ラノベでやり直し! 中学数学3年間

読了目安時間:5分

『平方根』

「なぁ、今日は……いっしょに寝ないか?」  日比谷さんから、こんなことを言われるなんて思わなかった。 「へ、変な意味じゃないぞ!? まだ中学生だからな。触ったら許さないからなっ!」 「……もう、俺たち子供じゃないし、そういうのはできないよ」  自分で言うのもなんだけれど、良いこと言ったと思った。男前っ! 「……ばかっ!!」  不機嫌そうにタオルケットを頭までかぶる。  夏だから暑いだろうに。  それにしても、なんで怒っているんだ?  女の子はよくわからない。  そもそも、セクハラとか言われたり、キモいからよるなと言われたり、今回みたいに、近づかないとバカと言われる。  なぞだ。  ……機嫌を直したほうがいいのかな。  じゃあ、隣へ?  電気を消して、こっそりと日比谷さんの寝ているベッドの中に潜り込む。  何してるんだ、俺は。 「夜這(よば)い?」  なんでわかるんだよ。夜這いじゃなく、隣にいることが。 「なにもしないよ」 「ねぇ、多田くん、楽しいね!」 「は?」 「オオカミが隣にいるみたい」  なんだそれ。 「なんもしないから、さっさと寝ろよ」 「絶対に何もしたらだめだぞ?」 「しないよ」  暑苦しさもあって、なかなか寝付けなかった。クーラーのない我が家の室内温度は夜中でも30度以上はあるな。  それなのに、日比谷さんはぐっすりと眠っている。  たくましいな。  ったく、そんなことを思っているうちにいつのまにかうとうととしていると、日比谷さんの声で目が覚めた。 「朝ごはんができたぞ」  100均で買ったヒヨコのエプロンが可愛らしい。自慢のロングヘアは流石にあついからか、結んでひとつにまとめられている。  最高の朝のはずなのに、気分はへこんでいた。パンツの中がベタベタする。もちろん汗ではないし、おねしょでもない。  好きな子と寝るなんて、中学生には刺激が強すぎたからなんだろうか。 「シャワー浴びてくる……」  ふと思った。俺、日比谷さんに何もされてないよな?  しかし、質問なんかできるわけないよな。いや、そんなことするわけないか。  汚れたパンツを洗濯かごの中に入れた時、そこに日比谷さんの下着があることも気がついた。なんというか、中学生らしい白い下着で、いや、ばか、見るなよ。 「あ! そうだ! 多田くん、下着をみたら……って! なんで全裸なのよ! 変態っ!」 「お前が入ってきたんだろうが!」  なんで理不尽な目にあわないといけないんだよ。 「せ、洗濯はあたしがするから、余計なことはしないで!」  やはり、お互い下着を見られるのは恥ずかしい。個人的には、もっと恥ずかしいことを誘っているように見えるのに、ムキになる。  しかし、冷静になると、日比谷さんには感謝の気持ちが強い。今朝だって、朝食をわざわざ作ってくれたじゃないか。 「おーい!」  風呂場から大声を出した。小さな家だから聞こえるはずだ。 「ごめんな。俺が悪かった。下着があることに気を回してやればよかったよ」 「素直だな。あたしこそ、悪かった。その、いま、女の子の日で、下着を見られたくなかったんだ」  なにもそんな生々しい説明はいらないのに。まあ、でも、わかった。  お風呂場から出ると、典型的な和の食事があった。ご飯、味噌汁、焼き海苔、焼き鮭、納豆。  嬉しいけれど、食費大丈夫か? 「朝食をしっかり食べることも勉強に大事だからな」  戸惑う俺をよそに、いただきます、と一礼をしてご飯を食べ始めた。  実は、このいただきますというのが苦手だ。なんか恥ずかしい。でも……。 「いただきます」  日比谷さんが一生懸命に作ってくれたんだから、感謝しないとな。 「器用だな、こんなに料理できるなんて、すごいよ」 「ええっ、ふ、普通だよ……」  俺の親は日比谷さんの倍以上生きているがこんなに料理もできないし、食事のマナーもなってない。 「家庭科も得意なのか」 「得意ではないと思うけど、普通にはできると思う。どうだ? その、味は?」 「美味しいよ」  気の利いたことが言えたわけでもないが、それでも、日比谷さんは満足したみたいだ。  久々にまともな朝食を食べ終わると、黙って、日比谷さんが食器を洗い始めた。  さすがにわるい。ご飯までつくらせて、おまけに食器洗いまではさせられない。 「や、やるよ!」 「……ありがとう」 「当たり前のことだろ」 「優しいね」  正直、食器洗いはしんどかった。というのも、棚が低すぎて腰が痛くなるのだ。外人なんかは、腰痛がつらくて和食の料理人を諦めることがあるらしい。結婚するなら、自動食器洗い機が欲しいな、などと考えた。いや、べつに日比谷さんとというわけではないが。  テーブルにもどると、中学3年の教科書を広げて俺のことを待っている。待て待て、勉強かよ。 「あれ? どうしたの? 腰なんかおさえて」 「いや、えーと、大丈夫だから」 「マッサージしてやろうか?」 「いやいや、大丈夫だって!」 「なら、いいんだけど、カッコつけて無理するなよ。受験もあるんだから」 「それは、日比谷さんもだろ。無理させられないよ。日比谷さんこそ、疲れていることはないの?」 「疲れていることはないが、本当に覚えてないのか?」  ああ、子供の頃の記憶か。さすがにない。 「まあいい、今日は平方根(へいほうこん)の勉強だ」 「あ、最近授業でやったな。ルートって記号があるやつでしょ?」 「そうだ。  √2×√2=2 つまり、ある数は何と何をかけるとその数をつくることができますか? という考え方だ。この時、√2は無理数(むりすう)という不思議な数になっていて、1.4142……と永遠に終わらない。9であれば、3×3と−3×−3だから、9の平方根は±3。2なら±√2が平方根だな。では問題だ」 (難易度 偏差値45)  次の数の平方根を求めよ。 (1)16 (2)0.01 (3)8 「(1)は4×4、−4×4だから、±4だ。 (2)は、0.01=1/100つまり、1/10×1/10、−1/10×−1/10だから、±1/10 (または、±0.1)が答えだね。 (3)は±√8かな?」 「合っているが、それだと△だな。√8=√(2×2×2)  同じ数が二つあると外に出て、√8=2√2となる。答えは、±2√2」 「√2×√2×√2=2×√2ということだね。だって、√2×√2=2だから」 「あと、大切なことだが、√3+√3=2√3だ。√3がふたつあるからな。√6じゃないぞ。実際の入試問題を解いてみよう」 (難易度 偏差値55)  計算しなさい。 (√5+2)(√5−2) 「展開すればいいけど、この前の公式でもいいね。 (√5+2)(√5−2)=√5×√5−(2×2)=5−4=1」 「正解だ。この調子なら、平方根はすぐにマスターできそうだな!」

