国で暗殺されそうなので、公爵やめて辺境で美少女専門テイマーになります

3話 『バレバレリーナ』

 ヘルメスが5歳の誕生日のことだった。  あのころはイースバルツもノースクラメルも戦争をしておらず、彼女の誕生会にも近隣のノースクラメルの貴族が訪れていた。  そんな誕生会のおりにまだ令嬢だったころのヘルメスは少年から告白された。  そして時は巡って今、その少年は成長して自分の前に現れた。  ガイア・フォース。  「絶対に戦うな」とイースバルツ中にお触れが出されている『ノースクラメルの悪魔』の次期当主だ。  今しがた潜伏しているのがバレたばかりだというのに、ガイアは動じることもなくヘルメスを量るように凝視するだけだ。  ヘルメスが何を考えているのかと考えを巡らしている間も、ガイアの聡明な深緑の瞳は彼女を射貫き続ける。  ―|―|―  公爵バレバレリーナした俺は言葉を紡げず、ヘルメスを見続けるしかない。  奴はこちらを責め立てるように、凝視し続けるだけだ。  めちゃくちゃ怖い。この沈黙にはあと五秒も耐えられそうにない。 「誤解です。僕はもう公爵家の人間ではないですし、潜伏しているなら、そこのアサシンが僕の存在をばらすわけがないでしょう」 「では、どういうわけでここにいるというのですか」  なぜだ……。  素直に話したはずだというのに警戒がことさらに深まったような気がする。  てかもはや、問いかけではなく、何かお前は企んでいるはずだという言いがかりに近い。  何でこんなに信用がないんだ。  クリムゾンが「冗談が大好き」とか言ったせいだな、くそ。 「あなたと交わした約束を果たすためです。無論、ヘルメスさんも覚えているでしょう?」 「最初に出会ったあの時の約束ですか?」 「そうです」  俺がそう答えると、ヘルメスはまた驚いた顔をした。  なんだ、ここの領地防衛依頼したこと忘れてたのか、このイケメン。  凛とした顔つきなのに、意外にうっかりしてるな。 「なんで国を捨ててまでこんな所に……。あなたのような賢い人が」  皮肉か、畜生……。  公爵うっかり時点で馬鹿丸出しだよ。  この流れで裏切り者コノヤローとか来ても困るし、ヨイショして話を逸らすか。 「ここには国を捨てても守りたいものがありますからね」  これでもうネチネチ責めれんだろと、ヘルメスの方を見ると少し涙ぐんでいた。  領地ヨイショがよほどのこと彼の胸には響いたようだ。  我ながらファインプレーだ。  もう一押しして、俺が忠誠心に溢れていることをアピールしとくか。 「必ずここを防衛して、あなたとの約束を果たしてみましょう」  ヘルメスは俺のあまりの忠誠心に感極まったのか、顔を赤くして、何かをこらえるように俯く。  少しすると奴は決意したように顔を上げた。 「あなたは私の為に国を捨てたのです。それなのに答えないなんてできるでしょうか。ええ、防衛を果たした暁には、あんたとの約束は必ず果たしましょう」  よし、何とか丸く収まったようだ。  一時はどうなるかと思ったが何とかなるもんだ。  くそ、でも俺を落ち詰めたクロノスちゃんは許せんな。  一歩間違えたら、断頭台だよ。  クロノスちゃんの方を見ると、彼女は静止したまま微動だにしない。  何かおかしい。  クロノスちゃんを手刀で叩く。  少しの反動が返ってきたと思うと姿が消えた。  やっぱり残像のようだ。  俺をだしに使って、逃げたらしい。 「な、残像?! いつの間に……。あたしが担いでいるときは確かに本体だったよ」 「おおよそ、僕に注目を集めた後、アーツを発動させて逃げたんでしょう」 「追いかけるかい?」 「すばしこいアサシンのことですし、追いかけても無駄です。ほっといて軍備を進めましょう」  クロノスちゃんを逃がしたのは痛いが、ヘルメスの信頼は得られたし、プラマイゼロだろう。  ここ最近不調だったので、なかなか幸先のいい出だしだ。

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 力こそが正義。そのための異能力。

    ♡17,800

    〇300

    現代/その他ファンタジー・完結済・77話 智慧砂猫

    2020年7月12日更新

    異能。それは突如として人々の中に目覚め始めた。最初こそ数の少なかった異能者たちだが徐々に数は増え、彼らを脅威とした政府や異能を持たない人々は彼らを地下に隔離することを決めた。――それから数十年。地下は異能を用いた犯罪行為が横行し、徒党を組む者たちが現れる。しかしこれを止められず、政府が対応に追われる中で打ち出した策は、地下都市の更に地下に存在する施設に収容された最も危険とされる異能者〝百鬼 楓〟に頼ることだった。当然、百鬼は条件付きで仕事を請け負うが、自分の担当である男・佐々岡を始めとした政府側の人間が何か企んでいる、と密かに調べを進めながら地下都市を掌握していく。やがて彼女は自分さえも計画の一部であったことを知り――――。 ※『小説家になろう』様にも掲載されております。

  • もふもふが好きな方へ♪

    ♡5,500

    〇50

    異世界ファンタジー・完結済・1話 ところてん祐一

    2020年7月7日更新

    黒髪黒眼の青年ユーゴは、相棒の小狐(こぎつね)コンと共に今日も今日とて街中を駆け巡る。 時には、街の人と交流したり、時には、ユーゴと同じく相棒がいる少女とお話したり、時には、ギルドで依頼を受けたり……。 その中には、ほとんどと言っていいほどもふもふたちがいるのだ。そんなユーゴとコンのもふもふがいる日常のお話。 ※こちらの短編は、自作「小狐さんといく~異世界モフモフ道中」の番外編となっていますが、 本編を知らない方でも楽しんでいただけるよう書いています。(本編は、現在別サイトのみ) ※この短編は、小説家になろう様でも投稿しております。

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る