キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:5分

ファナルのギルドにて

 翌日、お世話になったトムさんに別れを告げてファナルの町を目指した。クロエさんは、鉄の剣が折れて装備が全くない僕を気遣って一緒に来てくれた。ファナルの町についた所で、お互いの用事を済ませる為、クロエさんと別れる。僕は依頼完遂の報告をする為にギルドに向かった。   「いくぞ。お前等!」 「おう」 「宜しくお願いします」  ギルドの中が騒がしいが、一体何事だろう?  イルさんと知らない4人の冒険者が旅立ちの準備をしている様だ。 「イルさん。何の騒ぎですか?」 「生きてたのか坊主っ!」 「ケンさん無事だったのですね!」  急にイルさんとアイリさんに詰め寄られて困惑する。 「なんとか生きてます」  本当に大変だったし、ヴァージャスの力に目覚めていなかったら、本当に死んでいたので謙虚に答えてしまう。 「よく死ななかったな。駆け出しがゴブリンロードに襲われたら普通死ぬもんだ。手遅れかも知れないが、コモロ村だけでも救おうと冒険者を集めた所だ」  イルさん達が、ゴブリンロードが出た事を知っているって事は、ススム達は無事だったって事か?しかし、何でイルさんが、わざわざ危険を犯してまで救援を送るのだろうか。 「何故イルさんが?」 「俺は一応この町の領主で、ギルドマスターだからな」  イルさんの回答に続けて、アイリさんが説明してくれる。 「ケンさんはイル様と知り合いなのに、知らなかったのですか? イル様はこの町の領主だから、ファナルの姓を名乗っているのですよ」  そういえばイル・ファナルと名乗っていたが、あまりにも気さくな人だったから気づかなかった。家も小さな一軒家で領主って感じじゃなかったし。  それよりも、ススム達が全員無事か確認する方が先だ。 「ゴブリンロードの出現を知っているって事は、ススム達が来たんですよね。全員無事でしたか?」 「当然無事だが、普通は仲間を置いて逃げ帰った奴らの心配はしないもんだろ。冒険者を引退するって町を出て行ったぜ。仲間を置いて逃げたのが相当こたえたみたいだな」 「それは残念です。彼らは別に間違っていなかったと思います。それに、僕は自分の意志で残ったので置いて行かれた訳ではないです」 「当然、間違っちゃいないさ。新人冒険者がゴブリンロードに出くわすなど災害にあったに等しい。ギルドでも処罰は行わないさ」 「それは良かったです」  心配していたススム達の安否がわかり、安堵したところで借りていた鉄の剣を壊した事を思い出す。 「お借りしていた鉄の剣なんですけど、壊れてしまいました。お返し出来なくてすみません」 「それなら報酬から引くから問題無い。赤字にはならないだろうから安心しな。アイリ手続きを頼む」 「それではこちらに来てください。討伐の確認を致します」  アイリさんに、神の目の部屋へ案内される。  神の目にギルドカードをかざすと、空中にモンスターの討伐記録が映し出される。 「ケンさんがゴブリンロードを討伐している! どういう事ですかケンさん?」  驚くアイリさんに本当の事は言えず、仕方なく嘘の説明をする。 「最後の一撃が偶々当たっただけですよ。殆どのモンスターは、偶然立ち寄ったクロエさんって騎士の方が討伐したので」 「ギルドマスターに確認してきますので、お待ち下さい」  こまったな。本当の事が言えないとはいえ、少し苦しい説明だったか。  クロエさんと一緒にくれば良かったか。  しばら待つと、イルさんとアイリさんがやってきた。 「坊主、クロエ・リードと協力してゴブリンロードに止め刺したんだって?」 「はい」  下手に説明を付け加えると、辻褄が合わなくなりそうなのでシンプルに答える。 「そいつはおかしいな。弱っていたとしても新人じゃ近寄る事すら困難だ。差し支えなかったらステータスを見せてもらっても良いか?」  明らかに不信感を持たれている。  差し支えなかったらとは言っているが、ここで隠せば不信感を持たれるだろう。  見せた所で秘密にする様な事も無いので、神の目に触れてステータスを表示する。  ケン・カガミ  HP:100/100 MP:1,000,000  STR:20 VIT:18  AGI:17 INT:15  前回と変わらないな、ゴブリンロードを倒しても成長なしか。  がっかりする僕をよそに、イルさんが叫ぶ。 「なんだこれは! こんなの報告されていないぞ!」 「いえ。MPが前例が無いほど高い事は報告致しましたが」  アイリさんが戸惑いながら弁明する。  僕自身もイルさんと直接、能力値の話をした筈だけど……。 「違う、俺が言っているのはMPの高さじゃねぇ。何故、現在値と最大値が表示されてないんだ? 今、表示されている値は一体何の数値だ!」  ん、そういえばアイリさんの能力値のHPとMPは2個数値が並んでたな。  魔法が使えない事と関係があるのか? 「お前が普通じゃないって事は分かった。これ以上は俺たちじゃ分からない。王都の鑑定士を訪ねるといい」 「サポートが不十分でごめんなさいね」 「そんな事ないです。色々親切にして頂き、助かりました。イルさんもアドバイスを沢山ありがとう御座いました」 「まあ、冷徹の完遂者が一緒なら、王都への旅路も心配ないだろう」  聞き慣れない単語が聞こえた。 「冷徹の完遂者ってなんですか?」 「知らないで一緒にいるのか? 誰ともパーティーを組まず、受けた依頼は必ず完遂するクロエ・リードだよ。このタイアル王国で知らない者はいないさ」  あのゲーム好きで、オタクで、昆虫なクロエさんが冷徹? 完遂?  自分自身の能力値以上の謎に触れ、一瞬意識が遠のく……。  色々大変だったが、無事に討伐報酬を貰いギルドを後にした。  そして、クロエさんとの待ち合わせ場所に向かった。

王都に向かうケン一行。能力値の謎は解けるのか? 次回、王都タイアルと変人店主 ケン「ゴキブリ・マーケットってなんですか?」

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