お~い、助けとくれ~。異世界でプロ野球入りしてウハウハと思たら、あいつら滅茶苦茶でもう嫌になっちまったよ~異世界東京野球団

読了目安時間:5分

会った

 岡本未練は来た道を引き返し、大学に向かっていた。  ついさっき通ったはずの道だが更に景色は変化していた。  主に建物の色、店舗事業所、たまに建物の形まで。  街並み自体は何もおかしい所はないが、明らかに今までと違う風景。  ――恐ろしい!!  自宅アパート前でしばらくうろうろした後、携帯で電話を掛けてみた。  友人親恋人教授親戚片っ端から。  知らない人が電話に出て慌てて切る事数回。  番号自体使われていない事も数回。 「お客様がお掛けになった電話番号は現在使われておりません」  事務的で無慈悲な言葉に悲しくなり、  なんでですか!!と一喝。  怒鳴りつけてやったぜ、これを機に反省し従業員教育を徹底してもらいたいものだ。  思わずクレーマーになってしまったが、未練の気が晴れる事はなかった。不安は増すばかりだ。  そんな事をしているうちに電波状況が徐々に悪くなり、ついには完全に繋がらなくなってしまった。  そして未練は大学に向かうのだ。知ってる人に出会う為に!!  変わってしまった景色に迷いつつ、行ったり戻ったりを繰り返しながら、僅かな街の面影を頼りに未練は走った。  大通りに出ると大学は……見えた。  このまま通りに沿って進めば正門がある。  息が上がっていたが、ラストスパート一気に向かう。  未練の通う智馬大学はもうすぐそこである。  力馬女子体育大学  もう一度確かめてみる。  力馬女子体育大学  確かにそう表示されている。  岡本未練は男子大学生である。  智馬大学経済学部経済学科の二年生。  目の先にあるあの建物に通っていたはずである。  ――恐ろしい!! どうすればいいのか分からない!! ……怖い!!  敷地内に入ってみるか……とも考えた。  もしかしたら知ってる人に出会えるかも知れない。だが、  関係者以外立ち入り禁止  とある。未練は果たして関係者と言えるのか?  ついさっきまでは自信満々胸を張り、威風堂々泰然自若の態度で 「関係者ですけど!!」  と言えたはずである。だが今は……  関係者以外立ち入り禁止  注意書が未練を阻む。  ましてや女子校、女の園である。おいそれとは立ち入れない。  そもそも守衛がいる。  万策尽きた、仕方あるまい。  今の自分に出来る事は何だ?  未練は正門の前でモジモジする事にした。  モジモジしながら考えた。状況を整理する必要がある。  ――なにがなんだか分からない!! 怖い!!  まず未練自身がおかしくなってしまった可能性。これはあり得る。  目の前の光景はリアルでとても幻覚とは思えないが、幻覚とはそういうものと聞いたことがある。  もしそうなら病院に行けばいい。話は早い。そうであってほしい。  だがこれが現実なら難しい。  これだけの事が起こったのに街が混乱している様子がない。何故だ?  何処かでニュースを確認したい。  誰かに話も聞きたいが、誰に聞けば……  守衛と目が合った。  実際には未練が来た時から見られていた。  ダッシュで女子大の正門前に現れ汗ダラダラで校内をチラチラ、路上をうろうろ、モジモジする息の荒い男。  守衛に話を聞いてみるべきか未練は迷った。  守衛は未練を睨んでいる。  話しかけてくれればいいのに、と未練は思った。  こっちがこんなにモジモジしてるのに、と。  守衛は今にも警察でも呼びそうな様子だ。  いや、警察に話を聞けばいいのか!? 「もしかして、迷子?」  女の声だった。ハキハキしているが優しい声。 「やっぱり迷子でしょ?」  顔を向けるとジャージ姿の若い女。  ここの学生の様だ。ランニング中だったのか日焼けした顔が汗ばんでいる。  少しだけ息も荒い。 「ちょっと待っててね」  女は携帯を取り出すと何処かへ電話を掛けだした。  女学生のポニーテールの揺れを眺めながら、自分は果たして迷子なのか、と未練は考えた。  若干不本意ではあるが迷子と言えなくもない。  只、何の非もない自分がそう呼ばれるのは納得しかねる。  寧ろこの街の方が迷子といえるのではないか。 「もう大丈夫。迷子センターの人がすぐ来てくれるからね」  いつの間にか電話は終わり、女学生が笑顔を向けてくる。 「立ちっぱなしじゃ疲れちゃうよ。あっちで座ろ」  女学生が指差す先には校内のベンチ。  彼女に招かれ未練は、立ち入り禁止をいとも容易く突破した。  ベンチに並んで座る。  彼女は未練を見つめてくるが未練は只、前を見て座っていた。  シトラス系の整汗スプレーの香り、ドキドキしていた……というのも少しあるが、それ以上に不安であった。  彼女に気を配る余裕はこの時の未練にはなかった。  何が起こっているのか?  迷子センターの人とは一体なんなのか?  これから何をされるのか?  自分はどうなるのか?  ――恐ろしい!! 分からない!! 怖い!!  ヌッと目の前に顔。心配そうな顔だ。  女学生が未練の表情を覗き込んできていた。 「大丈夫?」  目が合った。  目が合うと彼女は未練の為に大袈裟に笑顔を作る。 「もう怖くないよ。何にも心配いらない。大丈夫大丈夫」  彼女は未練の手を握った。温かい。  未練はこの時初めて、自分の手が冷えきっている事に気付いた。  徐々に彼女の手の温度が未練に伝わる。  徐々に不安も薄らいでいった。  未練は自分の身の上に起きた事を、整理出来ていないながらも話した。  彼女は頷きながら聞いてくれる。  この場所が、さっきまで智馬大学であった事も、彼女は知っている様子だ。  何故? どういう事なのか? 彼女は何者?  未練は女学生の目を見据え考えた。  ――かわいい!! 「大分、元気になったね! 良かった」  彼女は微笑んでくれる。  ――かわいい!! 「すみません、お待たせいたしました。お電話頂いた熱原さんですか?」  ――かわいい!!  男の声だ。丁寧で明るい高く作った声。  はいそうです、と女学生。 「迷子センターの人来てくれたよ。これで安心だからね」  男は声の印象とは裏腹に、鋭い眼光。  頬は痩けてるが体は肥え、肩幅広く、身長は百八十以上ある大男。  作り笑顔を未練に向けた。 「異世界迷子センターの異沼と申します」  ――怖い!!