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  • 騎士

    ファル

    〇50pt 2019年8月9日 19時44分

    平方根はまだかろうじて覚えてますねー。 しかしそれより、今回の日比谷さんの乙女っぷりと、多田君の幼少期が気になります。 物語の展開も気になりますが、当たったので少ないですが、おすそ分けします。 ( ・∀・)つドゾー

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    ファル

    2019年8月9日 19時44分

    騎士
  • 魔法剣士

    仲村まき子

    2019年8月11日 0時39分

    ファルさん、ノベラポイントありがとうございます! 恋愛の話がかなり長くなってしまいました。あっさり書くつもりだったのですが、書いていて楽しくなってしまいました。 高校では、二乗してマイナスになる虚数を学びますが、数学ってとっても面白いなと思います。

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    仲村まき子

    2019年8月11日 0時39分

    魔法剣士
  • ひよこ剣士

    くろすろおど

    ♡2,000pt 2019年8月10日 10時26分

    あ、男性の立場的には、パンツに夢精したら石鹸当ててわしゃわしゃ洗って落としてから洗濯機に入れます。 そのままだと残る感じがあるし、洗い流されるとはいえ他の洗濯物もべとべとにまみれるので(ヽ´ω`) 変な突っ込みごめんなさい汗

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    くろすろおど

    2019年8月10日 10時26分

    ひよこ剣士
  • 魔法剣士

    仲村まき子

    2019年8月11日 0時43分

    くろすろおど先生、たくさんのポイントありがとうございます! 思春期の男の子と女の子を描いてみたかったです。 どうやって、恋を描こうかなと実験しています。 男の子も女の子も、そこから異性を強く意識すると思うので。 情報は今後の創作の参考にしますね!

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    仲村まき子

    2019年8月11日 0時43分

    魔法剣士
  • ひよこ剣士

    ネリネ

    ♡100pt 2019年8月25日 9時18分

    0.1×0.1=0.01ですよ

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    ネリネ

    2019年8月25日 9時18分

    ひよこ剣士
  • 魔法剣士

    仲村まき子

    2019年10月11日 4時33分

    ネリネさん、ポイントとコメントありがとうございます。 誤字の修正をさせていただきました。 とても助かります。

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    仲村まき子

    2019年10月11日 4時33分

    魔法剣士

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