ラノベでやり直し! 中学数学3年間

読了目安時間:4分

『円』

 今日も何事もなく平穏な一日だったな。放送されている様子もない。不思議だ。やっぱり、日比谷さんは何か隠しているんじゃないか? 「日比谷さん、あのさ……」  いつもの六畳間で、日比谷さんは扇風機に当たりながら問題集を解いている。成績が良くても、日比谷さんにとっても勝負の夏なんだろう。 「なんで、俺のためにここまでしてくれるの? 撮影とか、嘘だよね?」 「……そう思うか?」 「思うよ。ずっと、日比谷さんに守られていて、居心地がいいけど、なんていうか、もっと対等な関係になりたい」  少し前まで憧れの人だったのに、ずいぶんと生意気なことを言ってしまっているのかもしれないが、日比谷さんは何かを隠している。それを取り除いてあげたい。 「言えないこともある」 「俺が頼りない子供だから?」 「そうじゃない」  俺は、この日のためにプレゼントを用意していた。きっと、日比谷さんから、本音を引き出すにはこれしかないと思っていたから。 「受け取って欲しいんだ」 「ぬいぐるみ?」 「仕事のこととか、よくわからないけど、何か悩んで無理に背伸びしなくていいよ」  日比谷さんが俺のことを子供あつかいするのは、もしかしたら、自分がそうして欲しい裏返しなのかな?  でも、女の子って男の子より大人びているっていうし、正直、よくわからない。 「多田、ありがとう。すっごくかわいいな。このタヌキのぬいぐるみ」  いや、それはネコなんだけど、まあ、いいか。喜んでくれてはいるみたいだ。 「確かに、仕事に疲れてはいたよ。綺麗なことばかりじゃないからな。学校の勉強とは違って、オーディションは努力をすれば必ず報われるというものではないし、プロの劇団員や芸大生、大人、いろんな人たちが受けるんだ。その中を勝ち続けるのは並大抵のことじゃないんだよ」  日比谷さんは勉強ができる。それは、受験よりも厳しい競争の世界を知っているからなのかな。 「はっきり言うと、嬉しい。あたしのことをようやくわかってくれて」 「でも、昔のことは覚えてないよ」 「そうか。それでもいい。してくれているんだよ。忘れていても、多田は変わらない」  日比谷さんは、テーブルの上に体を乗り出して、頬に唇を当てた。 「え?」 「あたしは、来年はもう高校生だ。違う高校に行くなんて絶対に嫌だから……」  俺の方から、日比谷さんの唇をふさいだ。  静寂の後、あまりの恥ずかしさに日比谷さんを見ていられなくなってしまった。  だけれど、日比谷さんは自分から俺のとなりに座ると、ノートを開いて、一緒に勉強しような、と変わらない調子。  彼女の期待に応えたいと、思った。 「今日は(えん)の勉強だ」  『円』の挿絵1 「円の半径はどこも等しいから、こんなふうに、必ず二等辺三角形ができる」  『円』の挿絵2 「また、円との接線は必ず90°になるんだ。よく試験にでるから、練習問題をといてみよう」 (難易度 偏差値50)  『円』の挿絵3  xを求めなさい。 「わかるか?」  日比谷さんと同じ高校に合格したいからね。がんばるぞ! 「うん。接線は必ず90°になるから、三角形の内角の和が180°として、  180°=35°+x°+90°  ゆえに、x=55°」 「正解だ。気合いが入っているな! 次は円周角というものを学ぼう」  『円』の挿絵4 「中心角は円周角の半分になるんだね」 「これも入試では必ずと言っていいくらいでるからな。問題を解いてみよう」 (難易度 偏差値50)  円の中心を点Oとして、中心角が100°のとき、円周角はxを求めよ。  『円』の挿絵5 「ええ、円周角って、こんな変な形でもいいのか……」 「惑わされないように、よく練習問題を解いて慣れないとな。わかるか?」 「うん。中心角100°ということは、円周角と中心角の定理から、  x=(1/2)×100  ゆえに、x=50°だね!」 「合っているぞ。もう一問やってみよう」 (難易度 偏差値55)  円の中心を点Oとするとき、xの角度を求めよ。  『円』の挿絵6 「円周角が100度だから……中心角は200°?  x=200°?」 「ハズレだ。こういう引っ掛け問題もある。このとき、中心角は……」  『円』の挿絵7 「こっちの200°だ。円は360°だから、  x°+200°=360°  ゆえに、x=160° が答えだ」 「なるほど、そういう風に見ることもできるのか」 「最後に、円と弧の関係も学ぼう」  『円』の挿絵8 「なんだか、複雑な図形だな」 「義務教育の最後なんだ。これくらい難しくもなるさ。これで最後だ、入試問題 (改題)に挑戦してみような」 (難易度 偏差値60)  xとyの角度を求めよ。  『円』の挿絵9 「実際の入試に出題されてもおかしくないレベルだから、難しいかもな」 「BEは直径なんだよね。ということは、中心角180°と考えられるから、∠BCE=90°なんじゃないかな」 「エクセレント! そうだな。直径が与えられているとき、その円周角は必ず90°になる。その理由も正解だ。わかってきたな!」 「ありがとう。じゃあ、xの角度は、  180°=35°+90°+x°  ゆえに、x=55°」 「正解だよ、あと一つは解けるかな?」 「円と弧の性質から、1:2=y:35°ということだよね。だから、  2y=35となり、y=17.5°」 「バッチリだ! これで中学数学も大丈夫だな!」  『円』の挿絵10

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  • 野辺良神社の巫女

    みくもっち

    ♡500pt 2019年10月1日 19時45分

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    尊い…尊い…

    みくもっち

    2019年10月1日 19時45分

    野辺良神社の巫女
  • 魔法剣士

    仲村まき子

    2019年10月11日 4時39分

    みくもっちさんのたくさんのポイントありがとうございます。スタンプの応援とっても嬉しいです! 歴史小説大賞に参加したいなと思い、また、頑張ろうと思います! 面白くてためになる話にしたいです。

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    仲村まき子

    2019年10月11日 4時39分

    魔法剣士
  • 騎士

    ファル

    ♡100pt 2019年8月24日 17時54分

    答え付きで書いてくれるとかろうじて理解はできますが、難しいですね! しかし何よりも、ラブコメ展開ええやんー。そりゃ好きな子と同じ学校行くためなら、男は頑張るってもんですぜ!

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    ファル

    2019年8月24日 17時54分

    騎士
  • 魔法剣士

    仲村まき子

    2019年8月25日 2時13分

    ファルさん、コメントとポイントありがとうございます! そうなんですよね! 可愛い恋人となら頑張れる! これからもそんなコンテンツにしていきたいなと思います。 勉強を頑張って、ステキな恋人もゲットできるように頑張って欲しいな、なんて思っています。 青春を満喫してほしい!

    ※ 注意!この返信には
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    仲村まき子

    2019年8月25日 2時13分

    魔法剣士

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