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

  • ANTIHERO-アンチ・ヒーロー-

    少年の家族は、ヒーローによって殺された。

    3,300

    0


    2021年6月25日更新

    少年の家族は、ヒーローによって殺された。 ゆえに少年は、ヒーローを憎んだ。 憎んで憎んで憎んで、それでも悪には染まらなかった。 少年の父はヒーローに憧れていた。 でも、ヒーローにはなれなかった。 だけど、心はヒーローだった。 ヒーローマニアとからかわれ、それでもいつでもニコニコ笑っていた。 そんな父を見て育った少年は、温厚で優しく育った。 事件は、少年が4歳のころに起きた。 少年がヒーローに見とれたとき。 ヒーローが無残にも少年の両親を目の前で殺した。 少年は、大富豪の家から親なしの子どもに変わった瞬間だった。 その少年の名前はセロ。 メロディを聴いたモノは、その能力に目覚める。 セロもまた分解・融合・能力の変更が出来る螺子のメロディを聴いている。 この物語は、セロと専属メイドのオトネのちょっと不思議な物語。 ※以前に書いた【アンチ・ヒーロー】のリメイク作品です。

    読了目安時間:2時間4分

    この作品を読む

  • あっぱれ軒高 ~これぞ昭和の祭囃子~

    ロスジェネおじさんと家出少女と花火

    500

    0


    2021年6月25日更新

    戦後最悪の貧乏くじ世代、ロスジェネ世代。 金なし、地位なし、未来もなし。 無価値に終わるはずだった人生が、一人の少女との出会いをきっかけに動き出す。 さあ、祭が始まる。 人生を、楽しめ。

    • 暴力描写あり

    読了目安時間:1時間3分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 金貨使いの怪人<ファントム>

    かつて英雄と持て囃された男の復讐劇

    33,950

    273


    2021年6月19日更新

    超巨大ダンジョン都市アルカディア。七つのダンジョンが都市の中に存在し、冒険者達の黄金郷と呼ばれるこの地で、莫大な借金返済を果たす為、出稼ぎ目的で神(やくざ)に拉致られた一人の日本人が紆余曲折を経て長い眠りから目覚める。かつて金貨使いの怪人と呼ばれ英雄と持て囃されたその男は再びダンジョンに挑む事になる。裏切った仲間とダンジョンを支配する神々に復讐する為、呪われた金貨の力を使って。

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:1時間22分

    この作品を読む

  • 九尾の狐とおん返し

    ほわほわ店主がワケあり狐を拾いました

    6,200

    0


    2021年6月25日更新

    西洋のどこかの国のカフェの店主が九尾の狐を拾った。 陽美乃と名乗る喋る狐をものともしないどころか、変化して見せてもすごーいと拍手するルーチェ。 そんな彼のもとでもふもふ撫でられたり、カフェでウェイターをしたりと自由にすごす陽美乃。 ルーチェの眼病を治すために協力したことで二人の絆は深まっていく。 そんな彼らのもとに陽美乃が西洋まで逃げてきた理由が追ってくる。 不思議で平和だけどちょっと危険な二人の日々を覗いてみませんか? ※表紙は渡河いるかさんに描いていただいたものです。一切の転載を禁止します。 ※狐がひどく傷つけられるシーンがあります。

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:47分

    この作品を読む