サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持―

読了目安時間:3分

エピソード:49 / 58

Interlude

Interlude04『遺児-Children-』~時系列『未来』~

 朱色の紅葉がはらりと舞う。  イギリス・ロンドン。旧世代の文明人が築き上げた時計台(ビッグ・ベン)は市民のささやかな生活をただ、見守っている。  季節は秋で、季節もののコートを着た市民がぞろぞろと入り混じる。エドワード・「エディ」・バーンズは昼下がりの陽光を見上げた。  やがてぱんぱんに膨らんだショルダーバッグを背中にかけるとエディは用意されていた黒塗りのランボルギーニに乗り込んだ。エディはこの車のことを「バットモービル」と呼んでいる。大好きであるコミックヒーローのバットマンの愛車にちなんだ名前だった。  音を立ててランボルギーニは走り出す。目的を果たすため。 ←  留置所内でキング(ジョン)はベッドの脚を支えにして腹筋をしていた。  退屈な日々のフラストレーションを発散させるためでもあるが、不測の事態が起こった時のための鍛錬でもある。  ひとしきり半身を上下に動かした後、今度は腕立てをする。その後また腹筋。その繰り返しだ。 「ヒビキ少尉」独房の外から声が聞こえ、ジョンはその方を見た。  カートマン大尉が真顔でこちらを見ていた。 「またあんたか」ジョンはうんざりしつつ続かせる。 「今日の講義はお休みだ。先生も暇ではないのでね。宿題をがんばってくれ」 「まぁそう言うな。すぐに終わる」  ジョンは黙って、顎をクイッと突き出し先を促す。 「英諜報部(MI6)からの情報で、不審な積み荷が英国内に持ち込まれたと聞いた。これに心当たりはあるか?」  カートマンが懐からひとつの写真を取り出す。  ジョンはじっと目を凝らし写真を見た。  写真はなにやら狙撃銃と思わしきものだった。ジョンはその武器に心当たりがある。 「強化狙撃銃……エネルギー・スナイパーだな。カイルが使っていたやつとよく似ている」 「カイル・カーティス……。バーンズを打倒した英雄だな?」とカートマン。 「あぁ、しかし彼は死んだ。その武器の情報も闇市場(ブラックマーケット)に流れている。誰が流したのかはわからない」  ジョンは顔をしかめつつ言う。 「私はこの武器の情報を売却した人物に心当たりがあるぞ」  カートマンが言った。ジョンはカートマンの目を見る。 「エドワード・バーンズだ」  聞くなりジョンはふっと笑った。 「あの子は行方不明だ。どこか遠い東の国に逃げたとあんた達も睨んでいるんじゃないか?」 「そうだな。しかし今朝、ロンドンのヒースロー空港でこのような場面が目撃された」  とカートマンは今度はホログラフィック端末で画像を引き出す。  その写真には端正な顔立ちをした黒髪の少年が映し出されていた。そのあどけない顔立ち、しかし意志を強く宿した目はジョンも知っている。 「エディ……」 「第二次大革命を起こした君はロンドンにあるヘイメル・タワーを人質とともに占拠した。そしてその様子は世界的に中継された。その放送を見たエディはここに向かったんじゃないか? 父親の仇の一人である君を(たお)すため……」  ジョンは無言を返事にする。悔しいが、なにもかも辻褄は合っていた。  と、ジョンのいる独房のドアが自動的に開く。 「おい、あんた正気か?」ジョンはうろたえつつ聞いた。 「正気だとも。ジョン・ヒビキ少尉、お前を英陸軍特殊部隊(SAS)の臨時隊員として入隊させる。お前は重要参考人だ。エディがなにを企んでいるにせよここは俺たちの国だ。俺たちで守らねば」  カートマンはジョンに向かい手を差し出す。ジョンは手を一瞥した。  そしてふっと笑うとその手を握る。 「やれやれ、俺はまだバーンズと戦っているとはな……」 「親は子にいいものばかりを遺すものではない。呪いすらも子に受け継がせる……。理由はどうあれ、お前と俺でケリをつけないとな? 行くぞ」

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