初心者にもわかりやすい異世界哲学〜世界最強の職業保持者は相互理解不能です〜

読了目安時間:6分

エピソード:6 / 20

僕は魔術学院へ入学した。 魔術学院には、A、B、Cとそれぞれクラスが分かれており、成績順にクラスが別れている。 ちなみにだが、別枠としてSランクというクラスがあるが、今回は関係無い為、割愛する。 入学式の直後、僕はその為のクラス分けテストを受けた。 その結果について触れようと思う、はっきり言おう。 1位だった。 次に紹介するのは、このテストの上位勢の順位と、その適合職業だ。 1位 ソロモン・シザー・クライネルス (哲学者) 2位 アラン・ベン・ウォーカー (画家) 3位 ラルフ・マルド・エマーソン (知らない) 4位 シスター・テレサ (修道女) 5位 セネカ・ショーペンハウエル (知らない) 上位勢5人と、その下25人。総勢30名が我々Aクラスのメンバーだ。 それと、僕にもこの学院で友人ができた。 村でも友人と呼べる人間は数えるほどしかいなかったので、少し嬉しいところがある。 さて、今日も一日が始まる。 ◇◇◇◇ 「おはようございます、主よ。朝食の準備は出来ています。」 近い、もう少し動いたら唇が触れてしまうのでは無いかと言うぐらいの距離で、ジャックの顔が教授の前にある。 これが、教授の日常だ。 手慣れたように、手で彼女の顔を退かして朝日を浴びる。 朝日を浴びると、眼がじくじくと痛みながらも眠気が飛んで行くような、そんな気分を教授は味わっていた。 「うう、今日のご褒美タイムはこれで終わりですか。」 ジャックは、そんな彼を見て悔しそうな顔をする。 まさか、夜中中ずっと見つめてた訳じゃないだろうな。そう非難するかのような目で教授はジャックを見つめた。 「い、1日中なんておそれ多い!ちょっとだけ早起きして主のご尊顔を拝見しているだけです。」 この暮らしになってまだ日は浅いが、教授はジャックが寝ている姿を見たことが無い。 大丈夫なのだろうか? 教授は、そんなことを考えながらも、彼女が用意した朝食をとり、彼女が洗濯した服を着ている。 忍びの技とは全く関係無いのにも関わらず、ジャックの従者力は極めて高い。炊事洗濯は勿論のこと裁縫、果ては教授の起床時間まで全てを管理している。 生活能力が皆無と言っていい教授にとって、既にジャックの存在は、無くてはならないものになっていた。 「1限目が魔導についての講義です、いってらっしゃいませ。」 ジャックに見送られ、教室へと向かう。 教室に着くと、教授にできた新しい友人たちが、彼を迎えてくれていた。 「オハヨ〜あ、教授はまた難しい本読んでるの?何それ?」 「お、おはようございます!今日みょっ、いい天気ですね!」 1人は、貴族。 堅いイメージのある魔術学院の制服をお洒落に着崩したその男は、人の良さそうな笑みを貼り付けたままこちらに近づいて来る。 ナヨっとしたチャラ男、それが教授から見たアラン・ベン・ウォーカーという男だった。 伯爵家の次男として生を受けた彼は、優秀な兄がいる為家督を継ぐような心配も無く、天職である画家の生活を満喫している。 実は、このまえ見た黄金比率では無い奇抜な絵。 あれを描いた人物こそがアランなのだ。彼は、既に画家として独り立ちできる程の知名度を持っており、この学院に来たのも新しい絵のインスピレーションを受けに来たのだとか。 今はその対象が教授らしい。 「この本か?この国の地図だ。」 「え?もしかしてずっと読んでたのってこの国の地図?良く飽きないね、きょーじゅは。」 「テレサも、おはよう。」 教授がそう言うと、もう1人の友人、テレサも顔を真っ赤にして首を縦に振った。 シスター・テレサ。 神に仕える職を天職とする彼女は、修道女として、特例で学院から支給された服の上から修道服を着ている。