閃銀の英雄機 ヴォルゼフォリン~ロボに乗れないから貴族の家から追放されちゃったけど小さい頃から憧れていた最強の機体に招かれて乗りました。え、当主の座を継いでくれ? 嫌ですよ、つまらないから~

読了目安時間:6分

第10話 二人っきりで話し合い

「ふふふ、やはりランベルトは可愛いなぁ」  ヴォルゼフォリンはランベルトから顔を離すと、からかうように呟く。 「もう、なんなのさヴォルゼフォリン! さっきから僕を『可愛い』って!」 「仕方ないじゃないか。お前を見ていると……何というか、庇護(ひご)欲をそそられてしまうんだ」 「庇護欲……。確かに、僕はヴォルゼフォリンがいてくれなければ、今ごろどうなってるかまったくわかんないけどさ」  自尊心を刺激され、不満げになるランベルト。 「確かに僕は、今まで貴族である家に甘えてたけど。一人だけで生き抜く力も、まだないけど。けど、ちょっとそういう態度は気になるかな」 「……そうか」  わずかにうつむく、ヴォルゼフォリン。  それを見たランベルトは、慌ててフォローする。 「け、けど、助けてくれたことは本当に感謝してるよ!? それに僕を好きでいてくれるのもうれしいし……」 「やはりお前は最高に可愛らしい男だ、ランベルト!!」 「うわっ!?」  ヴォルゼフォリンは嬉しそうに笑顔を浮かべながら、ランベルトをベッドに押し倒す。 「い、いたた……何するの、ヴォルゼフォリン?」 「ふうむ。この反応を見るに、まだお前には早いらしいな」 「早いって、何が……」 「いや、忘れろ。ところで、私に関する伝承やら何やらを聞きたいらしいが、どうだ?」 「えっ?」  それを聞いた途端に、ランベルトの目が一瞬で輝きだした。 「聞かせてくれるの?」 「ああ。お詫びと言っては何だがな、そのくらいはするさ」  ヴォルゼフォリンはむくりと起き上がると、ランベルトの隣に座る。体がピタリとくっついているが、今度はランベルトは嫌がらなかった。 「といっても、いろいろあるだろうからな。何から聞きたい?」 「うーんとね……ヴォルゼフォリンが造られた頃の話かな」 「そうか、その時か……。もしかしたら、お前の読んだ本とかぶってるかもしれないぞ?」 「いいよ、それでも。ヴォルゼフォリンから直接聞きたいからさ」 「そうか」  ヴォルゼフォリンは話を進めながら、ランベルトの腰に左手を回す。 「そうだな……。私が生まれたのは数千年前なのだが、それはもう言うまでもないな?」 「うん。王国史にも載ってないくらい、大昔だよね」  ランベルトの答えを聞いて、ヴォルゼフォリンがうなずく。 「ああ。そもそも、私が生まれた場所はこのメルヴィスタン王国どころか、全然違う星だからな」 「全然違う……星?」  ランベルトにとって、星という概念は空にあるものだった。 「そうだぞ。別の星から、この星にやってきたのさ」 「別の星、かぁ……」 「想像もつかないか?」 「うん。世界は、陸と海と空だけでできてるって教えられたから」 「間違いとはいえないな。陸、海、空。どれも確かに、この星にある」  ヴォルゼフォリンはランベルトの頭をそっと撫でながら、噛んで含むように話す。 「私やお前が今いるのは、陸だ。ここから北にずっと進めば海があり、そして見上げるのが空。私たち、いやこの世界に生きる人々と密接に関わっている」 「うん」 「だが、空よりさらに高いところに、黒い海がある」 「黒い海?」  不思議そうな表情を浮かべるランベルト。  ヴォルゼフォリンは右手を、ランベルトの(ほお)に添えた。 「ああ。ただ、海とは言ったが、それは海水じゃない。この星にはない物質が、海水の代わりに満たされている。想像、できるか?」 「ううん……さっぱりわからない。ヴォルゼフォリン、そんな遠いとこから来たの?」 「そうだ。私は黒い海を渡って、この星にたどり着いた。そしてメルヴィスタン王国の前身となる国家を作った。