八大地獄の除霊鬼

読了目安時間:2分

地獄の入り口

 バットケースに日本刀を入れて、神社まで歩いた。  神社の横にある、小さな平家のチャイムを鳴らす。 「こんな夜中に、誰?」  程なくして出てきたのは、蓮夏さんが弟と言っていた男だろう。背が高く、目つきの悪い男は、眠そうに欠伸(あくび)をしながら、私を睨む。 「桃河(とうがわ)美姫(みき)です」 「名乗られても知らんし——、ああ。桃太郎か」  男はそう言って、目を細める。 「……何があった?」 「蓮夏さんが、自分の術の中に入っていきました」 「!?」  驚いた様子で目をむく。 「怪物二体を祓ったあと、男に後ろから刺されたんです。その男は、私も殺そうとしてきましたが、結局逃げていきました。蓮夏さんに、神社に行って弟に報告しろと言われたので、ここにきました」 「そうか」 「あの、それで蓮夏さんは——」 「わかった。あとの処理はやっておくから、お前は帰れ。……あー、家まで送るわ」 「いえ、結構です。それより蓮夏さんを助けないと」  男は頭を豪快(ごうかい)にかいて、大きなため息をつく。 「お前は狙われている立場だ。それに力も持っていない」 「なっ——」 「こう言った方がいいか? 邪魔だ、帰れ」  男がパチンと指を鳴らすと、あたりの景色が変わった。    ※  回廊というのだろうか。一本の道は、等間隔にさげられた提灯の明かりで薄暗くだが、先まで見える。先まで見えるのに、向こう側は真っ暗闇だ。この回廊を進んでは行けないと、本能でわかるのか、足が動かない。  回廊の外は夜で、周りにはいろんな花がきれいに咲いている。  ここはなんだろう。  私は何をしていたんだっけ?  地獄とは、存外綺麗なところなのかもしれない——。    ※  気づいた時には、ベッドの上だった。  窓からは朝日が差し込んでいる。  昨日の記憶は、ある。  ただ、神社の男と会ってから今までの記憶だけが、すっぽりと抜け落ちている。  何か、おぞましい場所を見たような……、綺麗な場所だったか?  なんにせよ、私は自宅に帰ってきていてベッドで寝ていた。  服装はそのまま、体育館シューズも履きっぱなし。  そしてバットケースは、ベッドのそばに置かれていた。

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  • くのいち

    爪毛

    ♡300pt 2021年1月5日 0時15分

    スタンプに返信までいただいた蓮夏さんが……。蓮夏さんに代わり弟さんが守ってくれるのか、それとも蓮夏さんが復活するのか、どちらにしても目が離せません。

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    爪毛

    2021年1月5日 0時15分

    くのいち
  • ひよこ剣士

    藍明

    2021年1月5日 7時26分

    美姫「感想ありがとうございます。引き続き、読んで頂ければ嬉しいです。私たちは何者かの意図により、ここでは作品に関係のない話をさせられるようです。日常で起こった驚いた話や、ちょっと恥ずかしい話、黒歴史……、なんかを公開していきます。……あれ? ここが地獄か?」

    ※ 注意!この返信には
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    藍明

    2021年1月5日 7時26分

    ひよこ剣士

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