閃銀の英雄機 ヴォルゼフォリン~ロボに乗れないから貴族の家から追放されちゃったけど小さい頃から憧れていた最強の機体に招かれて乗りました。え、当主の座を継いでくれ? 嫌ですよ、つまらないから~

読了目安時間:6分

第3話 英雄機眠る遺跡

「はぁ、はぁ……」  ランベルトはただ気力だけで、目の前に見える光をたどっていた。一秒の休息も取らず、必死に足を動かしていた。 『いいぞランベルト! もう半分だ!』  英雄機は声で、ひたすらランベルトを激励する。  気づけばもう太陽が昇りはじめ、あたりを徐々に明るく照らしだしていた。 「あと、どのくらいなんだ……?」 『もう少しだ! もう少しで、私の元に……!』  たえず激励を続けてくれる英雄機の声に、ランベルトは自身の心の内側から、希望が湧き出てくるのを感じていた。このまま歩き続けていれば、助け出してくれると。  しかし、その希望を砕こうとする者たちが、轟音と共にやってくる。 「ヒーヤッハァー! ガキだ、ガキがいるぜ!」 「何だぁ? 気にくわねぇなぁ、殺すか!」 「いや、捕まえて売っ(ぱら)っちまえ!」  その轟音に、英雄機とランベルトは気づく。アントリーバー5台が、ランベルトを見つけて寄ってきたのだ。 『まずい……! 奴ら、この辺りを根城にする山賊か!』 「アントリーバー……! ど、どうすれば……!」 『走れ! 足がもつ限り走るんだ!』 「……ッ!」  ランベルトは気力を振り絞り、全速力で走る。しかしアントリーバーとの速度の差は、あっという間に縮みだした。 「逃げろや逃げろ、捕まえてやるぜ!」  アントリーバーが走ってこないのは、いたぶっているつもりだ。そもそも走らずとも、人間の脚力などたかが知れている。ランベルトもその例に漏れない上に、アントリーバーとの速力差はどう頑張っても取りつくろえなかった。 『こっちだ! ここを通れ!』  と、ランベルトに見える道が変わる。 「森……!」  木々の間を通り抜けるように、ランベルトを誘導しだす。  森となれば足を取られるため、12m以上はあるアントリーバーでも無視できないものだった。 「くっ、あの野郎森に逃げやがった!」 「木ィくらい踏みつぶせ! 無理やりでも進め!」  バキバキと、木の折れる音が響き始める。  ランベルトは後ろを見る余裕もなく、ひたすら走っていた。 「うわっ……!」  と、倒木に足をとられて転倒してしまう。強く体を打ちつけたのか、ランベルトはすぐに立てなかった。 『早く立て! 捕まるぞ!』  すぐ後ろには、アントリーバーが迫っている。  ランベルトはさらに気力を振り絞り、ふらつきながらも立ち上がって走り出した。  だが、わずかに数秒転倒していただけでも、あっという間に追い付かれてしまう。 『ランベルト!』 「ヒャッハァ! そーれ、つ~かまえ――」  そのとき、どこかから閃光がまたたいた。  ランベルトも、そして山賊たちも、とっさに目をかばった。 「うわっ!」 「うおっ……!? チクショウ、見えねぇ!」  山賊の乗っている機体は5台とも、首を左右に振り回している。視界が悪い状態で下手に動かせば、転倒して大きなダメージを受ける危険があるのだ。 『今だ、ランベルト! 走れ!』 「うあああああああああぁっ!」  山賊たちが動けない間に、ランベルトは光をたどって安全な場所まで逃げ切る。アントリーバーが腕を伸ばしても、届く距離ではない。 『よし、よく逃げ切ったランベルト』 「よかった……。ところで、ここは行き止まりじゃ?」  ランベルトが逃げた先は、洞窟だった。 『違うな。光で示した道を進めば、わかるはずだ』 「う、うん……」  ランベルトの目には、どう見ても行き止まりとしか思えない暗闇が広がっている。  しかし、まだ光で示された道筋は続いていた。 「こっち……?」  何の明かりもない道を、不安げに進むランベルト。