Amazonギフトカードが当たる会員登録キャンペーン実施中!詳しくはこちら

キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:5分

(注)本作品の筋肉ネタはファンタジー風にアレンジした物です。

イラプション・デルトイド

 ファビオとのトレーニングは、上半身のトレーニング、下半身のトレーニング、休息日の3サイクルをひたすら繰り返すものだった。  初日は疲れ切って眠ってしまったが、慣れてきたら午後も動ける様になった。  トレーニングは1日30分程度なので、余った時間はヨーゼフと薬草の採取を行った。  ヨーゼフと帝都周辺で採取した毒消しの材料の『カトリブト草』、以前クロエに聞いた事がある薬草『ゲルブリオ草』も初めて見る事が出来た。  特に万病に効く『エレメトス草』には驚いた。  現実世界では万病に効く薬草や薬は存在しない。  だが、この世界の病気は体内の精霊力の乱れで発生するものなので、体内の精霊力の乱れを直す『エレメトス草』で全ての病を直す事が出来る。  当然の事だが、魔法でも治療出来る。  だが、回復魔法が使える者は少ないので、安価で手に入る『エレメトス草』は重宝される。  だけどヨーゼフが駆け出し冒険者の様に、せっせと薬草を採取する姿は違和感が強い。  黄金色の家を持ち、無限にアイテムを所持出来るヨーゼフは金持ちなのだから。 「こんな時も薬草採取って守銭奴なの?」 「怠けると太りますよクロエさぁん」  ヨーゼフが自分の頬を引っ張り、クロエに太るアピールをする。 「残念でした。私は転生特典で一切体型が変化しませーん」  クロエは自慢げに格好悪い事を言いだす。  サボるならファビオの小屋に居ればいいのに。  僕とヨーゼフが薬草を採取するのを見ながら、中途半端にサボっている。  一人でサボるのはつまらないのだろうか。  ファビオは午前中に僕のトレーニングを行った後、午後は自分のトレーニングで不在だし。 「体は太らなくても心はぶくぶくだねぇ」 「ケ~ン。早く修行を終えて、険邪(けんじゃ)様に汚隷(おれい)をしましょう」 「あのぉ~。今の内容は丁寧だけどぉ、もの凄い悪意を感じたけのだけどぉ~」 「気のせいだわ!」  発音通りなら良い話だけど、クロエは別の漢字を思い浮かべているのだろうな……。  そんな風に、ファビオとの過酷なトレーニングとヨーゼフとの薬草採取を行いながら2週間が経った。 * 「いよいよトレーニングの成果を試す時が来たな。見せてみろ修行の成果を!」 「キャプテーン、ヴァージャァース!」  ファビオの合図と共に、僕は気合いでヴァージャスの力を呼び覚ます。 「セット『伸張性筋収縮(エキセントリック)』」  伸張性筋収縮(エキセントリック)トレーニングは筋肉が伸びながら力を発揮するものだったよな。  力が放出されるイメージを持つ……だが、何も起きない。 「なぁケン。今何を考えている?」  ファビオが腕を組みながら険しい顔をしている。  何だろう、何か間違ったか? 「伸張性筋収縮(エキセントリック)トレーニングは筋肉を伸ばしながら力を発揮していたので、力の放出をイメージしています」 「はぁ、間違っているぞケン。短縮性筋収縮(コンセントリック)伸張性筋収縮(エキセントリック)は筋肉の力と負荷の差による違いだ。筋肉の力が負荷より勝っている状態で筋力を発揮しているのが短縮性筋収縮(コンセントリック)、筋肉の力が負荷に負けている状態で筋力を発揮しているのが伸張性筋収縮(エキセントリック)だ。両方とも筋肉を収縮している事に違いはない」  成る程、3つの力の出し方があるけど、結局筋肉は収縮しているだけなのか。  僕は全くしらなかったし、ヨーゼフも知識だけで実際に筋トレしていた訳ではないからな。  勘違いもあるものだ……。 「そうだったのか。トレーニングの名前を聞いただけで勘違いしていた。今までのトレーニングも全く無駄だになったかな」 「そうとは限らん。この世界は現世とは異なる。イメージが現実を変える事もある」  勘違いしても全く無駄ではないのは良かった。  実際に僕は等尺性筋収(アイソメトリック)トレーニングで絶対防御の『モスト・マスキュラー』を修得している。  なら、今回の伸張性筋収縮(エキセントリック)トレーニングでも何か修得出来ると思えてきた。  でも、等尺性筋収縮(アイソメトリック)トレーニングの時のようなイメージが浮かばないのでファビオに問う。 「イメージが現実を変えるといっても、どうすれば良いのだろう?」 「自分の体に聞いてみろ。今回のトレーニングで一番筋肥大した三角筋がケンの一番の理解者だ」  ファビオが言っている事は正常な人が聞いても意味が分からない。  三角筋が僕の一番の理解者……友達がいない寂しい人みたいじゃないか。  でも手がかりがないから、やけくそだ。  ファビオを信じて自分の三角筋を見る。  山のように筋肥大した三角筋。  山の力……噴火だ!  噴火する火山を思い浮かべ、自分の三角筋とイメージを重ねる。 「燃え滾れ僕の三角筋。イラプション・デルトイドォォォォッ!」  三角筋から噴火する様に赤い光が立ち上る。  そして、三角筋を起点として赤い光が全身を覆う。  初めて、ヴァージャスになった時以上の力があふれ出て力が押さえられない。  右拳を天に向け、押さえきれない力を解放する。  大腿四頭筋(だいたいしとうきん)によって、解き放たれた筋力によって上空に浮上する。  一瞬で100mも飛び上がったのか……。  新しい力は筋力強化の効果があると理解した時には体が落下を始めた。 『モスト・マスキュラー!』  着地のダメージを防ぐ為、絶対防壁の力を解放する。 「それでいい! 最高だ!」  着地して直ぐファビオがトレーニングの成果を絶賛してくれる。 「有り難うファビオ!」 「礼なら三角筋に言え。立派になったなケン!」 「まだまだファビオのバルクには敵わないよ」  僕はファビオと抱き合い、トレーニングの成果であるバルクアップを喜び合う。  予想と異なったが防御強化に次いで、攻撃強化の能力を得る事が出来た。  ファビオのお陰で、こんどこそ全てを守るヒーローに近づけたかな。  そんな風に思う僕を、冷たい目で見る二人がいた。 「ムキムキ男が抱き合うなんて、なんか気持ち悪いですねぇ」 「珍しいわね。同じ意見だわ」  ひどいよクロエ。  2週間も自分の修行につき合わせて、放置した僕が悪いけどさ。  そうして、クロエとヨーゼフには不評だった、僕とファビオとのトレーニングは終了するのだった。

修行を通して友情を深めるケンとファビオ。 突如ファビオが紹介したいと言い出した女性とは? 次回、抹殺師『マイティ・パーム』 ファビオ「ケンに紹介したい女性がいるんだよ」

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

読者のおすすめ作品

もっと見る