キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:4分

『智者』カフェイン

「すみませんーー」 「ぼぉーくが巷で有名な大賢者様っ。カフェインさっ」  話しかけた僕の言葉を遮り、灰色のローブの男が自己紹介を始めた。  しかも、ヨーゼフの口調を真似て……。  沸き上がる怒りで拳に力を込める。 「おっと、似てなかったかな? これでも『智者』の称号を持つ転生者。生前はヨーゼフの弟をさせてもらっていたのだけどね」  ヨーゼフの弟だって?!  確かに顔が似ているし、声も似ている。  彼はヨーゼフの死を知っているのだろうか? 「勇者くんは一緒じゃないのかしら?」  動きを止めた僕の代わりにクロエが問いかける。  カフェインさんがつまらなそうにため息をつく。 「はぁ、名前について聞いてくれないのかい? アルバート君は真っ先に聞いてくれたのだがね」 「興味ないから。さっさと言わないとゴブリンの餌にするわよ」 「話と違うな。ケンが連れているのは赤髪の女性だって聞いていたのだがね。乗り換えたのかね?」 「答えになっていない!」  クロエが光の大剣を生み出し、カフェインさんの首筋に当てる。  情報が少し古いけど、カフェインさんは僕たちの事を知っているようだな。 「うーん、ケンは庇ってくれないのかな? このままだと全部話しちゃうよ。僕の知っているヨーゼフの事をぜーんぶっ!」 「そんなくだらない事に興味ないわよ」 「待ってくれクロエ。何がしたいのですかカフェインさん?」 「どうして邪魔するの?」  クロエに問われても答えられない。  今の口振りでカフェインさんと名乗る男がヨーゼフの死を知っている事を確信した。  そして知った上で、ヨーゼフの死をクロエに知られたくない僕を脅している。  自分の兄の死を利用するのか……  こんな相手に黙らなければならない事に苛立ちを感じる。  カフェインさんは兄のヨーゼフと違って嫌らしい性格をしているようだな。 「一緒に冒険したいのさ。僕の兄とも冒険をしたのだろう? 聖王国レノアスの南部にある魔の領域に行きたいのさ」 「アルバートと一緒に行っていたのではないのですか?」 「いやぁ、アルバートとはぐれちゃってね。一緒に行ってくれるよね?」 「分かりました」 「どうして? コイツはファルファーン帝国で皇后に呪いをかけた疑いがあるのよ!」  そうだな、カフェインさんがファルファーン帝国で呪術を使ったのは間違いない。  あの幼いアリシア姫を悲しませた張本人だ、殴り飛ばして皇帝に差し出したい気持ちはある。  だが、敵意がない彼をいきなり殴って黙らせて良いのだろうか? 「そんなにケンを攻めないであげてよ。彼は良く知っているのだよ……とてもね!」 「何を知っているってのよ?! コイツに弱みでも握られているの?」 「弱みだなんてとんでもない! 私は有益な提案をしているだけさ。魔の領域は魔法がなければ抜け出す事が出来ないからね。一緒に行った方が良いと思うよ」 「本当なの?!」 「たぶん本当の事だよ。クロエは納得いかないかもしれないけどアルバートが見つかる迄は、カフェインさんと一緒に行動しよう」 「はぁ、ケンがそうしたいなら反対しないわ。但し、一切気を許さないからね」  クロエが光の剣を仕舞う。  カフェインさんがわざとらしく肩をすくめる。  いちいち不愉快な人だな……でも不愉快な気持ちを堪える。  こんな胡散臭い男に従う僕を信じてくれるクロエに感謝するのが先決だからだ。 「ありがとうクロエ」 「羨ましいですねぇ。私にも優しくしてくれる女性はいないかねぇ?」 「いないだろうね」 「冷たいね君は」 「ヨーゼフと同じ扱いをしてみたのだけど不満だったかな?」 「不満だ。あれと一緒にするなよ」  カフェインさんが初めて苛立ちを見せた。  もしかするとヨーゼフと比較されるのが嫌なのか? 「物まねしていたのに毛嫌いするのか?」 「大方、出来の良い兄に嫉妬する弟って感じでしょ?」 「ふざけるな! 私が劣るだと! 私の方が優秀だったさ! 全てに於いてな!」 「随分感情をむき出しにするのね。少しは人間らしいところがあるじゃない?」 「あんな道化と一緒にされて怒らない人間がいるかい? いるわけがない!」  道化だって? ヨーゼフが?  カフェインさんがヨーゼフより優秀かどうかなんて知らない。  だけど僕はガルファダ王国の国民を救って、光となって消えたヨーゼフを知っている。  アルベルトからヨーゼフの過去を聞いて知っている……彼が医者だったって!  だからヴェロニカさんがばら撒いた細菌が許せなかったのだろう。  ヨーゼフは最後に医者として死んだ、僕の偉大な師匠なんだ! 「なら僕が名乗り出るよ。僕はヨーゼフの弟子だった事を誇りに思っている」 「変わり者だね君は。毎度不愉快だよ。全てが劣る僕のプロトタイプの癖に、兄ってだけで無駄に評価されるんだよ」 「カフェインさんの話は飽きてきたから終わって良いかな? それとも男同士、拳で語ろうか?」 「ふんっ、それはヨーゼフが教えた事かね? 腹立たしいが終えてやるさ。同行はするが仲間じゃないからねぇ」  僕は強制的に話を終え、魔の領域の探索に行く約束をしてカフェインさんと別れた。  不思議な事に僕たちのやりとりはギルドにいた他の冒険者や職員には気付かれていなかった。  認識阻害の能力を使用していたのだろうか?  彼には謎が多いが、一緒に旅をして見極めるしかないな。  僕とクロエは明日に備えて宿を探すのであった。

謎の男カフェインの案内で、ついに踏み入れた魔の領域。アルバートは見つかるのだろうか? 次回、魔の領域 カフェイン「あれはトロールとデュラハンですねぇ。お任せしますよお二人さん」

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