鬱情と癲癇

読了目安時間:2分

エピソード:3 / 6

遮光瓶の中の僕

僕たちは、部屋のテレビを眺めていた。その小さな画面では、どこかの国での戦争を報道していた。もう、何回見たか分からない。 「祐稀は、どう思う?この戦争」 「どっちが勝つかってこと?」 「いや、どちらの言い分が正しいか」 「そんなの、分かってるでしょ?どっちだって正しいよ」 「やっぱりそうか。そうだよね」 「…でもさ、世の中戦争で死んでいく人より自殺する人の方が多いらしいよ」 僕は、苦笑する。自ら死のうとした張本人には何も言う資格はないと思った。沈黙が相槌になると思った。 「そんな悲しい顔しないでよ。きみはもう、大丈夫だから」 分かったように頷くが、やはり僕にはまだ祐稀の眩しさは苦しかった。僕と祐稀は、これでも対等だって言えるのかな。 僕たちは何も言わないまま、外に出る準備をはじめた。外には、雪が降っている。祐稀と経験した何度目の冬だろうか。僕は、冬が好きだ。日が短いから。 「そうだ。私の友達に浮気しないでね。私より可愛いから」 「はは…それは大丈夫だと思うよ」 「思うって…」 僕たちはふたりでいることも多かったが、この日は四人で会うと約束していた。僕、祐稀、香、そして祐稀の友達の亜貴(あき)の四人だ。亜貴とは初めて会う。 近くのコーヒーショップで待ち合わせすることになっていた。僕が抹茶ラテ、祐稀がフラペチーノを注文してふたりで席を探していると、声をかけられた。 「お!いたいた!お〜い!」 「あ、亜貴!久しぶり!」 確かに可愛い人だな、と思った。茶色の短い髪がよく似合っていた。端的に表すなら、「健気」な感じだろうか。男子人気ありそうだ。 そう思ったのに気づいたのか、祐稀が僕を睨んだ。僕は慌てて席に腰を下ろした。 「あ、はじめまして祐稀の彼氏さん!私は祐稀の友達の亜貴です!」 「ああ…はじめまして…」 これは僕でなくてもあるあるだとおもうのだが、友達の友達っていつも微妙な空気になるんだよなって。それにしても祐稀が最近メンヘラ化してきたような気がする。早く香よ来てくれと祈るように僕は抹茶ラテを口に運んだ。 その時、「僕」は一瞬目眩がして、「俺」になった。 「ああ、祐稀がいつもお世話なってます〜」 「オカンか!?」 「なんでオトンでもないんだよ…」 「ふふっ仲良しだね。アツアツだね」 第三者から見たら、僕達は幸せなカップルなようだ。幸せと言われて安心したような、そんな言葉で語られてしまうのが嫌なような気もした。 「本当、仲良いな」 変なタイミングで来たな、と思うより先に気になったのは、香の持っているトレーの上には、カフェラテだけでなくサンドイッチも置かれていたことだ。 「朝飯食ってないのか?それとも昼飯か?」 「…?え、間食だけど」 「胃袋でかいなお前。あ、そうだこいつ香って言います」 「お、よろしく!」 亜貴は香に「よろしく」と言い微笑んだ。 みんな、眩しかった。この日だけは、俗に言う大量生産型のラブコメみたいな感じだった。 でもなんだか、僕だけが置いてけぼりみたいでさ。これでも、僕は外から見たら幸せなのかな。

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  • れびゅにゃ~

    via

    ビビッと ♡100pt 2022年7月4日 15時59分

    《「そんなの、分かってるでしょ?どっちだって正しいよ」》にビビッとしました!

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    2022年7月4日 15時59分

    れびゅにゃ~
  • ジト目ノベラ

    ねぎねぎ

    2022年7月6日 19時41分

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