーフオークとハーフトロールはしりもちをついたままずりずりと俺から離れ、安全な距離を確保すると雑木林の中へ逃げていった。 「あいつらの武器、川にぽーい」  ボヂャン ジョボンッ 「チンピラの武器だけあって音まで汚いわね」  メフィス子はけがわらしいものを触ったと言わんばかりに手をヤギヒゲの背中に擦り付けた。  フトーチョらはお会計前だったらしい。割れた皿は奴らに弁償させろと主張し、俺は何も食えなかったから銅貨枚払わんと言って、茶屋を後にした。 「ご主人、たちなおれますでしょうか。心配です」  右から左。 「フトーチョにザワーグ。またどこかで会う気がしまする。その時こそ拙者が」  荷車牛が決意を新たにする。 「少し(・・)暴れたんで腹ぁ減ったな」  運動後の火照った顔に川風が気持ちいい。  今日はさわやかにファンタジー(バイオレンス)したな! 「ボス、今こそあっし得意の麦粥の出番でげしょ」 「ガブ理恵、甘いものじゃなきゃやだー。麦粥ぶーぶー」 「みなさん、切り替えが早いのですね……私も慣れないと!」

ラブコメ出身、ファンタジー書くのは2回目なもので勝手がわかりません。これでいいのですか? そうそう、私はスタンプもコメントも大好きだよ!

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