いや、私の下に集まった人々がいつの間にか、作っていた……と言うべきかな」 「すごい……! 今まで僕が読んだどの本にも、書いてなかったことだ……!」 「数千年経っているのだ。正確な知識が伝わることは、まれだろうよ。それに私も、長らく黒い海には行っていないからな」  ヴォルゼフォリンは話しながら、口の端をややだらしなく緩めていた。ランベルトが目を輝かせて自らを見ている、その状況に愉悦(ゆえつ)を覚えているのだ。  そんなヴォルゼフォリンの様子にも気づかず、ランベルトは夢見心地に呟く。 「黒い海……行ってみたいなぁ」 「連れていくか?」 「いいの?」 「ああ。だが、何の条件も付けずに連れていくのは、つまらないな」  ヴォルゼフォリンはまたもいたずらっぽく笑みを浮かべて、人差し指を立てる。 「ランベルト。お前とある約束をしよう」 「約束……」  その言葉を聞いて、ランベルトは身震いした。 「ねぇ、ヴォルゼフォリン」 「何だ?」 「僕を置いてったり、しないよね?」 「しないさ。その約束が果たせても果たせなくても、お前と一緒にいることは変わらない」 「ほんと?」 「本当だ。そもそも私と契約できる人間など、百年……いや千年に一度もいないくらい、数少ないのだぞ? お前と離れ離れになっては、逆に私が困ってしまう」  ヴォルゼフォリンは優しく、ランベルトを抱きしめる。 「それに、これはお前を試し、鍛える意味もある」 「どういう意味?」 「ランベルト。実家に戻りたいとは、思っているか?」 「えっと……」  ランベルトは考え込む。  追放などという扱いを受けても、彼は彼なりにこれまで実家に育ててもらった恩義を感じていた。  しかし実家に戻れば、何があるのか。成人したランベルトは、貴族として振る舞うことを余儀なくされるだろう。それがどんなものか、ランベルトは身近で見てきている。今まで大目に見られていたヴォルゼフォリンへの憧れも、もう抱けなくなるかもしれなかった。  一方で、今はどうか。ランベルトは、ヴォルゼフォリンと一緒にいる。命を救ってもらい、しかも憧れていたヴォルゼフォリンの話を心ゆくまで聞けている。  それだけでなく、今までに知りえなかったことを教えてもらったのだ。  であれば、ずっとヴォルゼフォリンと一緒にいられるのはどちらか。ランベルトの心から、迷いが去っていく。 「決めたよ」 「ほう。どういう決断を下すんだ?」  ヴォルゼフォリンが抱擁(ほうよう)を解いて深掘りすると、ランベルトは決断した自らの考えを、確たる意思を持って話しだす。 「もう家のことは忘れるよ。父さん……いや、アーデルベルト伯爵から直々(じきじき)に、絶縁を宣言されたんだ。僕はもう、アルブレヒト家の子供じゃない。ただのランベルトだ」 「よくぞ言った。よくぞ決断した、ランベルト」  ヴォルゼフォリンは再び、ランベルトを抱擁する。 「であれば、約束を作ろう。ランベルト、強くなれ」 「強くなる?」 「何でもいい。自らが立てた目標を、達成してみせろ。私が満足すれば、黒い海にお前を連れていってやる」  漠然とした、水を掴むような目標。  それでもランベルトは、自身の抱く憧れに従った。 「約束、守ってね」 「当たり前だ。英雄機に二言は無い。だから強くなれ、ランベルト。私もお前を、全力で強くしてやる」 「うん! 伝承で見た英雄みたいに、強くなるよ!」 「その意気だ」  ヴォルゼフォリンは抱擁したまま、ランベルトの頭を撫でた。 「可愛いランベルト……ふふっ」 「ちょ、ちょっと苦しい……」 「んん?」 「そ、その、おっぱいが…………きゅう」  ヴォルゼフォリンの豊かな胸に圧迫され、気絶してしまった。 「ふふ、やれやれ……。これからが楽しみだよ、ランベルト」  ヴォルゼフォリンは気絶したランベルトを寝かせてやると、ずっと隣に寄り添っていた。

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