閃銀の英雄機 ヴォルゼフォリン~ロボに乗れないから貴族の家から追放されちゃったけど小さい頃から憧れていた最強の機体に招かれて乗りました。え、当主の座を継いでくれ? 嫌ですよ、つまらないから~

読了目安時間:6分

第11話 御前試合の話

 正午を迎えると同時に、ゲストルームにノックの音が響く。 「誰だ?」 「失礼します」  入ってきたのは、フレイアだった。 「ランベルト様とヴォルゼフォリン様に、学園の昼食を振る舞いたく……って、おや? ランベルト様、眠っていらっしゃいますね」 「ああ、ちょっとな。いろいろあって疲れたらしい。少し休んでるさ」 「起こすには忍びありませんね……。このまま眠っていただくか、あるいは……」 「一緒に連れていくぞ」 「へ?」  フレイアの予想を無視して、ヴォルゼフォリンはランベルトの近くまで向かう。 「おい、起きろランベルト。昨日から何も食べてなくてお腹が空いたろう、食べに行くぞ」 「ん……あ、フレイアさん。お世話になってます」 「どうも……」  予想外の展開に、フレイアは面食らってしまう。 「それで、ご飯を頂けると聞いたのですが……」 「は、はい。今案内させていただきます。こちらへ」  フレイアはランベルトとヴォルゼフォリンを連れて、廊下へ出る。来たときとは逆の道を進んでいた。 「ちょっと長いですね」 「はい。私が住んでいる寮まで、来ていただきます。ここのスープは絶品ですから、是非味わっていただきたく」  先ほどまでは淡々とした表情のフレイアだが、今は少し嬉しそうだった。 「そんなに美味しいんですか?」 「もちろんです。行列ができるくらいの美味しさですよ」 「それは楽しみです」 「まったくだ。私も同様だよ」  ランベルトは、前を向いたままヴォルゼフォリンに話しかける。 「ヴォルゼフォリン、君食事できるの?」 「できるぞ。この姿の時に限るがな」 「意外だなぁ」 「私は戦う機械だけではないからな。人間としての姿も持つし、人間として過ごす。もっとも理由としては、搭乗者の守護が最たるものだ」  ランベルトとヴォルゼフォリンが話していると、フレイアが割って入る。 「あの……ヴォルゼフォリン様」 「何だ、フレイア」 「恋したことはあるのですか?」 「恋か。そうだな」  ヴォルゼフォリンは、窓から空を眺めつつ話す。 「何千年前にはしなかったが……今は少し、違うな」 「“今は”……? 気になる物言いですね」 「ふふふ、そうか。私も気になって気になって、仕方がないよ」  ヴォルゼフォリンはチラリと、ランベルトを見る。 「ぼ、僕?」 「ああ。私の長い人生において、初めての恋かもしれんぞ」 「そ、それは嬉しいけど……」  正直、ランベルトにとってはまんざらでもない。今のヴォルゼフォリンの見た目は、正しく“美人”と呼べるものであった。 「まあ、最終的にはお前が決断するからな。誰か一人を選ぶか、あるいは好意を寄せる者全員を選ぶか……」 「ヴォルゼフォリン様。ランベルト様がお顔を真っ赤にされております」 「そうか。今は話せそうにないな」  ヴォルゼフォリンはこっそりと、ランベルトの左腕に自らの体が触れるように近づいたのだった。      *** 「着きました。こちらです」  フレイアが案内した先には、木造と思われる寮があった。 「丸太組みの……寮?」 「そう見えるように造られていますね。実際は石や金属の骨組みですが」  フレイアが一歩前に出て、扉を開ける。 「さあ、どうぞ。少しばかり混んでおりますが」 「どれどれ……」  ヴォルゼフォリンが先に入り、中の様子をうかがう。  そこには既に、30人ほどの学園生たちからなる行列ができていた。 「これは待つな……」 「いえ、時間は取らせません。こちらに」  フレイアがもう一度、ランベルトとヴォルゼフォリンを案内する。 「レオニーおばさん、いらっしゃいますか?」 「はいよ。フレイアちゃんだね。一緒にいる二人は見ない顔だけど、転入生かい?」 「そうなるかもしれない方々(かたがた)です」 「そうかいそうかい。