サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持―

読了目安時間:3分

エピソード:52 / 58

Section3『バーンズの死(後編)』~時系列『現在』~

 ヴィクター・バーンズを殺傷したカイルは続けざまに撃鉄を起こし、回転式弾倉(シリンダー)を回し、右腕フリンにも拳銃を向ける。  フリンは汗を滲ませながらカイルを睨んだ。 「終わりだ、ジャック・フリン」ジョンがエディに向けていたマニアックを背中の鞘に収め、VTOL機のハッチから出てくる。 「貴様のボスは死んだ。ヴィック・バンは崩壊したんだ。あきらめろ……」  ジョンが言葉をかぶせる。背後にあるエディは呆然としたまま、がくっと膝をついていた。  そこまで言ったところで、ジョンは不意に目を瞬かせた。視界に、一本の線が浮かんでいる。  その線の先を追うと地面から生えるように続いていた。砂鉄のようだった。  電磁系の武器か? 見覚えのある光景にジョンは追憶した。  同じような武器を知っていたからだ。  間が流れる。  低く、地の底から湧き出るような嗤いでジョンの思考は中断された。  拳銃を構えるカイルも、状況に頭が追いつかないリックとアダムも目を丸くした。  フリンが嗤っていた。自分のボスが死んだというのに。殺されたというのに。  その事実を噛み締めることも、歯向かうこともせずに、ただ嗤っている。 「なにがおかしい」ジョンが問う。 「甘いな。わかってないのはお前たちだよ。ボスは死んだ? ヴィック・バンは崩壊した? 上出来だ。なにもかもが間違っている。世界の人口の大半が支持しているボスが、ただで死ぬと? 違うな。ボスは自らの死すらも利用する男だ」  フリンは余裕の表情を取り戻していた。 「飲料水に混ぜた物で世界は変わるもんじゃない」ジョンが言う。  カイルは何の話だという視線をジョンに投げたが、ジョンは黙って鋭い目をフリンに向けたままだ。 「そうだな。しかしヴィクター・バーンズという概念は民間に遺り続ける。もはや止められない」  フリンはそこまで言ったところで、砂鉄のつながっていくどこか遠くに目線を投げた。  ジョンがその先を目で追うと、空港の建物の屋根にきらりと光るものが見えた。  照準器の反射光か? ジョンとカイルが同時に思った。そして唐突に得体のしれない恐怖感が二人を襲う。  ジョンはハッチにいるエディに飛びつき、伏せさせた。  カイルはなにかを回避するように、地面に伏せた。  とてつもないコンクリートでも振動させる轟音がとどろき、ジョンの、カイルの視界が真っ白になる。  延々と続くかのように思えたその光は、いつの間にか収まっていた。 「電磁(ダヴィド)……」カイルが言う。 「狙撃銃(スリング)……?」ジョンがカイルのつぶやいた単語を完結させた。  回復していく視界にあったものは、リックとアダムの手足のパーツ。鼻孔を満たすのはタンパク質の焦げたにおい。  フリンの姿はなかった。逃げたらしい。  目をこすって目の前にある光景を見ようとするエディにジョンは「見るな!」と鋭く飛ばした。 「クレア! エディを機内にもどせ!」ジョンが無線機を取り出しながら待機している部下に指示を出す。 「ハーヴ・チームは予定変更。総員、速やかにレコングルフ空港に集結せよ!」無線機に叫ぶ。 〈了解だ〉とハーヴの返事を聞いたジョンは、カイルに視線を向けた。 「無事で良かったですよ、カイルさん」ジョンは笑みを浮かべながら言う。 「こっちのセリフだ。もっと良い状況で再会したかったんだがな」皮肉交じりにカイルも笑った。  ジョンは表情を険しくし、「今の武器……」とつぶやく。 「ああ、間違いない。ダヴィド・スリングだ」カイルも苦虫を噛み潰した顔をする。 「ミラが洗脳処置を施された?」 「俺も同じ考えだ。だが、実際に会ってみないことにはな……」 「とにかく、狙撃ポイントを特定しましょう。たぶん一三時の方向です」  周りを見て言うジョンに、 「あぁ。まぁその前に『例のアレ』をくれないか?」  とはにかみながら小声で言う。  ジョンは黙ってポケットから『例のアレ』を出しカイルに差し出す。  カイルはそれを咥え、自分のライターで火を灯した。  紫煙が周りを舞う。 「よし、作戦開始だ」カイルは煙草を地面に叩きつけ、言った。

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