【終末】ドーナツの穴で埋まった世界

 ♦︎♦︎♦︎  昔ビルがあった場所、いわば都会というのは入り組んだ地形になりやすい。  入り組んだ地形は、轟々と風が吹き音を立てるには完璧であった。 「なあ姉貴、死ぬってどんな感じなの」 「知らん。」 「教えてくれよ〜。痛ぇのは嫌だろ」 「うるせえ」 「空腹で野垂れ死ぬのも嫌だな。もう丸二日なんも食ってねえんだぜ。」  軽く突きを与えてヨロけると、立ち止まって一点を見つめる。 「お?」 「どうした。」 「姉貴〜こっちに面白そうなもんあるぜ」  チョロチョロと近づくと黄色く目立った瓦礫に埋もれた機械があった。  いや、機械というよりはもう瓦礫そのものな気がした。  大昔にビルが倒壊したままなのだろう。 「私たちは『観測者』...。人を導く者...。」  瓦礫は突如として喋り出した。  いや、ギリギリまだ機械であった。 「お?喋れんのか?」 「喋るタイプの機械か。初めて見たな。」 「周辺にいる。だけど、今は連絡が取れません...。」 「なあ、この近くに食糧とかねえか?私たちは旅の者なんだ。案内してくれ」 「ずっとここにいる...。動けてない...。」 「なんだ。拍子抜けだな。姉貴、さっさと行こうぜ。」 『頼む...。待って...。』  私たちが歩を進めようとすると引き留められる。 「できる...。導ける...。」 「だから...。待って...。」 「できるのか?足、ないけど」 「ただ...。頼みがある...。」  自らを観測者と名乗る機械は後ろにあるスイッチを押して欲しいと乞うた。 「貸してみろ...複雑だな。」 「赤い...ヤツ...。押す...。」 「姉貴、まだ?腹減った。」 「るっさい」  これか。  赤いボタンであった。  複雑な漢字が用いられており、字は読めない。  ポチッと押すと剽悍に警報のような音が鳴り響く。 『()()()()()...。』  元々全てがあったであろう場所に。  食糧など腐るほどあったであろう場所に。  先ほども述べたようにここは絶好な場所なのだ。  鳴り響くには。  ここまで鳴り響くと、まるで空っぽの缶詰を叩いているみたいで「ここに食糧なんてないぞ」と、そういう知らせにさえ聴こえてくる。  場は一気に緊張感へと苛まれる。 「これでいいのか、観測者とやら。」 「姉貴、スイッチ押してないんじゃないのか?」 「んなわけあるか。」  だが、その観測者が声を上げることはなかった。 「俺たち騙されたんじゃねえの?」 「死ぬってのはさ」 「?」 「結構苦しいのかもな。」 「あ?」 「お前はみんなに囲まれて死ねるようちゃんと優しくするんだぞ。」 「...姉ちゃんがいるからいいって。」 「あの状態で何年生きたんだろうな。あの機械は。」  あー... 『()()()()()』  か。

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