ま、頼まれた通り三人分のご飯は作っといたから、持っていきな」 「ありがとうございます。ランベルト様、ヴォルゼフォリン様。お先にどうぞ」  フレイアは礼を述べると、ランベルトとヴォルゼフォリンにうながして先に取らせる。 「ありがとうございます。フレイアさん、レオニーさん」 「可愛らしい子だねぇ。そっちの美人さんも」 「感謝する。褒められるのは好きでな」 「そうかいそうかい! じゃあうちに来たら、褒め倒してやるよ!」  ランベルトとヴォルゼフォリンは笑顔で一礼すると、パンや絶品スープなどの昼食が乗ったトレイを受け取ってテーブルへ向かう。 「いただきます」 「ふむ、ランベルト。食事前の挨拶とはいい心がけだな。では私も、いただきます」  食前の挨拶を済ませ、スープに口を付ける。フレイアも静かに一礼してから、食事に口を付けた。  しばし無言での食事が続き、完食まであと少しとなったところで、フレイアが切り出す。 「ところで、ランベルト様」 「はい」 「もしかしたらご存知かもしれませんが……ランベルト様は、アントリーバーを用いた御前試合にご興味はおありでしょうか?」 「御前試合……ですか。父……いえ、アルブレヒト伯爵から、話だけは聞いたことが」  ランベルトの反応を見たフレイアは、さらに話を進める。 「でしたら、話は早い。ランベルト様、厚かましいかもしれませんが……ヴォルゼフォリン様と共に、御前試合に出てはいただけませんでしょうか?」 「それは構いませんが……」 「私たちはあくまでも部外者。ランベルトを入学させるか、それとも学園関係者として言い張るか……いずれにせよ、筋は通す必要があるな」 「ごもっともです。ですので、ヴォルゼフォリン様の実力を頼り、ランベルト様が入学できるように話を進めています」 「ほう、話が早いな」  フレイアはこの数時間の間で、ランベルトの入学に関する根回しを進めていた。 「さてランベルト。目標からやってきてくれたが、今の気持ちはどうだ?」 「もちろん勝つよ。そうすれば、ヴォルゼフォリンに認めてもらえるだろうから」 「ああ。そういうわけでフレイア、すでに私たちの意思は決まっている。御前試合に出るために全力を尽くす」 「お二人とも、ありがとうございます」  フレイアは律儀に席を立ち、頭を下げる。食事中なので本来はマナー上よろしくない行為なのだが、性分(しょうぶん)ゆえにほぼ反射で行動していた。 「まあまあ、座れフレイア。ところで、御前試合に関する決まり事も知っておきたいものだ。私はアントリーバーに当てはまるかかなり怪しいものでな、下手をすれば門前払いになる。そうなったらランベルトは、出場者としては望めんぞ」  ランベルトの起こした事故は、ヴォルゼフォリンも知っている。“ヴォルゼフォリン以外には乗れない”、それがランベルトとヴォルゼフォリンの共通認識だった。 「それは掛け合うことになるでしょう。あるいは直訴(じきそ)するか、ですが……」 「いざとなったら私が乗り込むか。で、ちょっと“お願い”すればいい」 「やめてよ、ヴォルゼフォリン……」  物騒なことを言い出すヴォルゼフォリンに、げんなりするランベルト。 「まぁそれは最終手段に取っておくとして、だ」 「取らないでよ……」 「今のランベルトの技量では、たとえ私で挑むことを許されても力不足だろうな。私の力は既にランベルトに示した通りだが、ランベルトが私に追い付かない限りはどれだけ私が強くとも、活かしきることはできない」  突如として真面目な話をするヴォルゼフォリン。だがランベルトは、やはり真面目に聞いていた。 「そうだね。だから、強くなる必要がある」 「ランベルト様。是非、私たちに手伝わせていただけますか」 「ありがとうございます。むしろ僕から、お願いしたかったくらいですし」 「決まりですね。では、食べてしまいましょうか」  ランベルトたちは残りのスープなどを平らげた。

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