キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:4分

魔の領域

 翌日、カフェインさんと合流して聖王国レノアス南部の魔の領域を目指した。  まず僕たちを迎えたのが鬱蒼(うっそう)とした木々。  ここが魔法使いがいないと迷うと言っていた魔の領域の森か。 『モスキート・ネット!』  カフェインさんが低級のモンスターを寄せ付けない魔法を使った。  ヨーゼフが使った魔物除けの魔法は蚊帳(カヤ)で日本語だったな。  呼び方は違うけど効果が同じだから二人の魔法のセンスは同じ様だ。  通り抜けるのに二日かかったが、何事もなく通り抜けられた。  カフェインさんが収納魔法を使えたお陰で食料にも苦労はしなかった。  クロエは警戒してカフェインさんが用意した食事を食べようとしなかったが、毒が入っていても僕と光の精霊リアンの合体技の『マッスル・グリッター』で解毒出来ると説明して食べてくれる様になった。  まぁ、カフェインさんは胡散臭いけどお腹が減っては行動出来なくなるし、魔の領域の植物や動物を食べるのもリスクが高そうだからね。  森を抜けたら草原だった。  そして、魔物除けでは避けられそうにない強敵が現れる。 「あれはトロールとデュラハンですねぇ。お任せしますよお二人さん」  カフェインさんが僕達の後ろに隠れる。  全く白々しい。  いくら魔の領域とは言え、こんな草原にトロールとデュラハンがセットで現れる筈がない。  大方、カフェインさんが事前に用意していたモンスターだろう。  トロールは通常より大型で5mを越える体躯をしている。  デュラハンも通常、自分の頭を持っている筈の左手にまで漆黒の剣を携えている。  明らかにトロールは僕、デュラハンはクロエの相手を想定している。  カフェインさんは僕たちの実力を測ろうとしているのだろう。 「特殊個体の様なので、全力でやらないと負けちゃうかもしれないですよぉ」  わざとらしいな。  僕はクロエに目配せをしてトロールに向かって走る。  何があっても乗り越えると決めたのだ。  つまらないカフェインさんの誘いにも乗ってやるさ。 「キャプテーン・ヴァージャース!」  爆発的に身体がバルクアップする。  目の前のトロールと比べたら小さく見えるだろう。  だが、筋肉の密度で負けはしない! 「ヴァージャス・パンチ!」  トロールの足に拳を食らわせる。  トロールが悲鳴を上げながら拳を振り下ろし反撃してきた。 『絶対防壁 モスト・マスキュラー!』  僕は絶対防壁のポージングでトロールの攻撃を弾く。  よろけたトロールの腕を駆け上り頭部を蹴り飛ばす。  吹き飛ぶトロール。  だが、トロールが直ぐに体勢を整える。  あまり効いていないようだな。  ならっ! 『イラプション・デルトイド!』  僕の三角筋から赤い光が立ち上る。  キャプテン・ヴァージャスの攻撃形態だ!  トロールの膝裏を蹴り飛ばし転ばせた後に、顔面を殴り続ける。  1発、2発、3発…… 「ぬぉぉぉぉぉぉっ!」  頭部を完全に潰した後にトロールが死んだ事を確認するが……少しずつ頭部が戻り始めている!  この状態から再生するのか!?  だったら再生しなくなるまで殴り続けてやる。  僕はトロールを殴り続けながらクロエの戦いの様子を伺った。 「にゅにゅん、ちょっ、にゅにゅにゅん」  えーと、何ですかソレ?  クロエはデュラハンに合わせて光の双剣で戦っている。  双剣を使うところは初めて見たけど……かけ声も変わるの!?  大剣の時は「ていっ」とか「うにゅーん」だったけど攻撃のリズムに合わせてるのかな?  僕がトロールを攻撃する音とクロエのかけ声が微妙な音楽を奏でる。  ドン、ドン、ドドドン!  にゅにゅにゅにゅにゅん!  ドドン、ドン、ド、ドドン!  にゃにゅにゅにゅにゃん!  デュラハンの漆黒の双剣とクロエの光の双剣が相打ちとなり共に砕け散る。  怒り狂ったデュラハンが殴りかかろうとするが、クロエが巨大な光のハンマーを出現させて叩き潰す。 「みゅにゅっ!」  なんか可哀そうだな。  かけ声は可愛いけど、ガシャンと身体が砕けてたからね。  僕の方も終わりのようだ。  胸部まで叩き潰したところでトロールが灰になって消えた。  パチパチパチ。  突如鳴り響く拍手。カフェインさんだな。 「お見事です、お二人とも。アルバート君に聞いていたより高い実力をお持ちのようだ。成長されたという事かな?」 「とうぜんだろう、冒険を続けているのだから」 「ケンは莫大な筋肉による戦闘力を持ち、絶対防壁の『モスト・マスキュラー』に切り札の攻撃形態『イラプション・デルトイド』を備えている。クロエは光の武器を生み出す力ですか。興味深いですねぇ」 「私達の力を測って満足かしら?」 「なんの事やら、この先に村があるので休みましょう? 強敵との戦いでお疲れでしょう?」  カフェインさんが何を狙っているのか未だに分からない。  だが、言われた通り先に進むと本当に村があったので、言っている事が全て嘘という訳ではないようだ。  リイスファクサの村か……なんで魔の領域にあるのだ?  村に入って直ぐに、カフェインさんは知り合いに用事があるからと言って去っていった。  僕とクロエは来訪者がいない筈の村に、何故か存在した宿屋に泊まる事にした。

穏やかに暮らしている様に見える村人達に隠された真実とは。 次回、リイスファクサの村 デク「救ってください……僕達の世界を!」

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