美しくも穏やかな顔をしており、その瞼はいつも眠そうにしている。 彼女は、1人の人間としては非常に優秀な人間だが、それでも天は二物を与えなかったようで。 他者とのコミュニケーション能力が、低かった。 というか、無かった。 学院に入るまで修道女として生きてきた彼女は、単純に他者との関わりをして来なかったのだ。 恐らくアランが声をかけなければここでもそうだったに違いない。 しかし今は、アランの助けもあり積極的に、他の人にも話しかけようとしている。 今は、『女友達』を作り、パジャマパーティーをするのが夢だそうだ。 そんな彼女のささやかな夢を、教授も応援している。 ちなみになのだが、ジャックが口を滑らせた結果、彼は田舎で『教授』と呼ばれているのがバレてしまっていた。今ではアランもテレサも、彼を教授と呼んでいる。 「今日の授業は、魔導理論か。」 「うん、私たちはもうその辺りの学習はもう終わってしまったからね。少し退屈ではあるところだが、まぁ仕方ないか。」 教授が言った本日最初の授業に対し、アランが退屈そうにため息を吐く。 魔導理論、魔術の基本的な知識や、その歴史を学ぶ授業だ。 魔法を行使する為に歴史というのは必ず知る必要があるかと言われればそうでは無いが、だからと言って知らないで済まされるものでは無い。 基本とは、全てに通ずるのだ。 「だから退屈と、そう言うのかアラン?」 「まぁ、魔導理論には討論(ディベート) タイムがある。お互いの魔術に対する特定の議題で知識をぶつけ合う会が、それに指名されれば多少は楽しめそうだけどね。そんな挑戦者(命知らず) がいるかなぁ?」 『討論(ディベート) 』 魔導理論に限らず、様々な授業で開かれる生徒同士、または生徒と教師が互いの意見をぶつける会のことだ。 そこでは罵声や誹謗中傷、その他仲介役が止める以外の全ての発言が許可され、自らの知識を生徒全員の前で公表し、互いの意見を深め合うことができる。 担当の先生によって選ばれる討論者になったものは、この場にいる人間なら誰でも討論(ディベート) の相手に選ぶことができる。 「僕たちを相手に選ぶ人間なんていないでしょうよ、流石に分が悪すぎる。」 「そ、そうでしょうか?」 不安がるテレサに対して、アランは笑顔で答える。 「だーいじょうぶだって!テレサちゃんだって、胸を張って堂々としていればいいんだから!」 「そうですね、こ、こうですか!あれ?なんで2人とも顔を背けているんですか?」 テレサの豊満な双丘から必死で目を背けながらも、教授はその目でアランとハイタッチしていた。 穏やかな日常、そう、討論に勝ち負けは無いが、それでもクラス内の空気で勝ち負けのようなものは存在する。 意見で負けているもの、そもそも知識量が相手より劣っているものは、このエリートしかいないクラスでは致命的だ。 恥をかきたく無い、その一心でクラスのほとんどのメンバーは自分より少し上か、または下の人間を選ぶ。 2位のアランは、このまえ選ばれた際にはテレサを指名し、終始和やかな討論を行っていた。 テレサを討論に慣れさせる為だろう、その討論は激しさのハの字も無く、むしろおしゃべりのように気楽に、そして学術的に大変意味のあった討論としてニコラスから大絶賛を受けていた。 2位のアランが討論をしかけて来ない以上、教授に討論の機会は無い。 ついさっきまで、誰もがそう思っていた。 この魔術理論の授業が始まる前は。 「私は、討論(ディベート) の相手に、ソロモン・シザー・クライネルスを指名します!」 「了解した、哲学の講義を始めよう。」 教授には、安息の日々は無い。

次が長くなりそうなので、少し短めです。 読みづらい箇所や、直した方が良い場所ありましたら気軽に感想欄にお願いします!!

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