読了目安時間:4分

エピソード:5 / 5

竜吾は鍵を開けると、リビングに飾ってある銃のコレクションの一つを取った。 『2人とも逃してやろうと思ったが、やっぱり逃がすのは1人だけにした』 そう言うと竜吾は銃を2人に交互に向けた。 雅彦はさっきから黙っている。 『お願い!殺すならこの子にして!』 『お母さん…酷いよ…』 『うるさい!あんたがどうなろうと知ったこっちゃないわよ!』 夏帆達のやり取りを見ながら竜吾は微笑んだ。 『殺すのは娘の方でいいのか?』 『ええ…』 竜吾はにんまりと笑うと 『雅彦、お前もこういう大人になるんだぞ』 と言った。 雅彦の返事はない。 竜吾は拳銃を夏帆に向けると、引き金に指をかけた。 『パンッ』 甲高い音が部屋に鳴り響いた。 『が…はっ…』 竜吾は胸を押さえながら倒れた。 朦朧とする意識の中竜吾の目に映ったのは、コレクションのうちの1つの銃を持って立っている、雅彦の姿だった。 『これで僕が王様だね!』 雅彦はそう言うと銃を元あった棚に戻し、夏帆達を見た。 『夏帆ちゃん、大丈夫?』 突然の出来事に呆然とする美樹だったが、すぐに状況を理解し、角に置いてある拳銃を取りに戻ろうとした。 だが、後ろを振り返った美樹の目の前には銃口があった。 『お母さん、さっき私の事身代わりにしようとしたよね?』 拳銃を持って立っていたのは夏帆だった。 『そ、それは…と、とりあえずそれを下ろしなさい』 『いやだ。お母さんはいつも自分の事ばっかり。お母さんなんてもういらない!』 夏帆が引き金に指をかける。 『待つんだ!』 『え…!?』 夏帆の背後から声を掛けたのは、須賀だった。 『須賀さん!どうして…!?』 驚いて尋ねた雅彦に、須賀は答えた。 『職業柄、防弾チョッキをよく着ていてね。なんとか助かったよ』 須賀が上着を脱ぐと、見るからに頑丈そうな防弾チョッキが現れた。 『それより夏帆ちゃん、お母さんを殺してもなにも変わらないよ。夏帆ちゃんも嫌いなお母さんの為に手を汚すのは嫌だろう?』 『それは…そうだけど…』 夏帆はそう言って俯いた。 『お母さん…今すぐこの場から離れてください。後の事は私がやるので…』 『わ、分かったわ…』 美樹はこれ以上面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だと思ったのか、姿を消した。 須賀は美樹が居なくなったのを見届けると、雅彦に尋ねた。 『どうして竜吾さんを…』 『昔から嫌だったんだ。物心ついた時から厳しくされてさ…僕は裏社会なんて嫌なんだ…』 『雅彦君も嫌だったのか…まあそりゃあ、そうだよな…』 そう言うと須賀は、雅彦の頭を撫でた。 『今まで、よく頑張ったな…』 『うん…』 雅彦は泣き出しそうな顔をしたが、顔を横に振り涙を振り払った。 『泣いても…いいんだよ…?』 泣けないよ…彼女の前じゃ…』 『へっ…!?』 須賀は雅彦の言葉に驚き、変な声を出した。 『彼女って…?』 『実は僕達、付き合ってるんだ』 そう言うと雅彦は夏帆の手を握った。 『父さんが恋愛なんていらない、って言うからさ、こっそりね』 『撃ったのも…』 『そりゃ彼女が撃たれかけたら先に撃つよ!』 少し笑って答える雅彦を見て須賀は、やはりこの子は竜吾の子供なんだな、と改めて思った。 『これから君達はどうする?児童相談所にでも行くのかい?』 『いや、僕に考えがあるんだ』 そう言うと雅彦は、窓の外の森を指さした。 『あの森は相当広くて果物も沢山落ちてる。前に1週間程サバイバルをしたけど、余裕だったよ』 『危険じゃないか?』 『この家に比べたら全然マシだよ』 そう言うと雅彦は親指を立てた。 『そうか…何か必要な物があったらこの家から持っていけばいい』 『うん!そういえば須賀さんの職業って…』 『それは言えないんだ…ごめんな』 そう言うと須賀は玄関に向かった。 『俺はここでバイバイだ。お前達、強く生きろよ』 『うん。須賀さん、夏帆が撃つのを止めてくれて…ありがとう…』 そう言うと、雅彦達は裏口から出ていった。 『ふう…俺が撃つべきだったんだけどな…』 雅彦達の姿が見えなくなると、須賀は呟いた。 『まさか雅彦君が撃つとは…』 須賀はそう言って右の靴を脱ぐと、隠してあった携帯電話を取り出した。 須賀は携帯電話で 『殺害完了。今から戻る』 とメールを送った。 『やっと任務完了だ。前は解雇されちまったからなあ…リベンジ成功ってとこか。スパイも楽じゃねえな』 玄関から出た須賀は、町の端に立つ竜吾の家を見返した。 『箱…か…雅彦君にとっては、この家自体が大きな箱だったのかもしれないな…』 須賀はそう言うと、そよ風が靡く道を、駆け降りて行った。

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