鬱情と癲癇

読了目安時間:3分

エピソード:4 / 6

ドラキュラ

たわいもない会話が流れていく中で、自分が安堵したのは、祐稀たちは僕と同じなんじゃないかって思ったことだ。祐稀に対する同情と同じようなものなのかもしれないが、そう思い込むと楽になれた。 「こう見えても、なのか分からないけど、昔は私陰キャだったんだよね。祐稀には前にも言ったけど。小学校の頃はいつも独りで日々を耐えていたけど、中学の頃は特にキツくてね…リアルでトイレぼっち飯してたんだよ。高校からは上手くやることが出来たんだけどね…本当、人生何があるか分からないってこういうことかな」 亜貴がそんなわけない、と言いたげに笑いながら愚痴る。祐稀が頷く。香が笑う。亜貴さんこんなやつだったのかと、僕だけばかまじめな顔で聞いている。そんな時間がひたすら過ぎた。 祐稀が僕を見た。 「また、考え事?」 「うん」 「聞きたいの?俺の自分語り」 「私は、聞きたい。なんか気になる」 「う、うん。なんか気になるし私も聞きたいな」 「俺も同じだ」 「そうか、ありがとうな。実は自分は、昔からずっと考えてたんだ。答えが出ないままだったけど。なんでこんなに自分が光を恐れていたかってことを。なんで光を見ると自分は気分が悪くなるのかって。でも、さっき思い出したんだ」 抹茶ラテを飲み干した勢いで僕は話し出した。 「光は、「僕」にいつも牙を剥いていたんだ。いつだってそう、正義の光は「僕」を捕らえるためのサーチライトみたいでさ。…なんて、こんな言い方厨二病みたいでしょ?笑ってくれよ」 誰も笑わない。それでいいと思った。重い話をしたいのではない。ただ、聞いてほしかった。 「で、そしたらそこから虚勢が生まれたんだ。それによって昔は震えが起きた。でも、しばらく経つとそれが目眩に変わった。虚勢が、本当の自分になったんだ。いや、正しく言うと、虚勢と元の自分のどちらも本当の自分になったんだ。でも、それは決して何の後ろめたさも感じなくなったというわけじゃないんだ。いつも自分の身体はどこかに後ろめたさを抱いている。最近になって、身体が思い出したんだ。光という名の恐怖について。 いじめられていたのに理由はないと言ったけれど、それはもしかしたら嘘なのかもしれない。いじめられる方には何の責任もないと決めつけるのは何もしてない傍観者の意見に過ぎないんだ。 だからさ、なんだかずっと心に闇を抱いてたんだ。闇を処刑しようとする光に対抗するためには、本物の闇になる以外無かったんだ。光になるという手は無かった。そうすると、自分は完全に光に溶けて「僕」の存在は消えてしまうから。だんだん自分は世に言う「問題児」になった。それでいいと自分で胸を張っていた。 でも祐稀はさ、なぜか「僕」の心に干渉してきたんだ。自分が本当はただの何者にもなれない弱い人間だって言うかのように。虚勢以外の自分が見られて悔しかったのか、安堵したのか、分からない。 でも、今ここに自分がいるからそれでいいやって思えるんだ。だから…それで、いいんだ」 苦笑しながら、僕はまた口を開いた。 「どう?こんなこと考えてるんだ。変人みたいでしょ?」 「でも、事実なんだよね」と亜貴が言う。 僕はまた苦笑する。 「まあ、そうだね。僕の人生大体こんな感じだよ」 「じゃあ、私と同じだね」 「俺とも同じだ」 「私とも、だね」 ああ、僕たちは一緒なのか。…じゃあ、何が違うんだ?なんでみんなは何ともないような顔で生きていけるんだ? 僕は安堵と不安を、同時に強く感じた。

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