キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:4分

一人じゃないから

 カフェインさんの狙いが時間稼ぎだって分かっている以上、時間をかける訳にはいかない。  まずは目の前の偽物のヴァージャス……ヴァークウィティを倒す。 「ヴァージャス・パンチ!」  僕が拳を振るうと同時にヴァークィティも拳を振るう。  ゴォウン!!  拳がぶつかり合った衝撃で吹き飛ばされる。  パワーは互角か?  僕は様子見の為に一度距離を取った。  突如、ヴァークイティの両腕が赤く輝き始める。 『エクスプロード・バイセップス!』  これはっ、僕のイラプション・デルトイドと同種の力か!?  突撃してくるヴァークィティ。  迎撃が間に合わない。  襲いかかるヴァークィティの拳を防御する為に絶対防壁を展開する。 『絶対防壁 モスト・マスキュラー!』  ゴフッ!  クロエの大剣ですら防御した絶対防壁を越えてダメージを受ける。  防ぎきれないなら攻撃で圧倒するしかない。 『イラプション・デルトイド!』  ヴァージャスの攻撃形態となってヴァークィティに反撃する。  だが…… 『拒絶障壁 ラットスプレッド』  ヴァークィティが黄金の光の防壁を張る。  今度は僕の『絶対防壁モストマスキュラー』のコピーか?  ガンガンガンッ!  僕の拳は確実に当たっているのに、ヴァークィティの大胸筋が打ち破れない。  負けてはいない。  だがヴァークィティは本当に僕と同等の力を備えているようだ。 「どうですかヴァークィティの力は?」  カフェインさんが勝ち誇った顔をしている。 「別に。僕と同等なだけだよね」 「強がりですか? 私もいる事を忘れていませんか?」 「忘れていたよ。何もしないんでね」 「なら、これでどうですかね?」  カフェインさんが僕に杖を向ける。 『フレンジィ・カタボリック!!』  カタボリックだって!  以前、修行の合間にファビオに聞いた事がある。  全てのトレーニーを恐怖のどん底に陥れる筋肉の分解だったっけ?  僕を紫の怪しい光が包み。  筋力が急激に萎縮していくのが分かる。  弱った僕の隙をついてヴァークィティが襲う。  ボコボコに殴り倒されて大事なヴァージャススーツがボロボロになる。  アルベルトに作ってもらった大事なスーツを壊されて怒りが沸き上がる。 「さぁ、どうします? 足止めではなく、ここで死んでもらう事になりそうですね。君一人では勝てやしないんですよ!」 「勝てるよ()()は」 「頼みのクロエも光の精霊も結界の外だ! たった一人でどうするのかい?」  確かに僕の力ではヴァークィティとカフェインさんには勝てない。  だけど僕には呼べばいつでも駆けつけてくれるスーパーヒーローがいる。  自分一人では倒せない目の前の悪を打ち砕く為に、偉大な男を戦いに誘う。 「僕は一人じゃないから……行こうヴァージャス」  僕達は絶望の壁を切り開いて未来へ歩める。  いかなる困難でも乗り越えて前に進む力で!! 「アドバンスドォ・ヴァージャァァァァス!!」  全身の骨が一瞬で砕け再構築を始める。  身長は2mを越え、萎縮していた筋肉が爆発的に肥大する。  裂帛の気合いと共に閉鎖された空間が壊れそうな程、大気と大地が鳴動する。  僕の拳に魔力でも聖力でもない力が宿る。  不条理な悪を、より不条理な力で打ち破る偉大な力。  明確な理由や科学的根拠などなく、スーパーヒーローというだけで悪を打ち破る奇跡の力。 『燃え滾れ僕の三角筋! イラプション・デルトイドォォォォッ!』  筋肉が赤く輝く攻撃形態を展開する。 「何だこの力は? 時間の流れから隔絶する断時結界に綻びが発生しただと!」  これが僕達の絶望の壁を打ち破る必殺技。 『ブレイク・ウォール!』  僕の拳がヴァークィティを打ち抜く。  あっけなくヴァークィティの上半身が吹き飛び動きを止めた。 「こんなの聞いてない! なんなんだ君はっ!」  狼狽えるカフェインさんに言ってやる。 「最初から言っている。僕はスーパーヒーローだっ!」 「くそっ、クズ共の最後が見れないのは残念だが、計画が頓挫するよりはましか……任せましたよアルバート君」  カフェインさんが自分の腹部に杖を突き立てた。  体が光り輝き、杖に吸収されていく。  アレはヨーゼフの時と同じ……自分の命を魔法力に変えているのか。  あれだけ嫌っていながら最後は兄であるヨーゼフと同じだったな。  目的は全然違うけど。  杖がカフェインさんの命を吸い尽くし静寂が訪れる。  さてどうするかな?  今ので結界が強化されたみたいだから、ここから出るのに時間がかかりそうだ。  早く結界から出るために僕は結界に向けて拳を振り下ろした。  *  ふぅ、やっと結界を抜け出したか。  ここはリイスファクサの村の中央広場か。  辺りを見回すとクロエと子供達が僕に駆け寄るのが見えた。 「ねぇケンお兄ちゃん。僕、本当はアレンって名前なんだって。お母さんが教えてくれたの」  デクと名乗っていた少年が僕に改めて名乗った。  そうか、カフェインが居なくなった事で自分の名前を取り戻せたんだね。  村の皆を守ってくれたクロエのお陰かな。 「随分遅かったわね」 「ごめん。結構手こずった」 「その割には嬉しそうね」 「ヴァージャスの偽物が出てきて結構熱い展開だったんだよ」 「だからって1ヶ月は待たせすぎよ」  1ヶ月?!  そんなに時間が経っていたのか……僕の体感では1日だった。  断時結界は時間の流れから隔離する能力だったのか。  たったの1日だけしか時間稼ぎ出来ていないと思っていたのだけど。  カフェインさんは死んだけど、僕たちの足止めという目的を果たした訳か。  そこまでして、この世界を恨む必要があったのか。  悩んでも仕方がないな。  今は平穏を取り戻した村で、ゆっくり疲れを取ろう。

世界を滅ぼす為に『神の目』を破壊するアルバートを天使ナブエルが阻む。 次回、それでも私は愛している ナブエル「ファンタジーを愛する全ての者よ! どうか幸せに!!」 

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