今は英雄機に示された光を、信じる他なかった。 「あれ、明るい……?」 『ああ。私のいる場所まで、近づいているぞ。もう少しだ』  女性のような優しい声を聞いて、ランベルトは安心感を覚える。ランベルト自身は気づかなかったが、一歩を踏み出す足はかなり軽いものになっていた。  やがて、ひときわ明るい空間へと出る。 「っ……眩しい!」  明るさに眩惑(げんわく)されるランベルト。今までの暗闇によって、強い光に目が適応していなかったのだ。  やがて徐々に目が慣れ、ランベルトの目にあるものが映った。それは―― 「く……黒い、騎士?」 『おや……今の私は黒いのか? ランベルト』  全身が黒色に包まれた、ひざまずいている英雄機だった。 「え、ええ……。確か、僕が読んだ伝承では、銀色だったのに……」 『ああ、確かに銀色だったな。しかし数千年眠り続けている間に、私に宿る魔力は輝きを失い、それによってこの色となった。活力でもある魔力自体も最盛期より減ってきて、動けなかったのだ。だからお前を、ここに導いた』  英雄機は声に悲しさをにじませ、ランベルトに話しかける。 「まさか……僕が夢を見たのも?」 『そうだな。動けない以上、お前に夢を見せて何度も接触したよ。私を好きになれば、いや最低でも興味を持ってもらえれば、お前は私を探そうとするからな。私はそのときを、待っていたのだよ』 「じゃ、じゃあ……僕が、あなたを好きになったのも……」 『まぁ言ってしまえば、私が仕向けたことになるな。そこまでしてでも、お前にたどり着いてほしかった』  ランベルトは、複雑な気持ちになる。  確かに、自身の抱いている英雄機への憧れは本物だった。だが「仕向けられた」と言われて、あまり良い気もしなかったのだ。  だから、問うて確かめる。 「どうして、僕にこだわったのですか? 他にも、英雄機に憧れている人は――」 『お前でないとだめなのだよ、ランベルト』  英雄機はきっぱりと、言い切った。 『お前でなければ……お前ほどの魔力の持ち主でなければ、私の“継承の儀”は耐えられん。過去に何人も私を操ろうとした者たちは、皆自我や心を失い、死人のごとく生きるはめになったのだ』  苦々しげに呟く英雄機。 『だがお前は違う。生来の魔力量は、今までのどんな乗り手よりも優れている。それだけの力があれば、私が課す“継承の儀”も耐えられるであろう。誰に認められずとも、私はお前を認める』 「だから、僕を?」 『ああ。だから、私と契約してほしい……』  英雄機がそうつぶやいた直後、空間が揺れだした。 『む……問答している暇はないな。先ほどの山賊たちがどうやら暴れているようだ。早く決断せねば、何もできず生き埋めになるぞ』 「ぼ、僕が……?」 『そうだ、お前が決断するんだランベルト。私と契約する、と』  ランベルトは突然の出来事に、戸惑ってしまう。 『危ない! 入口から離れろ!』 「うわっ!」  そうしている間に、入口が塞がれてしまった。もう、ランベルトに退路はない。 『生き残るんだろうが、ランベルト! 私と契約しろ!』 「本当に、本当に僕でいいんですか……!?」 『ああ! お前が私と、契約するんだ!』 「な、何をすれば……!」 『私に「契約しろ」と命じればいい! やるんだ!』  ランベルトは震えながらも、英雄機を見上げる。 『怖気(おじけ)づくな! 今何もしなければ、無駄死にだぞ!』 「くっ……!」  そうだ。せっかく英雄機に助けてもらった命、無駄にするわけにはいかない。  ランベルトは覚悟を決めると、脳裏に眠る記憶を呼び起こしながら叫ぶ。 (僕は、僕は知っている――! 英雄機の、真実の名前を!)  大きく息を吸ってから、ランベルトはありったけの声で叫んだ。 「契約しろ! 英雄機、ヴォルゼフォリン!!」

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