鬱情と癲癇

読了目安時間:2分

エピソード:5 / 6

雪とアメジスト

 僕たちはその後も、ずっとカフェで喋った。やがて日も落ちてきて解散になると、僕たちはLANEを交換して、方向的に近い僕と祐稀、香と亜貴がそれぞれふたりで帰ることになった。 祐稀はバスが好きなのだろうか、この時もバスで行こうと言った。バス停で帰りのバスを待っている中、祐稀は言った。 「今日は楽しかったね。特に亜貴のあの話さー…って聞いてる?」  「ごめん、なんか光が見えて…多分今疲れてるんだね…ごめんね、祐稀。僕は祐稀に優しくされるほど、苦しくなるんだよ。何でだろうね。僕だけが闇で、周りのみんなが光みたいでさ。光が昔からトラウマなんだ」  「…大丈夫だよ。ねぇ、私をよく見てみてよ。ちゃんと、怖がらずに。私は、そんなにいいもんじゃないよ」  「…そうかな、」  「私たちは、光源みたいな存在なんかじゃないんだよ。ただ、ここにある光を乱反射して光っているだけみたいな存在なんだ。私たちは凹凸ばかりなんだ。だから、光っているように見えるだけ。私たちが真っ直ぐ過ぎたらお互いが見えなくなるだけだよ。それに、希望の光、正義の光なんてものは私たちの内側から出てくるものじゃないんだ」  「…じゃあ、僕たちって鏡みたいだね。…その鏡の中には、また別の僕がいるのかな。僕の言う、「虚勢」であり、「本当の自分」は、僕の鏡の中にいるのかな」  「鏡に映る自分が理想の自分じゃなくても、残念がらないでね」  「それは大丈夫。だって、鏡の中の自分は僕に逃げ方を教えてくれた。祐稀と逢わせてくれた。それに…僕に、苦しみも楽しみも運んできてくれたから」  「その様子だと大丈夫そうだね。今日も自分から人格入れ替えたでしょ?」  「バレてたんだ…まぁ、そうだね。最近は一瞬意識を失って、震えもなくすぐに切り替えれるようになったんだ。祐稀のおかげだと思う」 「そう…それならよかった。私たちは光そのものじゃないんだ。影もないと、輪郭があやふやになってしまう。だから私たちは光も闇も持ってるんだって思う。私が優しいのだってきみのおかげだよ。いや、私が優しいのはきみにだけだよ」 僕は何も言わなかった。 「…もし、昔のことを思い出して苦しくなったら、私が話を聞くよ。もし、人の優しさで傷ついたら、私が慰めるよ。光も闇も、きみを苦しめるなら、私はいらないから」 「はは…ほらね、やっぱり祐稀は優しい。ありがとうね」 バスがに乗りしばらくして、雪は雨に変わった。雨路を、バスが進んで行った。

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